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22 ノートを破かれる事件

「そんなのプライバシーの侵害じゃん!」


 パレシャが立ち上がって抗議する。


「あの方は何を仰っていらっしゃるのかしら?」


「わたくしもわかりませんでしたわ」


「何かを侵害なさるとかなんとか?」


 二人だけでなくパレシャたちに注目している生徒たちも首を傾げる。


「ユノラド男爵令嬢様のご発言は理解できませんのでお話を進めますわね。

ともかく、ユノラド男爵令嬢様のノートはお勉強なさるノートとしては役割を全く果たしておらず落胆せざるを得ませんでしたわ」


 アリサが腕を組み威圧感を出した。


「そんなぁ……」


 両手を目に添えて細かく左右に動かして『シクシク感』を出しているパレシャに誰もが言葉を失う。


「アリサぁ。なんでそこまでイジメるの?」


 手を動かしながらアリサに近寄りアリサにだけ聞こえるように呟いた。


「協力をお願いされましたので」


 アリサは妖艶に笑った。


「そうかもしれないけどぉ。やり過ぎじゃないかなぁ?」


 パレシャの小声の言葉を無視してパレシャの机の上からノートを取り上げパラリと捲り二ページ目で手を止め見開きのままパレシャに向けた。


「このような使い方をしていただくためにお渡ししたノートではございませんのよ」


 そこには人物画が書かれていた。


「「「「「ぶっ!!」」」」」

「「「「「ぶはっ!」」」」」

「「「「「ゴホッ!」」」」」


 その人物画を見てみんなが吹き出しそうになり必死で堪えた。

 そこには怒り狂うマナー教師の絵が書かれておりデフォルメが絶妙に利いている。


「このようないたずら書きをせずにしっかりとお勉強なさいませ」


『ビリビリビリビリビリ……』


 そのページをみんなの見ている前で破いた。


「はあ! このようなものが先生の目に止まればどう思われてしまうのかご想像もされませんの?」


 大きなため息を吐き出しながらそれを折りたたんで手の中にしまう。


「卒業も危ういとご自覚なさった方がよろしいわ」


『あ! アリサは私をズバニールと結婚させて公爵夫人にすることまで考えているんだ! 公爵夫人なら王都学園を卒業していないとまずそうだもん。

ここは従っておくべきよね』


 パレシャは演技でガクリと首と肩を落とす。


「わかりました。がんばります……」


「みなさま。お教室へ戻りましょう」


 アリサはパレシャに声をかけることなく出ていく。それを見送ったパレシャはそっと破かれたノートを取り抱きしめた。同情心を買うことを忘れないパレシャに一部の男子生徒はころりと騙され廊下へと走っていった。


 次の休み時間にはズバニールがすごい形相で三年Eクラスへやってきた。


「パレシャ! 大丈夫か?!」


「ずばにぃるぅ……」


 隙かさずズバニールの胸に飛び込むパレシャはクラスの男子生徒数名がパレシャの味方でパレシャのためにズバニールとの関係を応援してくれていることを利用しているのだ。それはアリサたちの後に教室を一旦出ていった者たちで『パレシャは被害者』という目線でズバニールに一部始終を報告してくれている。


 ズバニールに肩を抱かれて教室を出ていきズバニールとパレシャが二時限目をサボることが決定した。


 四阿に腰を下ろした二人はまたしてもメイロッテのヤキモチ説を熱く語り合いズバニールの中で想像が確証に変わっていく。パレシャはそれを心の中でほくそ笑んで見守っていた。


 そうして数週間が過ぎた。ズバニールはパレシャにベタベタしているし、ケネシスは図書室へ行けばお話ができるし、テッドは蹌踉(よろ)めけば支えてくれる。さらにアリサも事ある毎に苦言を呈して悪役令嬢の演技をするのでパレシャは学園生活に大いに満足していた。


『そろそろアリサが王太子の婚約者になって王太子がアリサの親友である私を淑女として認めてくれる時期なのよね。

でも王太子の婚約の噂を聞かないなぁ。ズバニールにアリサと王太子のことを聞いたけどアリサが王宮に招かれていることくらいしか知らないみたい。

これはアリサにはっきりと聞いて私も王宮へ連れていってもらわなきゃ。未来の王妃の親友なんだから』


 パレシャは自分の考えにウンウンと頷いた。

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