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何もできない自分

しばらくの間、私達の間に沈黙が流れる。

私は、フィリスになんて声を掛けたらいいのか分からなくて、必死に考えていた。

すると、フィリスが急に立ち上がり、私に向かってこう言った。

「お話を聞いてくれてありがとうございました、私はもう大丈夫ですから」

そう言って、フィリスは教室から出て行ってしまう。

待って!と言おうとしたのだけれど、上手く声が出せなかった。

「フィリス……私は一体どうしたら良いんだろう……」

フィリスと会長に仲直りして欲しい、だなんて簡単に言ったけれどそもそも私が口を出せる問題ではないのかもしれない。

それに、会長がどうしてフィリスを騙していたのかも知りたい。

私は、自分の席に座って考え込んでいた。

「会長の周りの人達を調べてみる価値はあるかもしれない……」

「会長が何だって?」

「貴方は……確か会長の……」

「ミホよ!貴女こそこそと……会長の邪魔をするのなら私が許さないから」

「そんな事してないよ!……ねぇ、一つ聞きたかったことがあったんだけれど

いいかな?」

「何?私は貴女と違って忙しいんだから手短して頂戴」

そう言って、彼女は私を睨みつけてくる。

私が何かしたのかな……そんな事を思いながら私は彼女に質問をした。

それは私の噂についてだった。

「ねぇ、貴女は私の噂を知っている?」

「えぇ、だってあの噂を流したのは私だもの」

「やっぱり……なんでそんな事を?」

「会長に頼まれたから、それだけよ」

「会長に!?どうして……」

「貴女には関係ないわ、それより、会長に何かしようとするなら私が許さないから」

そう言うと、彼女はその場を立ち去って行ってしまった。

結局、彼女からは会長が何を考えているか聞けずじまいで、ただ彼女の言葉だけが頭に残っていた。

会長が噂を広めた……? 私にはその理由がどうしても分からなくて、しばらくその場で悩んでいた。

「こんな時ルカがいたら……」

そんな独り言を呟いたその時、スマホがメッセージの受信を知らせる音を鳴らした。

もしかしてフィリスからかも、そう思い急いで画面を見ると、そこには

ルカからのメッセージが来ていて、『明日帰ります』と一言だけ

メッセージが送られてきていた、私は分かったとだけ返信をしてスマホを閉じた。

「ルカ帰ってくるんだ……でも、今の私達をルカには見せられないな」

ははっと乾いた笑いをしながら、天井を見上げた。

しばらくすると、生徒たちが続々と教室に入ってきたけれど、そこにフィリスの

姿は無く、授業が始まってもフィリスの姿を見る事は出来なかった。

****

「やっぱり……会長に直接聞く方が早いよね」

時間は放課後、私は今、生徒会室の前に立っていた。

あの子には、邪魔をするなと言われていたけれど、フィリスにあんな顔をさせて

傷つけた会長の事を私は許せなかった。

ふぅ……と深呼吸をして、コンコンと扉を叩く。

けれど、中から返事は無く、私はもう一度ノックをした。

やはり、反応が無い。

「もう、帰っちゃったのかな……」

そう思い、帰ろうとした時、後ろの方でガタッと音がした。

私はその音に驚き、バッと振り返ると、そこにはフィリスが立っていて、 俯き加減でこちらを見ていた。

私は慌ててフィリスの所まで駆け寄る。

けれど、フィリスは私と距離を取って、こう言った。

「やっぱり沙羅もユーリの言う事を信じたのですね……」

「えっ!?フィリスそれってどういう……」

「何でもありません、私のことは気にしないでください……では、さようなら」

そう言って、フィリスはその場から立ち去った。

私はまた何も言えずに、フィリスが立ち去る姿を見送る事しか出来なかった。

フィリスの背中を見ながら、私は自分の無力さを改めて痛感する。

すると、私の背後から足音が聞こえてきた。

私は咄嵯に振り向くと、そこには 笑顔の会長がいた。

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