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魔女の企み

魔女は嬉しそうな顔をして、私の顔を見た。

本当にムルこの事を知っているのか……ただの脅しなのか……

それは分からないけれど……今は逃げることも出来ない。

私は意を決して、彼女に向かい合った。

「もう一度聞きます。マリーは精霊……ムルの事を知っているのですか」

「えぇ!だってあの子は、私が聖女になる為に必要な子ですもの」

「聖女になる為……?なんでその為にムルが必要なのですか?」

「うーん……そうねぇ~簡単に言えば、あの子の力は特別なの。あの子はね、

普通の精霊じゃない。あの子は人々に祝福を与えることが出来る子なの、その力を使えば私も聖女になれる……!だから必要なの」

そう言うと、魔女はまたクスリと笑う。

その様子は凄く楽しそうだった。

だけど……私にはそれがどうしても歪んで見えた。

そして、魔女は続けてこう言った。

あの子は、私とあの人を繋ぐ大切な存在なのだと。

魔女はそう言うと、私に近づいてくる。

「ねぇ?あの子を私にくれない?大丈夫、悪いようにはしないわ」

「そんな事出来る訳ないでしょう……!?あの子は私の大切な子なんです……!」

「でも、私にとっても大切よ?それに、あの子はもう私の物になってるのだから」

魔女は私の目の前まで来ると、そっと私の頬に触れる。

私は反射的に、魔女の手を振り払う。

そして、そのまま彼女を睨みつける。

そんな私の態度に、魔女は小さくため息をつく。

「いつまでそんな態度を取っているの?あなたの我が儘であの子が苦しんでいること、分かってるのかしら?」

「私の……わがまま……?ふざけないで!貴女達が勝手にムルを連れ去って

貴女のせいで苦しんでいるのよ……!?」

私は怒りに任せて、魔女に詰め寄る。

そして、彼女の胸ぐらを掴む。

魔女は抵抗する事なく、私にされるがままだった。

その姿が余計に腹立たしく感じた。

「ちょっと!ルカ落ち着いて!?ムルの事私達で助けるって決めたでしょう?」

「エミリアの言うとおりだ、少し落ち着いて……」

二人に止められ、私は渋々魔女から手を離す。

すると、魔女ケラケラと

笑い始めた。その姿を見て、私はさらに苛立ちが増していく。

すると、魔女は笑いを止め、私を見た。

「貴女の婚約者……いや”元”でしたっけ?あの人は良く働いてくれていますよ?

貴女の魔力は、あの人のお陰で私の方に流れ込んできている……まぁ、その事をあの人は気づいてないみたいですけど」

「私の魔力を……そう言えばあの時の花びらや森には変な感じがした……そう言う事だったのね」

「お陰様で、私の魔力は強くなってる。今なら貴女よりも強いかもね?」

魔女は私の顔を見てニヤッと笑いながら、指をパチンと鳴らす。

すると、私の周りに黒い霧のようなものが現れ私を包み込んだ。

私は驚き、声を上げる。

しかし、それは一瞬だけですぐに消えていった。

「今のは……?」

私は、自分の体を見る。特に変わった所はない。

すると、魔女は私に向かって手を差し出す。

私は咄嗟に、防御魔法を発動させようとしたが

何故か発動しなかった。

魔女は私の様子を見てくすくすと笑い、そして言った。

―――次はもっと強力な魔法を掛けてあげる。

そう言って、魔女は私に近づき耳打ちをした。

すると、さっきと同じように黒い霧が私を包んだ。

霧が晴れた時、魔女はいなくなっていた。

私は、さっきと同じように魔法を発動させてみると、少し弱い気はするけれど

魔法は発動した。

「ルカ大丈夫!?怪我とかしてない!?」

「エミリア、大丈夫です……ただ……」

「ただ?何かあったのか……?」

「魔力が弱くなったような気がします……」

「あの、霧のせいか……」

「ねぇ!!今すぐ魔女を追いかけようよ!!ルカの魔力返してもらわないと!」

「残念ですがそれは難しいと思います………」

「どうして!?」

「魔女は……もう、この国にいないみたいだからな……」

「そんな……」

エミリアは、悔しそうな顔をして下唇を強く噛む。

こんな事になってしまったのも全部……私の……

私は、拳に力を入れギュッと握りしめる。

魔女はもうこの国には居ない。

でも、きっと私の前に魔女は現れる……

そう信じて、私達の住む国に帰る事に決めた。

「二人とも」

「なぁに?」

「どうした?」

「私達の国に帰りましょうか」

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