倒れた時の事
「私の部屋……フィリスが連れてきてくれたのかな……?」
重い体を起こして、とりあえず着替えようと思いベッドから出る。
クローゼットから洋服を取り出そうとした時、隣に置かれていた鏡が目に入った。そこに映る自分の姿は特に変わった様子もなく、自分がここに居ることにホッとした。
あれは、夢?それとも現実?そんな事を考えていたら、扉をノックする音が聞こえ、はい。と返事を返すとフィリスが扉を開けて部屋に入ってきた。
「良かった、目が覚めたんですね……」
「フィリス……!うん、でもあの時の事よく覚えて無くて」
「そうですよね……ごめんなさい……」
フィリスは、そう言いながら心配そうな顔をしながら近付いてきて、私の頬に両手を添えると、そのまま額を合わせてきた。
突然の事で、私は固まってしまった。
フィリスの顔が近い……それに、なんだかいい匂いもするし……
「ふぃ……フィリス!?ちょっと顔が近いって言うか……」
「そうですか?それより、あの時の事詳しく説明しますね」
そう言って、フィリスは話を始めた。
私が倒れた理由は、あの時の光が原因だと言っていた。
あの光は、聖女の力を目覚めさせる為に必要な光なのだと。
けれど、あれだけではまだ不完全で、完全に聖女の力を覚醒させるには、まだ儀式を重ねなければいけないらしい。
昨日は倒れてしまったけれど、回数を重ねる度に力は強くなり
倒れることも無くなるんだって。
「そうだったんだ……じゃあ、またあの森に?」
「はい、沙羅の体調が良くなれば」
「……私なら大丈夫だよ!元気だし!だから明日でも行こう!」
元気だなんて本当は噓だ。
少し疲れているけど、これ以上情けない所を見られたくないと思って強がった。
でも、フィリスは私の事をよく分かっていて、すぐに気づかれてしまった。
「まだ疲れが残ってるでしょう……?」
「そんな事……」
「来週また行きましょう?ね?」
「は渋々そう答えると、フィリスは優しく微笑んでくれた。
それから、フィリスは私にお風呂に入るように勧めてきた。
確かに少し汗をかいていたし、気分転換にもなって良いかも、と思った私はフィリスに入って来るねと声を掛けてシャワーを浴びに行った。
シャワーを浴び終わり部屋に戻ると、部屋の中からなんだかいい匂いがして、キッチンの方を覗くと、フィリスが何かを作っている途中だった。
「フィリス?何作ってるの?」
「沙羅、ちゃんとお風呂は入れましたか?」
「うん!じゃなくて……何作ってるの?」
「朝食です、もう少しで出来ますから一緒に食べましょう」
「すごい……美味しそう……!!」
テーブルの上に並べられた食事を見て、驚いた。
だって、並んでいるご飯全部美味しそうでキラキラ輝いていたから。
私が感動していると、フィリスに椅子へ座るように促されて、素直に従った。
そして、二人で向かい合うようにして座りいただきます。と言ってから料理を口に運んだ。
どれもこれもすごく美味しくて幸せを感じた。こんなに幸せな気持ちになれるなんて思わなかった。
あっという間に平らげてしまい、満腹になった私は食後のお茶を飲んでいた。
「ふふ、美味しかったですか?」
「うん!すっごく!はぁ~幸せだ……」
「そんなに喜んでいただけるとは思いませんでした、作った甲斐がありましたよ」
そう言ったフィリスの顔は嬉しそうに見えた。
フィリスはいつも私の事を気にかけてくれる。
私も何かフィリスにしてあげられないかな……なんて、そんな事を考えていた。




