表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/316

ルカとルーク

「……あの国には、闇魔法を使う人間が住んでいます」

「やっぱりあの国に闇魔法使いが……」

「……ルークは知っていたのですね、あの国の事を」

「色々と調べていたらね……」

「流石ルークですね……この事は、私達聖女と国の上の人間にしか知らされていない事……」

私がそう言うとルークは、やっぱりか、と呟きながら目を伏せた。

ルークが何を考えているのか、私には分からないけれど、ルークがこの事を知った以上、もう後には引けないのだ。

だから私は、思い切ってある提案をする。

それが例えどんな結果になろうとも……

「あの国は危険です……だから私も北の国に向かいます」

「ダメだ!ルカは連れていけない……」

「どうして?私なら何でも知っている、力になれますよ?」

「ルカを危険な目に合わせたくない……!お願いだ……」

震えた声でルークはそう言う。

いつもなら嬉しい言葉だけれど今は違う……

私は、貴方の力になりたいのです。

そう思ってもらえる事がとても幸せだから。

「私は大丈夫です、私を誰だと思っているのですか?聖女ルカですよ?」

「ルカ……ははっ、君は昔から変わらないね」

「ふふっ、そうでしょう?……だから、心配しないで下さい。私をもっと頼って欲しいんです……」

そう言いながら、私はルークに抱きついた。

そして、少しの間そのままの状態でいると、ルークは私の背中に腕を回して優しく抱きしめてくれた。

「俺はルカを失いたくない……俺にとってルカは大切な存在なんだ……」

「はい……私もルークが大切です。だから、ルークの力にならせてください」

そして私は、そっとルークから離れた。

ルークは私の顔をじっと見つめた後、諦めたように小さくため息を吐いた。

きっと、何度言っても無駄だと思ったのだろう。

そう思われても仕方がないけれど、それでも私はルークの力になりたい、その為にはどんな手段だって使うつもりだ。

「分かった、ルカは一度言ったら聞かないからね」

「ふふっ、良く知ってますね?」

「昔からの仲だからね、そう言えば昔もこんな事があったよね?俺が裏山の調査に行くって言ったらルカも行きたいって言って……」

「ありましたね、そんな事……あの時も今日みたいに強引について行こうとして……」

「結局俺が折れたんだったんだよね」

そう言って二人で笑い合う。

懐かしいなぁ……なんて思いながらも、昔の事を思い出して嬉しく思う。

あの時は、まさか自分がルークと結婚する事になるとは思っていなかったな。

ルークに対する気持ちはあの時と変わらない、大切な人で大好きな人。

けれど、あの時と違う気持ちがある。それは……この人の力になりたいという思いと、この人を守りたいという強い想い……

この気持ちはきっと今までの私には無かった。

アルマ様と婚約破棄をして、沙羅と出会い色々な事を経験して生まれた気持ち。

ルークに守られるばかりの私はもう卒業、これからはルークも、そして皆を守れるようになるんだ……それが私の、聖女ルカの務めだから。

「ルカ?どうかした?」

「いいえ、何でもありません。ただ……」

「ただ?」

「聖女として頑張らないとな、と考えていたのです」

「そんな、ルカは十分凄いよ?」

「ありがとうございます……それにしても、今のルークなんだか昔のルークに戻ったみたいですね」

「えっ!?あ……いや、昔の話をしたからな、それで……」

「私はそっちのルークも今のルークも大好きですよ?」

そう言った後、私は微笑みながらルークを見つめる。

すると、ルークは頬を赤く染めながら照れたような表情を浮かべた。

その様子が可愛くて思わず笑ってしまう。

この平和な時間がもう少しだけ続きますように……そう祈りながら、私はゆっくりと瞼を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ