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闇の魔法と北の国

あの日、夢で見た事がまさか現実になるなんて。

ムルが、黒い靄に襲われ消えていく夢。

内容はよく覚えていなかったが、その時ムルが俺に向けて助けて……と言って

きたような気がする。

その夢の内容に、何だか嫌な予感がした俺は

急いで身支度を整えてルカの元に急いだ。

そして、その嫌な予感は的中してしまった。

ムルが連れ去られ、しかもその犯人がアルマだった。

アルマは謎の黒服の男と繋がりがあり、何か企んでいるみたいだが

その目的が分からない。

俺は、アルマの目的と、黒服の男について調べる事にした。

*****

「やっぱり………簡単には見つからないか」

あの後、ルカと別れて色々調べていたが、奴に関する情報がなかなか見つからなかった。

やつの事を調べようとすると、必ず邪魔が入って上手くいかない。

まるで、誰かが意図的に情報を隠そうとしているかのように……

しかし、これだけは分かった。

それは、あいつが闇魔法を使うということだ。

通常、闇魔法を使える人間は少ない……いや、いない。と言った方が正しいかもしれない。

闇魔法は、光魔法の対極に位置するもので、使えば使うほど自分の身を蝕んでいき、最終的には自分が自分で無くなっていくと言われている。

実際に、闇の魔力に侵されて精神異常をきたした者もおり、今では禁忌とされている魔法だ。

「そんな魔法を使う人間がまだいるなんてな……」

闇魔法が使える人間は、昔から忌み嫌われていて差別されていたらしいが……

一体、何故そこまでして魔法を使いたがるのか……

「それは本人に聞くしかないな」

そう呟き、資料に目を通す作業に戻る。

もう少し情報を集めれば、きっと手がかりが掴めるはずだ。

*****

「北の国か……」

アイツの事を調べていて、新たに分かった事があった。

まだ、関係があるかは分からないが、北の国に闇魔法を使う魔術師がいる

という、噂を聞いた。

その国には、人が住むことが出来ない程の寒さがあるらしく、普通の人はまず近づかない。その国の更に奥に行けば、氷に覆われた城があり、そこには、 氷の魔女と呼ばれる女性と、彼女が従える魔物達が住んでいると言う。

……といのは、あくまで御伽噺。

と皆は言うが、どうも気になって仕方がない。

一度行ってみる価値はあると思う。

「まぁ……これは最終手段だけどな……」

流石にこんな危険な場所に行くのは、危険すぎる。

もし行くなら、もっと準備をしてからだ。

*****

あれから数日が経った。

相変わらず、有力な情報が得られない日々が続いていた。

そろそろ、焦りが出てきている。この調子では、いつまで経っても解決しない。

それに、時間が無いのだ。

「やっぱり、行くしかないのか……」

俺は覚悟を決めて、北の国に行くことを決めた。

しかし、一人で行くのはあまりにも無謀だ。

だからと言って、ルカやエミリアを連れて行く訳にもいかないし……

そう考えていた時、扉をノックする音が聞こえた。

コンッ コンッ コンッ と規則正しく三回、まるで合図のような音だ。

俺の知り合いで、こんな事をする人は一人しかいない。

そう思い、扉を開けると予想通りの人物がいた。

「こんばんは、ルーク」

「エミリア?どうして俺の家に……」

「ルークが困ってるって思って」

と笑顔で言う。

確かに今の状況はかなり厳しい。

けれど、エミリアを連れて行くのは危険すぎる……

「気持ちはありがたいけど……」

「私、こう見えても強いんだよ?」

「知ってるよ……エミリアが強い事くらい……」

エミリアは、光属性の中でも希少な回復魔法が使える。

その力を使って、怪我をした人を助けているのを見たことがある。

彼女なら、ついて来ても大丈夫なんじゃないかと思ってしまう。

でも、やはり心配の方が勝ってしまう。

「私だって、ルカとムルの事助けたいの、だからお願い。」

「エミリア……分かった、でも危なくなったらすぐに帰るからな」

彼女は、真剣な眼差しを向けて言った。

彼女の意思は固いようだ。

それに、このまま何もしないよりかは、少しでも行動を起こした方がいい。

俺は、彼女を連れていく事にした。

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