嫌な予感
「ルーク!どうしてここに!?」
「こんばんは、ルカ」
「え、えぇ……こんばんは……じゃなくて!」
「う~ん……それはルカの部屋で話そうかな?」
そう言ってルークは私の手を引いて、歩き出した。
私はそれに逆らうこともできずについていくしかなかった。
部屋に着き、ソファーに座る。
「それで、こんな時間にどうしたのですか?」
私がそう聞くと、真剣な表情で見つめられる。
いつもと違う雰囲気に、戸惑ってしまう。
いつもなら、冗談なんかも言ってくるのに……
そんな事を考えながらも、黙っているとゆっくりと口を開いた。
「ムルが教えてくれてね……」
「ムルの事何か知っているのですか!?」
ルークからムルの名前が出て、思わず身を乗り出して聞いてしまう。
ムルが何処にいるのか、無事なのか……聞きたいことは沢山ある。
けれど、答えを聞くのが怖い。
もし、ムルの身に何かあったらと思うと……
それでも、聞かずにはいられなかった。
「少し落ち着いて、その様子だとムルの事は分かっているみたいだね……」
「はい、ムルがアルマと、黒い服の人といるのを見たんです……ルークは
何故ムルの事を?」
「うん、ムルの声で助けて……ルカに伝えて……と声が聞こえたんだ」
「それは……きっと、ムルの力ですね……でも、何でルークに……」
「もしかしたら力を抑えられていたのかもしれない……それよりも、黒い服の事を教えてくれるか?」
「えぇ……」
私は、今日見た事、そしてその前に見た事を全て話した。
その話を聞いた後、しばらく考え込んでいた。
そして、顔を上げてこちらを見る。
「その魔法陣の紙を見せてもらえるかい?」
「はい……ちょっと待ってください」
そう言って、ソファから立ち上がり机に向かう。
そして、机の引き出しの奥の方に入っていた小さな小箱を取り出し
ルークの元に持って行った。
「この中に……?」
「はい。この箱には魔法が仕掛けてあって、私にしか開けられない様にしているのです」
私はそう言いながら、箱の中から小さな紙を取り出し、ルークに手渡した。
するとルークは、その紙をじっくり見て、それから私の顔を見て言った。
「コレは……確かに魔法陣だね……それにしても、これは高度な魔法だ……この魔法を作った者はよほどの魔法の使い手だろうね」
そう言われて、改めてこの魔法がどれだけ凄いものなのか分かる。
この魔法を一人で作れるなんて……
「この国には、これ程の魔法を使える者はいないだろう……他国の者が作ったのだろうね。」
「やっぱ……ルークもそう思いますか?」
「うん。それで、黒い服の顔とかは見たのかい?」
「いいえ、フードで顔は隠されていたので……体格と声的に男性だとは思うのですが……」
「なるほど、俺も黒服の男について調べてみるよ」
ルークはそう言ってくれたけど、私としては心配でならない。
森をあんな風に出来るほど強力な力を持っているのだ。
ルークも簡単にやられてしまうかもしれない。
不安そうな顔をしていたのだろうか、ルークが頭を撫でてくれた。
「ルーク……」
「大丈夫だよ、危険だと思ったらすぐに引くよ」
「約束ですよ……?」
私がそう言うと、優しい笑顔で微笑んでくれた。
あぁ、やっぱり好きだな……そう思ってしまう。
でも何でだろう……なんだか嫌な予感がする……




