久しぶりのお勉強会
「さて、色々ありましたがお勉強会中もそろそろ終盤ですよ」
「ほんとに?でも、私まだ自信が……」
「沙羅なら大丈夫です!さぁ、始めましょうか」
私がそう言うと、沙羅は持ってきたテキストを机の上に並べて、ノートを開く。
最初に勉強を教え始めた頃は、本当に何も分からなくて私に泣きついていた
沙羅が、今ではこんなにもスラスラと問題を解く事が出来るようになぅていて
私としても教えがいがある。沙羅は努力家で、教える度にどんどん知識を吸収していく。
「ねぇ、ルカここは……?」
「あぁ、ここは……」
「なるほど……う~ん……やっぱり難しいよ~」
「ふふっ、沙羅なら絶対できます、頑張って」
「……うん!」
沙羅が分からないところがあれば、丁寧に説明していく。
すると、最初は理解出来ていなかった部分も、だんだん分かってきて理解できた時の嬉しさもあってか、表情が明るくなっていく。
そして、しばらく時間が経ち……
トンッと最後の一問を解いてペンを置いた。
「はぁ~少し休憩……」
「お疲れ様です、今日もよく頑張りました」
「えへへ~あれ?そう言えば……エミリアは?」
「エミリアは、今日は何か用事があると言っていて来れないと言ってました。沙羅にごめんねって言っておいてと……」
「そうだったんだ~なんか、エミリアがいないとなんか変な感じ」
「そうですね、最近はいつも三人でお勉強会してましたからね……っと今お茶を淹れてきますから休んでてください」
「は~い」
私はそう言い残し部屋を出て、キッチンへと急ぐ。
キッチンに入りティーセットを用意してから、今日のお茶を選ぶ。
「今日はこれにしてみようかしら」
私は、ダージリンの茶葉が入った缶を手に取り、蓋を開けるとふわっと香りが広がる。これは、私が、一人でこっそりと町に遊びに行ったときに、一目惚れして
買ったお茶で、特別な日に飲もうと決めていたお茶なんだけれど、今日の沙羅は
凄く頑張っていたから、特別に……ね
お茶を選んだら、ケトルに火をかけお湯を沸かす。
その間にティースプーンで、人数分の茶葉の量を計り、沸騰したお湯を ポットに入れて、砂時計をひっくり返す。そして、蒸らす間にカップも温めて、ソーサーそれから、私が作ったパウンドケーキも一緒に乗せて、沙羅の待つ部屋まで戻った。
「お待たせしました」
「お帰りなさい!わぁ~美味しそう……!!」
「ふふっ、ならよかったです」
「ねぇ?もう食べていい?」
「はいはい、ちょっと待ってくださいね」
目をキラキラさせてそう言った沙羅を見て、思わず笑ってしまった。
この子は、本当に美味しい物を食べるときが一番幸せそうな顔をしている。
そんな事を考えながら、紅茶の入ったティーカップを沙羅の前に置いて、 私も自分の席に着く。
「さぁ召し上がれ」
「いただきま~す!」
「いただきます」
それを合図に、ティーカップを持ち上げて口元に運ぶ。
こくっとお茶を一口に含む。
その瞬間、ふわりと鼻をくすぐる爽やかな香り。
そして、後からくる渋みに深いコク……
「はぁ……美味しい……」
「ほんと凄く美味しいよ……!お茶もお菓子も!」
「あら、ありがとう、今日のお菓子は自信作なの」
「本当に美味しいよ……!お茶も美味しいし……このお茶どこで買ったの?」
「町のお店よ、気に入ったのなら今度行ってみましょうか?」
「いいの……!行きたい!」
沙羅は、私の作ったお菓子を頬張りながら、笑顔で言う。
そう言われると、連れて行かないわけにはいかないじゃない……
それにしても、沙羅の食べる姿はいつ見ても可愛い。
頬っぺたいっぱいに食べ物を入れて、モグモグと口を動かし、ゴクンと飲み込むと、満面の笑みを浮かべる。
見ているだけで幸せな気持ちになるのよね……
私は、そんな沙羅の姿を見てそう思った。
「さて、これを食べたらお勉強を再開しましょうね」
「は~い!」
なんてやり取りをして、今日のお茶会は終わった。




