怪しい気配と西の森
三人が帰った後の部屋で、私は一人ムルの名前を呼ぶと
部屋の隅の方からフッとムルが姿を現した。
私はやっぱりここに居た、と思いながらムルの元に近づく。
「ねぇ?ムル、私達の話聞いていたでしょう?」
『うん、全部聞いてた……盗み聞きしてゴメンなさい』
「ううん、いいの。それよりも、協力して欲しい事があるの」
『もちろん!アイツをやっつけるんでしょ!ムル頑張る!』
そう言ったムルはとてもやる気満々といった感じだった。
あと、私はムルに聞きたいことがあるのを思い出して、気になっていたことを質問した。
「ねぇ、ムル。なんでエミリアに会いに行ったの?」
『ん~ルカの大切な人だから会わなきゃって思って!』
「そうだったの、じゃあ……最近よく出かけてた理由は?」
『それは……最近ルカの周りで変な気配がしたから調べに行ってたんだ
ほら、最近西の町に魔物が出たって言ってたでしょ?それに何か関係あると思って』
知らなかった、まさか私の周りでそんな気配があっただなんて……
私の周りで、変な気配があるのなら私が気づくはずだし……
「そうだったのね……」
『多分精霊にしか分からない力なんだと思うんだけど……正体掴めなかったの、ごめん』
「いいえ、気にしないで。でも、ありがとう。教えてくれて」
私はムルの頭を優しく撫でると、嬉しそうな顔をして、もっと!とねだってくる。それに答えるように、何度も撫でていると満足したのか、ありがとう!と言ってくれた。
変な気配……か。
これは……私も調べた方がよさそうね、ムルにもう一度ありがとうと伝えた後、私は自室に戻った。次の日、私は早速行動を起こすことにした。
朝食を早く済ませ、着替えると町に向かった、目的地は魔物が出たという
西の町。
私は、人目の付かない場所に移動して、魔法を使うと一気にその場所まで飛んで行った。
着いた先は、町の近くの小さな森。
魔物が出たという森は、もう少し町に近い所で出たらしいけど、念のため、こちらにも調査に来たのだ。
「……少しだけれど、魔力を感じる……」
やっぱり、この辺りで何かあったのは間違いない。
けれど、残ってる魔力はほんの少しだけで、これだけでは魔力を使った
人物を特定する事は出来ない。
「もう少し町の方を見てみましょうか……」
そう呟いて、町の方の森へと歩いて向かった。
森に近づいていくと、濃い魔力の残り香を感じ始めた。
どうやら、ここで誰かが魔法を使ったようだ。
でも、この濃すぎる魔力……ただの人間が扱えるようなものではない。
町の近くの森を進んでいると、あるものを見つけた、それは……
「魔法陣……?でも、こんなもの見たことがないわ……」
私が見つけたのは、魔法陣が描かれた小さな紙。
それも、かなり古いもので、書かれている文字は読めないし、とても小さく 書かれていた。
でも、どうしてこれがここにあるのだろうか……
私は、これが何なのか確かめたくなって、その紙を拾い上げようとした。
その時……
―――バチンッ!!!!
「いたっ!」
静電気のような音がすると、私の手に痛みが走った。
突然の事で驚きながらも、私は咄嵯に手を引っ込めた。
そして、目の前にあった魔法陣の紙は燃えて消えてしまっていた。「今のは一体……」
手を見ると、火傷をしたかのように赤く腫れていた。
これは、触れてはいけないものだったということかしら……
そう思いながら、私は痛む手をそっと握った。




