あの人が帰った後
あの人が帰ってから一体何時間が経ったのだろう……
私は、自室のベッドの上で横になり、先程の事を思い出して自己嫌悪に陥っていた。いくら、あんな状況だったとは言え、あの人を突き飛ばしてしまうなんて……。
はぁ……と私は深い溜息をつく。
そして、ふと窓の外を見るといつの間にか雨が降っていた。
「ほんとに嫌な日……」
そう呟いて、私は再び目を閉じた。
*****
「あれ、寝ちゃってた……」
あの後、私はいつの間にか眠ってしまったようで
時計を確認すると、時刻はすでに夕方になっていた。
「……あの人の事相談するべきだったかな?」
一瞬考えたけれど、すぐに首を横に振った。
きっと、ルークに相談しても心配させてしまうだけだ。
それに、もし誰かに知られたら沙羅にも迷惑をかけてしまうかもしれない。
私は、そんな考えを振り払うように、これからの事を考えることにした。
とりあえず、ベッドから起き上がり眠気覚ましにシャワーを浴びる事にした。
私は、脱衣所に行き着替えを準備してから浴室に入り、お湯を出して身体を流す。シャワーと一緒に色々な気持ちが洗い流されるような気がした。
「はぁ……気持ちいい」
温かいお湯が肌に触れる度に、少しずつ気分が晴れていく。
でも、まだ完全に気持ちの整理がついた訳じゃない。
お風呂から出て、髪を乾かし服を着替える。
鏡の前に立って自分の姿を確認してみると、そこには疲れ切った表情をした自分が映っていて、思わず苦笑してしまう。
「酷い顔ね……はぁ……しっかりしなさい、ルカ。こんな所で負ける私では無いでしょう?」
そう自分に言い聞かせ、パンッ!と頬を両手で叩いて気合いを入れる。
よし!っと小さく声を出し、そのまま部屋を出た。
廊下に出て、窓の外に目をやるといつの間にか、雨は止んでいて夕陽が綺麗に輝いていて、少しの間、その光景に見惚れていた。
*****
自室に帰り、机に向かう。
これからの事を色々と考えてみる。
アルマ様が沙羅とルークにちょっかいをかけてくる可能性は高い。
ルークは、あの人の事を避けることができると思うけれど……
沙羅はあの人と一緒に住んでいるし、何か言われたとしても断ったり逆らったりする事は出来ないだろうからすごく心配だ。
「でも……沙羅に何かしようとしたらあの人はきっと邪魔してくる……」
何かいい案は無いかな……と悩んでいたら、一つの事を思い出した。
「そうだ、確かあの学園は寮があったはず……それならあの人も手を出せない
はずよね」
それを思い出した私は、慌てて学園長に連絡を取った。
事情はぼかしながら、沙羅を寮に入れて欲しいと相談をすると、学園長は
かまわないと言ってくれたので、ありがとう、とお礼を言って電話を切った後
早速沙羅に電話をした、沙羅はいきなりの事で、驚いてはいたけれど分かったと言ってくれた。
「でも……いきなり何で?」
「それはまだ言えないの、ごめんなさい」
「ううん、大丈夫だよ!あ、ゴメン……あの人が帰ってきたみたい……」
「分かった、じゃあ切るわね」
「うん、また!」
そう言って、私は通話終了ボタンを押してスマホを置いた。
そして、大きく深呼吸をして心を落ち着かせる。
さっきまで忘れかけていた不安と恐怖が蘇ってきて、胸が苦しくなる。
でも、今は私がしっかりしないと……
両手で頬を軽く叩き、よし!と声に出して気合を入れた。




