美味しそうに食べるムル
「あ、お嬢様。お食事の方ご用意出来てますよ」
「ありがとう、無理なお願いだったのに……」
私がそう伝えると、キッチンに立っていたシェフは
そんなことありません、お嬢様のお願いでしたらどんな事でもと笑顔で答えた。
私はそんなシェフに感謝しながら、トレイに乗せられた夕食を、ムルの待つ自室へと運んだ。
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「ムル、お待たせ。お腹空いたわよね?」
『わ~~い!!ん~やっぱり美味しそう』
「ふふ、そう言ってもらえると私も嬉しいわ」
ムルは夕食を前に、瞳をキラキラと輝かせている。
こんなにも喜んで貰えると、私も何だか嬉しくて自然と笑みが零れてしまう。
『ねぇ、もう食べてもいい?』
「えぇ、もちろんよ」
『やったー!じゃあ、いただきまーす!』
そう言ってムルは、夕食に手を伸ばし口へと運ぶ。
ムルはモグモグと食べながら、美味しい~~!と満面の笑みを浮かべている。
いつも思うのだけれど、この小さな体にこの量の食事が収まるのだから不思議で仕方ない。
ムルが食べているのは、私達が食べている食事と全く同じ物なのだけれど 、初めてムルに食事を出した時
ムル用にと小さいサイズで作って貰った所ムルは、こんなのじゃ足りない!と拗ねられしまい
それから、ムルの食事は私達と同じ量で用意するようにした。
「ムルは本当に美味しそうに食べるわね」
私がそう言ってムルの頭を撫でると、ムルは撫でられるのが嬉しいのか えへへ……と笑いながら、だって本当に美味しいんだもん。と、ニコニコと笑いながら答えた。
「それを家のシェフが聞いたら泣いて喜ぶわ」
『そうなの~?じゃあルカから伝えてほしいな!』
「はい、機会があれば」
そう言って私はくすくすと笑いながら、ムルが食事を終えるのを見守るのだった。
『ふぅ~~お腹いっぱい、美味しかった~』
「満足出来ましたか?」
『うん!本当に美味しかった!ごちそうさまでした』
ムルは満足そうにお腹を擦りながら、幸せそうに笑った。
私はそんな嬉しそうな顔をするムルの頭を撫でながらお粗末様でしたと答えた。
「食器を片付けてきますからムルはゆっくりしていて?」
そう言って私は椅子から立ち上がり、食器を手に取ると
キッチンへと向かった。
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そう言えば、ムルの事を見ていた時
少しだけだけれど、ムルとの記憶を思い出すことが出来た。
ムルが好きな食べ物の事、この家に来て初めて食事をした時の事
ムルがご飯を沢山食べる事。
そんな些細な記憶だけれど、この事を思い出せて良かった。
「ふふ、今度はムルの好きな物でも用意しましょう」
私はムルに喜んでもらえるように、ムルの好きな食べ物を考えながら
キッチンへと続く廊下を歩いた。
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「お嬢様!?片付けは私が……!」
「いいの、これくらいはさせて」
キッチンへ着き、使った食器を片付けているとキッチンに立っていたシェフが驚きの声を上げながら、私の元へと駆け寄って来た。
そんなシェフに私はそう言って笑いかけると、シェフは何か言いたげな表情を浮かべたがすぐに諦め 分かりました。と一言だけ答え、自分のしていた作業に戻った。




