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町に広まる噂

「さて、今日のお勉強は……と言いたいところなんですが、今日はお休みしましょうか？」

「えっ！どうして？」

「ん～？最近の沙羅は頑張っていましたからね、だからご褒美です」

そう言って頭を優しく撫でる。

沙羅は、嬉しいような恥ずかしいような複雑な表情をしていたが、それでも嫌ではないようでされるがままになっていた。

「でも、お休みって言っても……」

「じゃあ、エミリアも呼んでお出かけしましょうか！ちょっと待っててください」

そう言って私は、エミリアに連絡を取る。

すると、エミリアはすぐに準備してこっちに来てくれると言ってくれたので

私は沙羅の元に戻って、エミリアが来てくれることを伝えると嬉しそうにしていた。

しばらく待っているとエミリアがやってきて、私達は笑顔でエミリアを出迎えた。

「エミリア、いらっしゃい」

「お邪魔します～！それで、これからどうする？」

「沙羅は行きたい場所とかありますか？」

「ん～どうしょう……」

沙羅が悩んでいると、エミリアが突然、そうだ！っと何かを思い出したかのように声を上げた。

私と沙羅は何事だろうと思い、不思議そうにエミリアを見た。

エミリアは、そんな視線に気づいていないのか気にしていないだけなのか分からないけれど、そのまま言葉を続けた。

「お洋服見に行こう！」

「お洋服？」

「うん！だって、沙羅はこっちに来てから自分でお洋服とか買ってないでしょ？」

「まぁ……お洋服とかはあの人が勝手に買ってくるけど……」

「じゃあ、町に買い物に行きましょうか」

確かにこちらの世界に来て、沙羅はあまり買い物などはしていなかった。

服も、聖女としての服装以外は、全てあの人に用意されていたみたいだし。

「でも……いいのかな」

「大丈夫よ、あの人そういう事に興味ないから」

「そうそう、じゃあ改めて出発～！」

エミリアのその合図で私達は町へと繰り出した。

三人で楽しくおしゃべりをしながら歩いていく。

しかし、町に近づくにつれて町の雰囲気がおかしい事に気が付いた。

私達の事を見た町の人達は、お互いにひそひそと何か話してこっちをチラチラと

あまり好意的とは言えない目でこちらを見ている。

私は、何故こんな風になっているのだろうと疑問に思っていると、一人の女性が

私達に近づいてきた。

「あの……聖女様……」

「はい、どうかしましたか？」

「聖女様にあまり良くない噂を聞きまして……」

「噂ですか？それはどのようなものでしょうか？」

すると、女性は少し言いづらそうな顔をしていたが、意を決したように話し始めた。

その内容は、私が魔物を呼び出しているんじゃないか？と言うものだった。

そして、別のこの町でも魔物が出たと言う情報もあるらしく、それもあって皆不安になりこうして私達を見ていたと訳だ。

女性の話を聞いて、私は内心かなり焦っていた。

魔物の噂がまさか、ここまで広がっているとは……

このままでは、町の人を不安にさせてしまう、そう思った私は

ふぅ、と深呼吸をして町の人に向き合った。

「皆様、落ち着いてください。私の魔力は魔物を呼ぶようなものではありません、そして私がいる限り魔物が皆様の事を襲う事はありません、なので安心してください」

私がそう言うと、ざわついていた空気が徐々に収まっていき、私達に向けられていた疑いの目もなくなった。

良かった、何とかなった。

そう思いながら、ホッと息をつくと沙羅とエミリアが心配そうに私を見つめていた。

いけない、今は二人の事をほったらかしにしてた。

「ごめんなさい、二人とも」

そう謝ると二人は、全然問題ないと笑顔で答えてくれた。

それから、女性にもお礼を言われてその場を後にした。

今日はこれで、お開きにしようか？と私が提案したけれど、二人は大丈夫だよと言ってくれたので、そのまま買い物を続けることにした。