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森の奥の湖と精霊

久しぶりの学園はとても楽しかった。

学園長と話すだけの短い時間だったけれど、あの場所にいた私は

一瞬だけれど学生に戻れたような気もする。

何だかこのまま、学園から帰るのも勿体ないな、と思った私はくるり

と方向を変え歩き出す。

「……ちょっとだけなら大丈夫よね」

そう独り言を呟いて、私は沙羅の屋敷に向かう前に、少し寄り道をすることにした。

寄り道といっても、どこかお店に行くわけではなく、私が向かったのは学園の裏にある森。

ここは、私が学生の時よく一人で遊びに来ていた場所。

「…………ここも変わらないわね。確か……こっちだったわよね?」

私は記憶を頼りに森の中を進む、ここはあまり人が来ないのか、草木が

生い茂っていて足元に気を付けながら進んでいく。

「……あ、あったわ!」

私は目的のものを見つけて嬉しくなり、思わず声が出てしまった。

目的の物とは、小さな湖。

当時の私は、聖女というだけで周りから距離を置かれ、友達という友達も出来なくて……

それだけなら良かったけれど、私の事をよく思わない人達から嫌がらせの様な事もされて

何もかも嫌になった私は、この森を彷徨い見つけたのがこの湖。

エメラルドグリーンに光輝く水面を見て私は、とても綺麗だと思い それから私は、ここに来ると心が落ち着くようになった。

この湖を見ていると、私の悩みなんてちっぽけな気がして……

「懐かしいわね……貴方のおかげで、私頑張れたの、ありがとう」

湖の水に触れて、私は小さく呟いた。

すると、急に強い風が吹き辺りがキラキラと光りだした。

「な、なに?」

『ルカ……!』

「声が聞こえる……?でも、一体どこから」

『ここだよ!ここ!』

「もしかして、この湖の精霊……様なのですか?」

『そう!ひさしぶりだね。大きくなったね、ルカ』

私の目の前には、小さな羽の生えた手のひらサイズくらいの小さな女の子。

彼女は、ピンク色の長い髪をふわふわとさせながら宙に浮かんでいる。

この湖の精霊だというけれど、この湖に精霊がいるだなんて聞いたことが無い私は

何故ここに?と思いながらも彼女に話しかける。

「この湖には精霊がいるだなんて知りませんでした……」

『昔はね、もっといっぱいいたの!けれど、みんなが私達の事忘れちゃったから……』

「消えてしまった……のですね……では、何故私に話しかけたのですか?」

『ルカは、昔からこの湖にお祈りしてくれていたでしょ?そのお陰でお話できるぐらいまで力が戻ったの!

けれど、私がお礼しようとした時にはルカはここに来なくなっちゃった…』

「それは……学園を卒業したから……」

『でも!今日ルカに会えた!』

精霊はニコニコと嬉しそうに笑いながら、私の胸に飛び込んできた。

確かに、学園にいた頃ここでお祈りはしていた事がある、何故かここでお祈りをすると

いつもよりも集中できたし、いつもよりも魔力が上がった気がして……

まさか、それが精霊の力になっていただなんて……

『ねぇねぇ!ルカ今困ってるんでしょ?』

「困っている……確かに困ってはいますが、なんでそんな事を?」

『やっぱり!私ルカにずっとお礼がしたくて……だからルカの困っている事お手伝いしたい!』

「でも……精霊様にそんな事……」

『精霊様じゃなくてムル!』

「ムル様……ですか?」

『様もいらないよ!というわけで、よろしくねルカ!』

「は、はぁ……」

そう言ってムルは嬉しそうに笑う、沙羅の家に行く前に心強い味方がまた出来てしまった。

この事どう説明したらいいんだろうと考え込んでいたら私の手の上にいたムルがあっ!と声を上げた。

「どうしたのですか?」

『ルカのお手伝いしたい精霊はまだいるから、今度紹介するね!』

「えっ!?」

ムルだけでも凄いことなのに…まだいるだなんて……

本当にどうしたら良いのでしょうか……

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