話の先
会話文がどうしても長くなっちゃいますね。特に今回は説明っぽい感じなんで余計とでしょうか。
「クラウス様。お父上が書斎でお待ちでございます。」
メイドにそう言われて俺は後ろを振り返る。
「分かった。すぐ行こう。」
明快に答えて俺は父上の待つ書斎へ向かう。俺の部屋から書斎までは少し遠く。2階の角部屋である自室を出て、1階の階段近くへの書斎へ向かわないといけないのだが如何せん公爵のせいなのか屋敷がでかい。体感で4分ほど歩くので400~500mほどあるのではないかと思う。そんなことを思いながら歩いていると案外あっという間に着くもので俺は書斎の前に立っていた。
コンコンというノックを立てて
「父上。クラウスが参りました。」
とドア越しに言うと、
「入れ。」
という短くも公爵だという威厳のある声の渋さが聞こえたと共に俺は書斎へ足を踏み入れる。
「お呼びとの事でしたが一体どのような用で?」
俺は純粋に尋ねる。
「記憶が戻ったようなのでな。ここで少し話でもしようと思って呼んだのだ。」
と父上が発した言葉に俺は衝撃を受けた。
「どうしてそれが分かったのですか?」
と聞くと父上は、
「全てが重なったと言えばいいのだろうか…。まず今年が王国歴5005年だということはわかっておるな?預言者というか聖女と言うべきかまぁ2つの呼び名がある1人の人物。王国歴が始まる時の聖女。所謂建国の母が死の間際にはなった言葉らしい。王国歴5000年にとある者が異世界から転生してくるとな。その者は適正魔法に時空間魔法を持っておるという情報しか無かった。」
父上がそこまで言うと俺は話を遮り言葉を発する。
「では、最初から転生者とわかっていたということですか?」
俺は父上に尋ねる。
「最初はまさかと思ったさ。だがお前の母さんが身ごもってからというもの不思議なことが怒ったのだ。見知らぬ人間の記憶、死の間際、修行風景、恐ろしい格好をしたものとの会話。自分の声は出ないが何故か意識はそこにある。そんな状態だった。」
父上は重い重い口振りで言葉を発する。
「そんな時に私は恐ろしい格好をしたものと会話を、いや一方的に告げられたと言った方が正しいな。言われたのだ『5歳になる頃この子の記憶を戻すからそれまではこの子を頼む。』とその1日後に生まれたのがクラウス、お前だ。私はすぐに気づいたよあぁこの子が頼まれた子かと。」
父上はそう言った。
「あまり前世のことは知られたくはありませんでした。でも父上と母上なら知られても良かったと今なら思えます。こうして本当のことを伝えてくれて。俺は幸せ者です。」
俺は少しパンクしそうな頭の中で何とか感謝を伝える。
「暗い話はこのくらいにしておこう。今日はお前に見せるべきものがあるんだ。着いてきなさい。」
と父上は椅子から立ち上がり机の隣にある本棚の本を手に取りおそらくボタン上のものを押す。
すると本棚がゆっくりと開き地下への階段が見えるようになった。
「この道は?」
父上にそう尋ねる。
「着いてこい。」
父上が短く言葉を発し俺はその後ろを着いて歩く。
しばらく歩くと広大な図書館のようなところにでた。
「ここは?」
「ここは私たちの先祖代々の賢爵閣下が集めた蔵書だ。ざっと10万冊ある。うちの家の後継者選びの方法を言ってなかったな。後継者になる方法はただ1つ。ここにある蔵書全てを読破し必要な事を全て記憶することだ。ここには古今東西色々な本がある。ただの日記から禁書まで種類は様々。魔法の本や武芸の本も存在する。もっとも武芸はお前に必要は無いかもしれんがな。」
なるほど。難しいことだが単純明快だ。これだけの本を読めば当主候補になるなら俺はやろう。
「ですが父上。それならば早く産まれれば産まれるほど有利になるのでは無いのでしょうか?」
その問いに父上は答える。
「我が賢爵家の当主になった先祖様で長子だった方よりは長男以外の方が多いのだ。確かに長子は一番最初に生まれる。だがな長子が皆優秀とは限らないのだ。これはいちばん優秀なものが当主にふさわしいというある種の試験なのだ。記憶力然り継続力然りな。それに別に読み切ったからと言って必ず当主にならないといけない訳では無い。読み切った後そこからどうするかはクラウス。お前次第だ。」
父上のその言葉で俺は迷いなくここの本を読み切ることを決めた。だが、当主になるかと言われたらまだ分からない。本当に俺がしたいことはなんなのか。そんな疑問とともに俺はこの先を生きていかないといけない。取り敢えずは魔法の本から読んでいこう。
俺はそう心で覚悟を決める。
そして物語は5年後へと進んでいく。