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魂の再生

 イワヒメが持っていた珠の力は導祖(どうそ)の手に渡ってしまったので再び誰かに託されるまで暫くの時間を有する。


 ヤクナスはメイたちが現れる僅か前にこれを奪おうとしていたようで、バラストの反撃により最悪の結果は免れたようだが事態は思わぬ方向に進んでしまった。


 バラストはメイの目的を聞いたうえで協力しないと言い、更にはイワヒメの珠を得た者が現れたらその者を守って敵対すると宣言したのだ。


 メイは不死身だが懸念はそこではなく昊之上(こうのかみ)が目覚めるかもしれないというのに力ある者が一丸とならないことにあった。


 バラストは昊之上の復活をくだらないことだと言った。


 一連の行動からもそれが愛する妻子を失った直後の自暴自棄からくるものでなく本心だということは分かったがそれは歴史と矛盾する言動だった。


 かつて闇女上(くらめのかみ)は昊之上から人の世を守るために人の有志に協力してその身を珠に変えて託した。


 そして先の事を見据え、昊之上の封印が(ほころ)び世界に解き放たれる可能性を考慮し、何度でも人が人の世を守れるようにと珠の力は受け継がれて来たのだ。


 今、その脅威が間近に迫っている。


 人の世から(かみ)や異能の力が薄れた今を狙い、上代(かみよ)の戦いで敗けた者が返り咲かんとして暗躍している。


 バラストは確かに強くイワヒメの魂を宿した珠の巫女を守れる自信があるのかもしれないがそれが自惚れであることは自身で示してしまったはずだ。


 人は余りにも弱く、珠の力の使い方を知らない今の巫女はただの人と同じであり、(かみ)や異能者の戦いに巻き込まれたら容易く命を落としてしまうだろう。


 せめて異能者──例えば御闇山の陰業衆(いんごうしゅう)の女に珠の力が託されれば守る側としてもやりやすいのだがそうもいかない。


 珠の巫女の選出は意思のない導祖(どうそ)たちによって行われ、闇女上でさえその決定には介入出来ない。


 比較的異能を持った女に力は与えられるようだが中には全く異能を持たない女に託される事例もあった。


 力なき者を守るということは強大な力に打ち勝つよりも難しいことなのだ。


 此度(こたび)、昊之上の復活を望むヤクナスはかつては葦原(このくに)の支配者の一人であった輝大君(かぐのおおきみ)の側近だった。


 言葉巧みで(さか)しき右腕と称されたヤクナスは武に秀でた逸話はなく、上代(かみよ)の戦いにおいても目立った活躍なく行方不明となっていた。


 それでも(かみ)(かみ)であり、人ごときが見くびってかかることが出来る相手ではない。


 だからこそ強大な力を持った仲間が多ければ多いほど鍵となる巫女を守れるだろうに巫主(ふす)は既に生きる気力がなくバラストは身勝手であった。


 ならばメイの使命の通り、珠の力を巫女から全て回収し闇女上(くらめのかみ)に返すのが人の世を守るためを思えば一番安全と言えるだろう。


 (すなわ)ちそれは今の巫女たちの死を意味していたが、ほど遠くない未来に死を司る蛇上(へびがみ)が目覚めて被る悲劇に比べたら少ない犠牲で済む。


 昊之上の災厄は伝承でしか聞いたことがないスオウですらこのように結論づけるのは容易かったのに実際の脅威を知っているバラストが何故協力しようとしないのかが不思議だった。


 多くは語らなかったバラストだがスオウには、愛する者がいない世界で生きるより愛する者の転生者が共に苦しむ世界で生きたいと願っているように思えて仕方がなかった。


 これは憶測でしかないがもしもそのように考えているのだったら気持ちは分かる。


 愛する者か世界かなら、自分も愛する者を選ぶだろう。


 万人を救える力があるのならそれを全て愛する者のために使いたいと思うのはいけないことだろうか。


 愛する者が犠牲にならなければ滅びる世界などなくなってしまっても構わなかった。


 しかしスオウは既に失った身だ。


 イルナシはイワヒメのような特殊な命を持っておらず、今はもうメイの首飾りの一部となっている。


 ならば妹の死に見合うだけの結果を。


 その思いだけが(かたき)と共に行く動力源となっている。


 メイによれば次の珠の巫女は西の山を越えた先にいるという。


 同じ程の距離ならば、とスオウは今一度御闇山(おぐらやま)に帰ることを提案した。


 バラストやイワヒメのことや、臆病者と聞いていたヤクナスの大胆な行動などを巫主に報告しておきたい。


 それにもしかしたらアビコやマヌイも仕事を終えて戻って来ているかもしれないからだ。


 メイは放っておくと勝手にふらふら動き出す奴だが行動を指針付けてやればある程度は従う。


 此度もスオウの提案に何を考えているか分からない顔で承諾してみせた。


 土の精隸(せいれい)は文字通り土を媒体としているため創造主である闇女上が最初に念じた簡単な使命に準じるだけで心がないとされる。


 だが……とスオウはメイの横顔を見る。


 旅の中でメイはいくつか不可思議な動きを見せたことがあった。


 そもそも出歩くことのない土の精隷が旅をしている時点でありえないことなのだが、ときおり()()()()()を見せる時があったのだ。


 もしかしたら旅を通して成長しているのかもしれないが、その変化は果たして喜ばしいことなのか。


 それも含めて今一度、闇女上の側近であった巫主には確認しておきたいことがある。


 メイとスオウは来た道を戻り、御闇山を目指した。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 帰ったら大変なことになっている予感がしますね。
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