第1話「伝説の超YouTuber」は親孝行できない
どうして親孝行ができようか。
明日に迫った母の日を前に大嫌いな太宰治が書いた小説「斜陽」を読み返し終わった。優しく愛情に満ちた母が亡くなり、後を追うように放蕩息子が死んじまうというパンチの効いた陰気な話。縁起でもないと思いつつも、極振りされた陰気さがこの人の小説の中でも一番おもしろい。
「だから嫌いなんだ」
と言うとなんか文学っぽいだろうか。
さてラーメン屋を改造した居酒屋で働く傍ら、コンビニでバイトをし、夜中に近所の24時間スーパーで花を買ってケーキを買って、
「ふぅ、親孝行ギリセーフ」
幸せもつかめずに40歳をとうに越えて、今は自分が何歳かさえ覚えていない。(いや、それは覚えてろよ!Σ(゜Д゜;)
こんな横書きじゃなきゃ成立しない浮ついた文学崩れ。オンラインサロンを7つもまたにかけたおかげでカードが止まった瞬間に全部のサロンから滞納の通知がやってきた。
「人類初のオンラインサロン破綻だ」
えーと、初物が好きなのか、集中力が続かないのか、とにかくいろんなことに手を出してはこうして何にもなれずに今を生きる私、「水島義男」は今、「伝説の超YouTuber」をしています。
まずは「同時多発親孝行」を実行し、その気勢を推し進め「母の日」という一日限りで終わってしまうイベントを延長させて5月10日から5月末日まで猶予期間として「母の日延長キャンペーン」を行う。
YouTubeに上げた短い演説は再生数が3回。(自分で間違えてクリックしたものも含む)
Twitterに上げた安物のケーキとお花。
来月は父の日、か。私には父はおらずどこかに蒸発して生活保護で暮らしているという情報だけが入っているが、チャンネル登録1000人行ったら会いにでも行こう。こうでもしなければ僕は自分の人生の駒を進めることができない。もう、金も時間も、なんのリソースもないのだ。
知り合いの女性に親に虐待されていた人がいる。憎しみに似た感情しか持ち合わせていないという。今となっては親孝行の感情くらいは当たり前になっているが、ここにたどり着くまでに少々時間がかかったのも自分の未熟も含め人それぞれというところか。
欧米人は愛を口にする習慣がある、というが本当だろうか。そこに優しい世界はあるだろうか。
「世界を変える」
それが伝説の超YouTuberの使命である。
現在のチャンネル登録者数「102」
次回「最弱YouTuber」に続く