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65 時の牢獄(5)



「叶うなら、終わらせてほしいのだ。我や、地上に彷徨う者どもを」



 小さく、擦り切れるような声で“ア”は告げた。

 しかし、ゴギョウはまだ状況の把握などできておらず、さっぱり訳がわからない。

 思いつくのは、いくら倒したところで翌朝には再び現れる黒霊ども。あれは辺りをうろつくばかりで攻め込んでくるようなことはしない。近づけば攻撃を受けるのだが。

 まるで、ゲームで索敵範囲の設定された敵キャラみたいなものだ。

 目の前の“ア”と名乗る黒霊は、上のうろつく黒霊と違い言葉を発し、自由に移動しているようにみえる。

 


「そんなことができるのか?なぜ、自分でしないんだ?」


「先程告げた通り、我にはもう、そのような力はない」


「…なにをさせたいんだ」


「ここより地下に我らを縛る魔法がおる。それを壊してほしいのだ」


「魔法…?」


 シャギアの言っていた、奪われたという魔法だろうか。しかし、壊すとは?


「…めんどくさそうだな」


「頼む。もうたくさんなのだ。この、閉ざされた時は」




 ゴギョウもあの、黒霊のうろつく辺りに建物を設置できるならことは早く終わると思っていた。

 仕組みはわからないし、“ア”の言う魔法についてもまだよくわからない。しかし、この頼みを聞かない手はないだろうと感じる。

 双子の神のこともあるが、ひとまず首を縦に振ることにした。


「わかった。その、地下に行く方法を教えてくれ」




 “ア”はゆっくりと背後を見やり、部屋の隅を指差す。

 ズズズ、と重く地鳴りがし、床が吸い込まれるように沈んでいく。

 どうやら降り階段があるようだ。



「ところで、お前らはどういう状況なんだ。上の奴らは倒してもまた出てくるし、お前のようにしゃべったりはしないのか?」


「…何度も同じ時を繰り返している。奪ったのは、時を逆巻き、繰り返す魔法」


「繰り返す魔法…?」


「たとえ死すとも、必ず同じ時を繰り返すため、再び蘇る。そのような魔法のはずであった。

 しかし、使い方を誤った我らは、その魂のみを囚われ、魔法が尽きぬ限り同じ時を繰り返すのだ」


「…あんたは、どうしてしゃべれるんだ?他のやつらは?」


「この魔法の核は我だ。だが、核となる魔力は尽き、残る使徒としての器を依代とし魔法は発動している。

 故に我は魔法そのものを受けていないのだ」


「ふうん、よくわからん…」


 魔法などこの世界に来てからゴギョウは見たことはあっても使ったことがない。使えるのかもわからない。

 経験として実感も知識もないのだ。


「まあ、めんどくさそうだし、さっさと行こうか」


 考えるのをやめて、行動あるのみである。

 ゴギョウのスキルは異常なほどに優秀で、特にここしばらくは危険もあまりなかった。

 それに、そろそろここで同じ建物ばかりを作り続けるのにも飽きてきていた。整地は楽しいのだが。


 沼地の拠点にポーションも届けてやりたい。彼らは無事、生活できているだろうか。



 ともあれ、ゴギョウはこの“ア”との会話も終わらせ、部屋の隅にある下り階段へと歩をすすめた。








短いですが、次話準備中です。

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