57 隠れ里 アキア
ゴギョウは苗木が育つのを待ちながら青い篝火の範囲内を整地してしばらくを過ごした。
結局、野外のキッチンには屋根はつけず、雨が降ってから考えようと決めた。四方を壁で囲まれた建物ならともかく、柱だけで石材の屋根を支えるのは少々無理があった。
苗木が育ち、木材が収穫できるようになったら、屋根ぐらいかんたんなものだろうが。
シャギアの塔を中心に四方に石畳の道を通した。
篝火の範囲との境界に二箇所、大きな石のアーチを建て、石材でぐるりと囲むように膝上ほどの高さの壁を作る。
石材が足りなくなったので何度か外へ出向き素材を回収して回った。
その時にも数体、黒霊と戦闘になったがスキルの壁のおかげで危なげなく倒すことができた。
しかし、あの黒霊どもは一人一人違う装備をしているくせに同じ場所では同じ装備のものに出会う。まるでそこで復活をしているみたいに。
実際、復活しているのかもしれない。そうであるならキリがない。何度倒してもまた復活するならば、いずれその原因を調べてみないといけない。
「後でシャギアにあいつらの正体を聞いてみようか…」
すでにいくつかの家を建てる予定の場所に建物の基礎を作っており、自分で敷いた石畳を歩きながら一人呟く。
作業開始から2日が経ち、日が暮れようとしていた。植えていた苗木は低木すでに育ちきっていて、1メートルほどの高さの木が生えている。
ゴギョウはすぐさまそれを解体し、少量の木材と低木の葉という素材、低木の苗木をいくつかを回収できた。
苗木は再び植えられ、二本だった低木の数は倍になった。
同様の調子で針葉樹も増やすことができれば木材の収穫は捗るだろう。
塔の階段を上りシャギアの部屋へ入る。木材が手に入ればこの塔の扉も作ることができるだろう。その時のためにシャギアの水晶玉で鉄鉱石も交換しなくては。
「と、言うわけで今この辺りは黒霊に攻められたりする心配は無くなったよ。明日か明後日にはここのクラフトもずっと進むと思う」
「ンフフ…、やっぱりあなた、期待した通りだったわ」
「いま家を何軒か建てる準備をしてて、それが終わったんだ。それで、聞きたいんだけど、後どんなものを作ったらいいのか、建物の壁なんかに使われてた白い土を固めたようなものは何なのか…」
白い土を固めたようなもの、は近くの湖に沈殿する泥と砂を混ぜ合わせたもの、らしい。
それから何を作るか、はここに昔住んでいた人間がまだいるらしいとのことで、とりあえず湖のほとりに行ってみて欲しいとのことだ。
ゴギョウは水晶玉でシリアルウィードの種を交換してもらい部屋を後にした。
ドーム天井の家に戻り、野外キッチンのそばに井戸をクラフトし、水源ブロックを設置した。
家の裏側の土をクラフトスキルで柔らかく耕し、種を植える。水を撒いて明日を待つ。
名前からして食べられるものになりそうだし、予想通りなら藁のようなものも作れるかもしれない。建物の屋根や寝具になるだろう。
それからシャギアの話では、ここは百人に満たない少人数が霧に包まれひっそりと暮らしていたらしく、今は黒霊のこともあり訳あって離れてしまった。
集落の名前はアキア。
竜と魔の隠れ里、アキアであった。