56 石の家
目の前に置かれた水晶玉は白く濁っていて、あの黒いゴブリンが持っていたものよりずいぶんと大きい。直径は20センチはありそうだ。
ゴギョウが水晶玉に手を触れるとぼんやりと光ったかと思えば、目の前にステータスウィンドウのような、半透明な文字列が浮かび上がった。
・針葉樹の苗木 700
・低木の苗木 700
・鉄鉱石 450
・シリアルウィードの種 150
・トウモロコシの種
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なんか植物がほとんどだった。他にも銅鉱石や野菜や果物、輝石や火薬など色々とあった。
とりあえず木材が欲しいので針葉樹や低木の苗木あたりを少し交換してもらう。
そのことをシャギアに伝えると、ンフフ、と笑った後ゴギョウのアイテムストレージには針葉樹の苗木と低木の苗木が2つづつ表示されていた。
「これ、どう言う仕組みなの…?」
「…さあ?」
使っている本人(本猫?)でさえわからない技術。どこに収納をしてるのかすらわからん。
「ところでそれだけでいいの?…この辺りにはあなたの食べられそうなものも、無さそうだけど…」
「うーん、しばらくは手持ちで大丈夫だけど、それまでに木材が取れるなら大丈夫だと思うよ。」
ここが青い篝火の範囲内であるなら、毒沼の拠点同様数日で木が育つはずである。
その育つのを待つ間を過ごす仮の家も作りたい。水場も欲しいが、無ければゴギョウのアイテムストレージにある水源ブロックを使うことにしよう。手持ちはあと二つしかないがチェストボックスさえ作ることができれば、トンネルを掘ったときのように毒沼の拠点のボックスと中身が共通のはずである。
ゴギョウは塔から出ると、すぐそばに針葉樹の苗木を植えた。
そこから少しだけ離れ、低木の苗木も植える。
積み上げられていた石材ブロックをいくつかアイテムストレージに収納すると、ゴギョウは低木の苗木の近くに自分の仮家を建てることにした。
「そういえばコンクリートみたいなやつ、なんなのか忘れてたな…」
しばし考えたあと、
「まあ、後でいいか」
見通しも悪く知らない場所で探索や戦闘をこなした後なので、今日のところはもう休みたい。明日でいいだろう。
寝袋なんかはあるので石材ブロックで適当に建てた後、またスープでも作って食べよう。
まずは大の字で寝転んで余裕のあるくらいの範囲にブロックを並べる。
四角に柱を積み重ねる。屋根は…。
丸くなるようにしよう。ゴギョウは石材ブロックの形や大きさを変えながらドーム状の屋根をクラフトしていく。
慣れたもので、床と柱、屋根だけで15分ほどで終わる。
続けて入口の穴の開いた壁、小さな出窓付きの壁を二面、なにもない壁をクラフト。
とりあえず建物ぽくなった。が、暗い。なので天井に石の梁を設置して手持ちの輝石入りランタンをひとつぶら下げておいた。
窓枠やガラス、扉なんかは木材が手に入ったら作ろうと思う。
ここは自分以外にはシャギアしかおらず、侵入者もないはずである。
入り口に小さなスロープをつけてとりあえずの完成である。
「次は…」
家の外に出て、竈門を設置することにした。
「ここ、雨とか降るのかなあ…」
ぼんやりと灰色の空を見上げ、ゴギョウは屋外キッチンにも屋根をつけるべきか悩むのであった。