52 竜の山(5)
ゴギョウはまず、集落の中心をシャギアの住処の塔に決めた。
青い鉱石をクラフトスキルで青い篝火にする。それを塔の一階部分に設置。
鉱石はこれだけで三分の一ほどなくなる。残りの鉱石で青い薪を作り篝火の範囲をとりあえずできるだけ広げた。
安全地帯となる範囲を基準に柵などで囲ってやればいくらか広くはできるのだが、ここには木材がない。
木の苗があればこの安全地帯で育てることができるかもしれないが、ゴギョウのアイテムストレージにはそういったクラフト材料がないのだ。
シャギアの話ではこの山は竜の山と呼ばれ、かつては多くの竜種がおり、それと共に暮らす人々がいたそうだ。
竜や人がいなくなった後もシャギアはひとり、ここを静かに守ってきた。
それがここ数年のうち、集落跡を荒らす者どもが現れていつしかこの塔を残し荒野のようになってしまったらしい。
敵は亡霊のように突然現れ、姿を消してしまう。
シャギアは残された黄金のランタンひとつを守り、ゴギョウのようなクラフトスキルを持つ人間を待っていたらしい。
ゴギョウは塔の周りを四角く囲むよう青い薪を設置し、安全地帯を広げた。
ひとまずシャギアには敵対するものはここにはもう入ってこれないことを伝える。
青い篝火の範囲内となった場所の岩などを回収し、地面を平らに均す。
100メートル四方ほどの広さがゴギョウによって整地された。左腕が治ったことで整地スピードはこれまでの倍以上になり、塔のそばには石材ブロックとなった岩たちが積み上げられた。
心なしか青い篝火の範囲内は霧が晴れているように思う。
シャギアの言う亡霊もまだ見てはいない。できれば会いたくはないが…。
ゴギョウは一度シャギアの部屋に戻り、どこに集落を再建させるのか、どんな建物を建てるのかを相談することにした。
材料のこともある。できれば輝石も欲しいのだ。
「あなた、ソルはあるのかしら」
「そる?経験値のことかな?」
確か廃坑街で黒ゴブリンの取引材料に使ったような気がする。
「ここからあの鉱石を隠していた場所よりさらに向こうにはまだ建物が残っているはずよ…。その辺りには亡霊どもがよく出るわ。そいつらを退治すれば手に入るわ…」
「へえ、そいつらはモンスターみたいなものなのか?」
「まあ…そうね…、そんなものよ。そのソルをわたしにいただけたら、木の苗や輝石も交換してあげるわ…少しなら持っているの…」
「その亡霊…強いの?攻撃とか効く?」
「大丈夫よ、あなたなら。黒いやつと赤いやつがいるんだけれど、赤いやつはちょっと面倒ね…魔法を使うわ」
水中監獄の奥の廃墟で会った白いやつみたいなものだろうか。あれくらいなら毒沼の古竜のスキルでなんとかなりそうだ。
「まあ、行ってみるよ。作る建物もどんな感じなのか見てみたいし」
「ンフフ…気をつけねて…」
シャギアに見送られながらゴギョウは再び塔を出て行った。
誤字いつもありがとうございます。
かなりゆっくりですがよろしくお願いします。