45 水中監獄 街の果て
ゴギョウがへたり込んでいるとバラバラになっていたテリザの近衛騎士長の鎧が青白い光の粒子になって溶けるように消えていった。
腕が飛んで行った壁の方からはガラガラと石の崩れる音。おそらく瓦礫の下敷きになっていた腕も消えてしまい、もう一度瓦礫が崩れたのだろう。
シュウウッ
久しぶりに自分を中心にして空気が集まってくるような感覚。
すぐさまゴウッと鳴った。
随分と久しぶりのレベルアップ。
毒沼の古竜のスキルが強力なのでレベルやステータスを気にしなくなってしまっているゴギョウはのっそりと立ち上がる。
落としたショートソードを拾い鞘に収める。
テリザの近衛騎士長が消えた場所に何か落ちているようだ。
「小さい箱…ドロップアイテムかな?」
平べったい木箱が落ちていて、拾い上げると少し重い。
とりあえずこんな足場の悪い広場の真ん中でゴソゴソするのもどうかと思い、木箱をアイテムストレージに放り込んで移動を始める。
入ってきたところの逆にある扉。
コロシアムのような場所かと初めは思ったがよくある観客席のようなものはなく、岩肌の壁に大きなレンガを積み上げたような建物。上の方はあちこち崩れてはいるが下の出入口以外には、空でも飛ばない限りは進入もできないだろう。
扉の前まで来たが、鍵穴がみえる。
確か上で鍵を拾ったような気が……など考えながら試しに押してみるとスッと開いた。
「開くんかい!」
扉の向こうは薄暗い通路だった。
壁に松明のようなものがかかっていて青い炎が灯る。
見覚えのある青い火。アイテムストレージにしまえばハッキリ判るだろうがその松明は外したりはできないようだった。
しばらく、30分はたっぷりと時間をかけ通路を進んだ。
ゴギョウの足音だけが響き、何者の気配もない。等間隔で設置された青い火を灯す松明の通路を歩き、かなりの距離を来た。
通路を抜けると突然視界がひらけた。
芝生のような草が敷き詰められ崩れた噴水からちょろちょろと水が滴る。
枯れたような木がちらほらと立ち、小さな公園のような場所だ。
中央には篝火があり青い炎がメラメラと燃えている。
転移者がいたのだろうか、ここは安全と考えて良いのだろうか。
正面には切り立った崖のような壁、左右を見渡すと地面がなく、先ほどまでいた街の廃墟がはるか下に見える。
ここまで歩いてきた通路は平坦だったように感じるのだが、いつのまにか遙か上の方まで登っていたらしい。
ひとまず篝火を観察してみたが、やはり青い篝火で間違いはないだろう。毒の沼地の拠点にあるものと同じように思う。
緊張しっぱなしの道中にヒヤリとしたテリザの近衛騎士長とかいう敵との戦闘。
久しぶりに小休憩とすることにした。
崩れた噴水から滴る水は程々の水たまりを作り、崖を這うようにして下へ流れていっていた。
水たまりのそばに腰をおろし、お茶をわかす。
沸くのを待つ間、先ほどの木箱を取り出して検めることにした。
テリザの近衛騎士長の振り下ろそうとした右腕は勝手に吹き飛んだわけではない。
張り上げた腕の脇。脇の下に流石に甲冑はなく、黒いモヤが見える空洞のようであった。
曲刀の振り下ろされる刹那、ゴギョウはその脇の下の隙間に、ギュッと小さく固めるイメージで作り上げた毒沼の古竜のスキルのシールドを放り込んだのだ。
トドメとばかりに全力で振り下ろされる腕はそのシールドによって振り下ろすのを邪魔された形になる。
勢いもついていたこともありその腕は止まることはなくあるべき場所から弾かれる。
勢いよく回る歯車に石ころを挟み込んだようなものだ。
テリザの近衛騎士長は自らの力でその腕を飛ばした。
ゴギョウも夢中でやったことだが、結果は最高のものになった。
戦利品はこの、木箱とアイテムストレージに放り込んだテリザの近衛騎士長が使っていたもう一本の曲刀。
アイテムストレージから出してみたが片手で使うには少々重たい。
しかし切れ味も良さそうだし、重量に任せて無理やり振るうこともできそうだ。
ゴギョウには使えないが…。
曲刀は「テリザの双剣 左」と表示されていた。
「もう一本も拾ってくればよかったかな…」
まあ、帰りにあったら拾っていこう。
次は木箱だ。
重箱のような蓋を開けると中は白い布が敷き詰められていた。
布をどかすと5センチくらいの小さな小瓶が姿を現した。
赤色の液体の入った小瓶が3本、緑色の液体の小瓶が2本。
やっとポーションをみつけたか……。
すぐさまアイテムストレージに収納し、アイテム名を確認してみるのだった。




