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36 水の街フローラ 調査隊と拠点




 湖のほとりに広がる街にもそこを囲むように高さ3メートルほどの塀が築かれている。

 立派なレンガ組みの門を通ると石や木材で建てられた家がひしめき合っていた。

 まるで漫画やアニメによくある中世の街並みといった風である。


 

 元々は湖に浮かぶ島に人々が暮らすようになり、そこで抱え切れなくなった数の人が湖のそばに街を広げたらしい。


 家などはもともとこの世界の人が建てたもの、塀は転移者が作ったらしい。


 馬車で通りを走っている間、村のサットルや行商人達は街の住人と挨拶などしていたがミナミに話しかけてくる者はいない。


「なあ、ミナミ。なんかしたの?」


 一応小声で話しかけてみる。


「違うわよ。や、でも…」


 少し考えて続けた。


「あとでわかるわよ。いい?何されてもやり返したりしないでね」


 ゴギョウは「穏やかじゃないなあ」と小さく呟いてミナミに従うことにした。




 整備された通りを過ぎると島へ繋がる一本の大きな橋を渡る。

 この橋も立派な石造りで、大きな馬車もすれ違うのに苦労はなさそうな幅がある。長さは150メートルほどだろうか。


 島の街には関所のようなものがあり、短いやり取りだけで通ることができた。


 島の中央には神殿のような、大きな建造物があり、その周りに屋敷や家々が広がっている。


 湖沿岸の街と比較して古いものが多く、川のような水路が沢山ある。

 景色をキョロキョロして眺めていると行商人の1人が教えてくれた。


「ここは一つの島の様に見えますがね、小さな島が集まってできているんですよ。中央から大量の湧き水が流れていて、この湖の水はほとんどここから湧き出ているんじゃないかって言われてるくらいなんですよ」


「じゃああそこの大きな建物はその水源なんですか?」


「そうそう、で、この島を囲ってる塀は水門でね、島内の水の流れの速さをさ調整してるんですよ」


 なるほど、湧きっぱなしの水が流れる水路が穏やかなのは仕掛けあってのことなのか。

 大きな街だが水路によって交通が行き届き、発展してきたのだろう。


 程なくして馬車は目的地に着いたのか、ゆっくりと停止した。


 ゴギョウとミナミは馬車から降りて転移者達の拠点に向かう。

 行商人や村のサットルは商業ギルドというところへ向かうらしい。



 馬車を降りて路地を行くと水路を進む小舟に乗る。タクシーのようなものらしく、行き先を伝えるとそこへやってくれるみたいだった。


 水路は右は左へと入り組んでいて案内がなければもう外へ出られる気がしない。


 小舟がついたのは水門の手前の路地だった。水門のすぐ横、塀にとってつけたような扉があり「こっちよ」とミナミについて扉の向こうへと進む。


 扉の先は切立った崖になっていて、ウッドデッキのように足場が組まれ、崖に沿って石の階段が下の水面へと続いていた。20段ほど降りると崖に木の扉がありそこが転移者たちの拠点だった。


「すごいところに作ったんだなあ」


「本当です!まさかこんなところに住もうだなんてゴギョウ殿のような転移者の方だけでしょうね!」


 カバンから頭だけを出してルッカも物珍しそうにキョロキョロしている。


「単純に土地がなかったのよ。クラフトスキルがあったからこんなのも作れたけど結構苦労したのよ」


 拠点内は扉から入ってすぐ大きな円形のテーブルが置かれた広間、そこからいくつかの通路で厨房や風呂、個人の部屋につながっているらしい。

 室内は壁や天井の輝石で照らされ明るい。大きな窓も付いていて圧迫感もなく過ごしやすそうではある。


 見たところだれもおらず、ミナミは仲間を呼んでくると言って通路の向こうへ行ってしまった。

 ルッカと椅子に腰掛け待つことにした。

 いくつか木箱が置かれているばかりで、どちらかと言えば殺風景な部屋。木の柱で補強された土が剥き出しの広間だ。

 アイテムストレージから水筒を出して二人(一人と一匹だが)とでお茶を飲む。


「お待たせ、紹介するわ」


 戻ってきてすぐミナミが声をかけてくる。


「山の向こうの村にいた変態整地のゴギョウっておっさんと獣人のルッカよ


「いや、ひどくない?」


「否定する権利はないわよ」


 ルッカが強く頷いている。こいつもひどい。


「で、こっちがマサさんとユニコ。ユニコは私とほとんど同時に転移してきたの」


「どうもどうも、よろしくです」


 40歳くらいの、メガネに短髪、全身黒い服の男。


「ユニコって言います。はじめまして」


 ミナミと同じくらいの歳の、ショートカットの可愛い女の子。


「ゴギョウといいます。よろしくお願いします」


「ルッカといいます!ゴギョウ殿に命を救われ、共にお医者さまを探してここまでまいりました!」


「医者?ああ、そういやあんた怪我してたわね」


「あと沼地の家にも怪我で足が悪い子がいるんだ」


「私たちの姫さまです!」


「それから、この世界のことを教えて欲しいのですが…」



 ミナミはユニコさんと今回廃坑街からトンネルまでのことを話すため自分の部屋に戻るようだ。

 他にも仲間がいるそうだが今は出かけているらしく、後日また紹介してくれるらしい。

 広間にはマサさんが残り、およそ四年の間に判明したことを教えてくれることとなった。






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