27 廃坑街 転位者②
石のスツールに腰を下ろし、お茶をいれる。
お茶はアイテムストレージから水源ブロックを設置し、クラフトした鍋で沸かした湯を使った。
転位者であろう少女も木材からカップを作ってくれた。
一息ついたところでゴギョウから話し始めた。
「坂道を登っていくと扉があるんですけど、その先に外とつながるところがありますよ」
「あの扉開くの?壊せないし鍵穴とかもないし進めなかったのよね」
「かんぬきみたいなので閉じられていたしこちら側からじゃあ開けられなかったんですね」
どうやら街側の入り口が先程の巨大蛭との戦闘で崩れてしまったのか、そのせいで街へ戻れなくなったと思いこの少女は怒っていたらしい。
「まぁ、帰れるんならそれでいいわ。こんなところで死にたくないもの」
「ところで、僕はひと月半くらい前にこの世界にきたゴギョウといいます、あなたは?」
「はぁっ??ひと月半??嘘でしょ??」
少女はまた驚いた表情でまた大きな声をあげる。
石壁の村でも転位者は数年前から現れたと言っていたが、最近はいないのだろうか、
「先に転移してきた人たちは何人くらいいるんでしょうか?情報が全然ないので現状の把握もできてないんですよ…」
ゴギョウはこの世界にきてすぐ死にかけた。何度かの戦闘でいくらか戦えるようになったものの、わからないことが多すぎて不安しかない。
腕の怪我もあって、先行きが見えないのは辛いのだ。
少女は顎に手を当ててぶつぶつと独り言をこぼし何やら考えている。どうもなかなかマイペースな性格をしているようだ。
「とりあえずここを出たいわ。石壁の村なら行ったことはあるし、ここよりは安全でしょう」
そう言うと少女は立ち上がり、何やら胸の前で指をひらひら動かし始めた。
すいっと、スライドさせるよう指先を動かすとゴギョウの前に半透明な手紙のようなものが現れた。
それに触れるとふわりと大きくなりゴギョウの目の前にステータスウインドウのようなものが展開された。
ミナミ
ーーー
ーーー
ーーー
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「ミナミよ。あなたは?」
こんなことができるのか!1人だとわからないもんな…。
「あ、ゴギョウです…」
「………まぁいいわ、後でやり方教えるからネーム表示くらいしてよね」
「はぁ…」
「……なんかゴギョウって聞き覚えあるわね」
マイペースな少女、ミナミはまたぶつぶつと考え事を始めてしまった。
ゴギョウは蛭の素材をボッカに買い取ってもらい、また少し鉱石や魔石と交換してもらう。
ボッカもこの後、荷物をまとめてどこか別の場所に行くらしい。流石に人里にはいかないだろうが、ダンジョンなど冒険者のような者がいる場所を点々と移動するそうだ。
ゴギョウも側の青い薪を回収し、地上へと向かうのだった。




