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17 魔石



 村に戻ったゴギョウはそのまま壁を補修して回る。ひび割れや崩れた箇所を一度崩し、手持ちの石材と合わせて崩した部分を埋める。

 傾いている箇所も同じように崩して埋める。

 片腕を使えなくてもなんとかなるものである。クラフトスキルのチート具合をより実感する。

 

 手持ちの石材がなくなった頃、丘の広がる草原地帯側の補修は終わった。全体のおよそ7割ほどである。

 あたりは夕暮れ時になり残りは森の方のみとなったので、今日はここまでとした。


 ルッカの待つテトの宿に向かう最中、雑貨や食料などを売っている店があったので、輝石について聞いてみることにした。


「ごめんくださーい…」


 引き戸を開け中を覗き込んでみる。

 室内の右半分、壁に沿ってカウンターがあり、左手は商品棚になっていた。

 カウンターの角には奥に続く通路が見える。その奥から「はーい」と声が聞こえ、ひとりの女性が出てきた。


「はい、いらっしゃい」


 そう言いながら壁に埋め込まれた菱形の白い石に触れると、天井や壁にある同じような色の石が光り、あたりを照らした。

 輝石のことを聞くつもりであったがその必要もなくなったな、とゴギョウは思ったが、入手法などを尋ねようとカウンターを挟んで女性の元へと進んだ。

 女性は長く黒い髪を後ろに束ね、そこから尖った耳がのぞいている。瞳も黒く、顔立ちはアジア人のようだ。ぽっちゃりとした体に白いエプロンをしておりシンプルなブラウスと赤いスカート、というここに来る前の世界でのイメージのエルフとはなんだか様子が違う。

 しかし、耳はエルフ!といった感じだ。耳と女性の体を交互に見やると、


「いやだ、お兄さんやらしい目で見ないでおくれよ!」


 と、胸の辺りを隠す。


「あっ、いえっ、その、申し訳ありません!そんなつもりじゃ…」


「ふふっ、冗談だよ!昨日村に来た転移者ってのはあんただろう?他の転移者にも会ったけど大体そんな反応さね!」


 エルフのおかみさんはワハハと笑って髪をかきあげる。

 

「これまでどんな転移者が来たんですか?


「私が会ったのは4人だね。若い男の子2人と妙に色っぽい女の子の3人組と、やたら大きな剣を持った女の子と、それだけだねえ」


「壁を作ったのはその方達ですか?」


「もうひとりおっちゃんがいたらしくてね、ほとんどその人がやったらしいよ。あとは補修とかそんなことしかしてないはずだね」


 どんな人物なのか想いを巡らせていると、


「ところでにいちゃん、何か買いに来てくれたのかい?」


「あっ、そうでした!と、言ってもお金はないのですが鉱石とか買い取りなんかやっていますか?」


 商品棚に宝石のような石があるのを確認しているのだ。そのまま輝石について聞きたい。


「どれ、見せてごらん!」


 ゴギョウはアイテムストレージが鉄鉱石や銅、水晶なんかを取り出す。トンネルを掘っていたら割と頻繁に出てきたのだ。特に鉄鉱石と水晶はなかなかの量になった。

 それを手に持ち、重さを確認したり光に透かせたりなんかしてエルフのおかみさんは買取金額を教えてくれる。


「鉄鉱石はあんまり高く買えないね、銅はこのくらい。水晶は銀貨でいいね」


 銅貨を10枚ほどと銀貨を4枚出してくれた。お金の価値はわからないのでゴギョウは特に気にしないで受け取る。


「ありがとうございます、ところで…その光る石なんですけど…」


 ゴギョウは壁に埋め込まれた菱形の石を指差して尋ねた。


「輝石かい?魔石の1つだね。知らないかい?」


 CAWO内では魔石という表現はされていなかった。輝石や火石、水石などの固有名詞があって、それぞれに違った効果があった。


「もしかして、ほかに火石や水石なんかもありますか?」


「そうそう、なんだ、知ってるじゃないか」


 確かそういった石はモンスターのドロップや採掘など様々な方法で入手ができる。もしかしたら毒沼の古竜にもドロップがあったかも知れない。いつか毒沼の拠点に戻ったら確認しよう。


「いま、山の反対側にある町に行こうと思いまして、壁の補修材料を集めるついでに長い穴を山に掘っているんです。それで中は真っ暗なので明かりが欲しいんですよ」


「は?山に?穴?ん?」


 エルフのおかみさんはぽかんとしてゴギョウを見る。

 ゴギョウはその目を知っている。山にトンネルを開けたり、なんなら山ひとつを削ってしまうのは、おかしいことなのだ。地味な作業の規模が大きすぎて呆れられてしまう。


「山の方に道があったようですがそれでも険しいでしょうし、モンスターも出ると聞いたので…」


「にいちゃん、あの山を貫通するトンネルを掘るつもりかい…?かなり長いはずだけど…」


 ほら、呆れられた。


 エルフのおかみさんはウーン、と考え込む。


「とりあえずこれを持って行きな。銀貨1枚でいい」


 ガラガラ、と魔石を12個、カウンターの下から取り出す。


「輝石さね。これに触れて魔力を通せば光る。魔力はわかるかい?」


 ゴギョウは石に触れてみる。ステータスで魔力があるのは確認しているのでなんとなくの感覚ではあるが力を込めると石が輝き出した。


「大丈夫そうだね。うん。もし山を貫通するトンネルができるならこの村としても大助かりだよ。悪いようにはならないと思うから、わたしから村長とオババさんに話しておくよ」



 確かに村としても比較的安全に街まで出れるなら悪いことはない。いつまでトンネル堀りがかかるかはわからないことを伝える。

 ゴギョウは魔力を込めると火が少しだけ出る、火石を銅貨3枚で購入し、その日はテトの宿へ戻った。 






読んでいただきありがとうございます!




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