魔王城、貸し出し開始2
楽しくなってきて長くなりました。
そして来る二週間後まで貸し出し志願者は来なかった。
「何故だ……」
魔王、グンジョウは呟く。
「魔王城を借りるとか、普通に恐れ多いだろ。」
タツマキの冷静なツッコミが胸に刺さるグンジョウ。
「うぅ………」
魔王城とは自分にとってなれた場所。
だからこそ周りとの価値観の違いに気づくことができなかった。
「借りて貰うにはどうやればいいと思う?タツマキ。」
「今はそれよりあの対ウサ耳女の用意だろ。あいつの去年の誕生日、何があったか知ってるよな?あいつ、自分が嫌いなものが料理に出たっつってその店と街半壊した。そんなやつが今回は暴れないとかどう考えてもおかしいだろ?対策しておこうぜ、俺が住むとこ無くなるの嫌だし。」
うなだれるグンジョウに何とか(自分のために)動かそうとするタツマキ。
「そうだな……あのクソ耳女にこの城壊されてたまるかよ!!」
素で返すグンジョウ。
こうしてウサ耳女対策がなされた魔王城。
二人の魔王がガチで魔力を込めたため、よほどのことがない限り破壊されないだろう。
「おまたせ、と言ってもあの子が来るのはまだだけどね」
カゲロウはセミロング位の髪を後ろでまとめ、正装姿だ。
「ウサ耳女の為にここまでやんの?」
そう聞いたタツマキにカゲロウは、
「この城を壊したくはないからね…」
そう言い困ったような顔で笑う。
そして最終チェックがなされた後、カゲロウも城に魔力を込める。
「そろそろ迎えに行ってくるよ」
そう言って転移魔法で迎えに行くカゲロウ。
「大丈夫……だよな?」
「大丈夫だろう…………多分。」
「多分ってなんだよ!自信ねーの?」
「あるけど、クソ耳女が暴れないことを祈っておこう。」
「まあな。」
そんな会話を交わしているうちにカゲロウ&ウサ耳女が到着。
「ちょっと、何であんた達がいるの?気分最悪なんだけど。」
「「そうかよ、俺のほうが最悪に気分悪いんだけどな。」」
見事にハモるグンジョウとタツマキ。
「うっさい!!不愉快だから早く消えて!」
ヒステリックに叫ぶウサ耳。
「まあまあ………落ち着いて、3人共」
カゲロウが場の沈静化を図り、なんとか誕生日会が始まる。
そして色々ありながらも、本当に色々ありながらも、とうとう&なんとか会も終盤にさしかかる。
ここまで、本当に長かった。
タツマキとクソ耳女はすぐケンカを始めるし、料理の配膳が遅いとクソ耳女がヒステリーを起こすし………
グンジョウは思わず遠い目になりながら今までをふりかえる。
そして、
「アーネリエ、誕生日おめでとう」
カゲロウが魔術で創り出した、宝石のように煌めく花をなんともないように受け取るウサ耳。
「あいつの名前、アーネリエだって知ってたか?」
「いや、全く。」
そう小さな声で会話するグンジョウとタツマキ。
こうして何事もなく終わらせることができた、そう思った時だった。
最初に異変に気がついたのはカゲロウ。
「アーネリエ、何かあった?」
心配するように問う。
ふるふると小刻みに震ながらうつむいていた顔を上げるウサ耳。
真っ赤になった頬、潤んだ目。
「人前で名前呼ばないでっ!!!!!」
そう言い放つとともに、アーネリエの得意な火属性・爆裂魔法が辺りに炸裂。
そして、このあたり一帯が瓦礫と化すかと思われた。
だが、グンジョウ&カゲロウという二人の魔王がかけた魔術はあまりにも強大だった。
「「軽く死ぬくらいかけていいだろ。」」
そうやって出来た魔法障壁は最強にして最凶。
「うにゃぁ!?」
ウサギなのに猫の様な声を発したあとに倒れるアーネリエ。
たった一瞬で満身創痍。
瀕死と言ってもいいぐらいの様子のアーネリエを見てカゲロウが一言。
「タツマキとグンジョウ、一体何をしたらこうなる?」
カゲロウの怒りは、普段叱られ慣れているタツマキでさえ記憶を封印する程だった。
何もかも、全てが失敗から始まった魔王城貸し出しサービス。
果たしてこれから先、どうなっていくのだろうか。
よく考えるとそこまで長くなかったかもしれません
今回の忘れ物:ルエイーナ