第8話 ……もう……穴があったら入りたいよ!
初めて見る金髪さんの絵。私はそれに見とれている内に、金髪さんは自分の絵を描き終え、続けてまた誰かの絵を金髪さんの絵の隣……というよりは、奥の方に描き始めた。
……そう、金髪さんの絵には奥行きがあった。……何て言うんだろう……言葉にするのはとても難しくて……こう……生きているみたい……。
短い髪を描いて、ローブを着ていて、金髪さんよりちょっと背が高い女の子……
ねぇ、金髪さん……これは一体誰なの……? すごく気になる……
……でも……でも……
金髪さんの絵が描き進めば進むほど、私はその世界感に引き込まれてしまう……。
いつの間にか、カウンター越しに腕を組んで覗いていたおじさんも、鼻息を荒くしながら金髪さんの絵を凝視する。
金髪さんが描くちょっぴり背が高い女の子に、私は次第に嫌な感情を抱いてしまう。だって……その女の子は金髪さんと向き合いながら仲が良く手を繋いでるから……
……しかも、その手は普通の繋ぎ方じゃなくて、お互いの指を交差させる様に……か……絡めるような……あれで……
……絵の中の女の子に妬きもちを焼くなんて、おかしいと思うけど……でも……だけど……!
近い……近いよ……! 金髪さん!!
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、金髪さんは黙々とちょっぴり背高の女の子を描き続ける。
ようやく描き終えたかと思えば、また髪の線や、ローブの細かい部分を、いかにもここが大事、といった具合に繊細に描き込んでいく。
ねぇ、金髪さん……そんなにその女の子を描き込まなくてもいいんじゃない……?
……でも、この女の子のローブ、どこかで見た気がする……
私の着ているローブと似ているような……?
……え? ちょっと待って!? この背高の女の子って……もしかして……!?
金髪さんが大切に書き込んでいく背高の女の子。それが誰か知った瞬間、私の顔は茹で蛸の様に赤くなり、胸一杯の気持ちは嬉しさと、恥ずかしさで張り裂けそうになっていた。
……自分に嫉妬するなんて……! もう、穴があったら入りたいよ!
私は、紅くなった顔を両手で覆い隠し、身悶えしながらも金髪の描く絵が気になって……しょうがなくなって、人差し指と中指の間から除き込む。
金髪さんは最後の仕上げといわんばかりに、これだけは絶対ないと駄目、という感じで念入りに何かを描いてるようだった。
それは、収穫前の稲穂のような感じだった。
風が吹けばなびくような躍動感がある……そんな稲穂……
その稲穂が生えている場所を見て、私はとても困惑する。
だって私の頭頂部には、稲穂は生えていないから。




