第3話 ……違うよ……そんなんじゃないよ……
……次の日、私は目覚めると朝食を私と、お姉ちゃん、そして金髪さんの三人で食べると、私は昨日の仕事である野草を依頼者に手渡すため、街道を歩いていた。……金髪さんと二人で。
本当は言葉が伝わらない金髪さんには、お家で待っていて、と言語が解らないなりに、身振り手振りで金髪さんにそれを伝えたんだけど、金髪さんは私の袖を掴んで離さなかった。……行かないで、と言わんばかりに。
だから私は昨日と同じように、金髪さんにマントを纏わせ、頭に三角帽子を被らせて一緒に出かける事にした。
朝日に照らされた街道は人がいっぱい歩いていて、私は金髪さんが迷子にならないように、しっかりと手を繋いで、金髪さんが遅れないように歩幅を合わせる。
……金髪さんは物珍しさからか、不安から来るものなのか、目的地に着くまでの間、辺りを見渡していた。
ほどなくして、依頼者のお店の前に到着した私と金髪さん。私は玄関をノックして少し待っていると、中から背高の店長さんが出てきてくれる。
私は左手に持っていた野草を店長さんの前に差し出し、頼まれた野草を持って来ました。……と話そうとしたんだけど、声がうわずって上手く喋れない……。
恥ずかしい事に出てきたのは、あ、あの……、とか、や……野草が……、という言葉だった。
何時もなら、こんなことは無いのに……
それでも店長さんは解ってくれたみたいで、にこにことしながら私の野草を受け取ってくれた。
良かった……。あとは、依頼料をもらって終わりだ……。
その時だった。私の渡した野草を見て、店長さんが突然渋い顔をする。え……? 一体どうしたんだろう……? どきどきする……。
すると、店長さんは私に、一個だけ毒草が混じってる、と教えてくれた。
え……? そんな事言われても……、こんなに似てたら解らないよ……。
大失態を犯した私。これじゃあ依頼料をもらうどころか、違約金を払わなきゃいけなくなって、お姉ちゃんに迷惑をかけちゃう……。
そんな事を考え、落ち込んでいる私を、後ろから金髪さんが心配そうに見つめてくる。
あ、うん、大丈夫だよ……。金髪さん。私は平気だから……。
全然大丈夫じゃないんだけど。
だけど店長さんは、今回は初めてだから、と、こんな私を多目に見てくれた上に、持ってきた野草の数から、毒草を引いた分の依頼料を支払ってくれた。……店長さんの恩情に、私は涙を流し何度も頭を下げる……。
店長さん、ありがとうございます! ありがとうございます!
……心なしか、金髪さんも、嬉しそう……。
店長さんは、これから気をつけてね、と声をかけてくれると、玄関を締め、店の奥に入って行った。……そうだ、これからは気をつけないと。
初めての依頼料が入った袋を握りしめ、再び街道を歩き出す私と、繋いだ手に、素直について来てくれる金髪さん……。
何だろう……とても可愛く想えてくる……
可愛いって……違うよ……そんなんじゃないよ……
……とくん……とくん……
……店長さんのお店からある程度歩くと、私と金髪さんは、ある武具屋さんにたどり着く。実はここの武具屋さん、他の服屋さんよりも安くて良い服も売っている。金髪さんを連れて来たのも、ぼろぼろの服を何とかしてあげようと思ったから。
私達は早速武具屋さんに入ると、入口付近にある服に金髪さんを連れてくる。……ねぇ、この服何か、金髪さんにちょうどいいんじゃないかな? でも金髪さんは、周りが気になるようで、きょろきょろしっぱなし。
……もしかして、金髪さんの住んでる街には、こういうお店がないのかな?
そう思った私は、お店の中を案内してあげようと、金髪さんの手をちょっぴり、ほんの少しだけ、強く引いた……。
それでも、金髪さんは、私に導かれるままに、手を引かれるままに、素直について来てくれる……。
おいで……金髪さん……こっちだよ……
今、私が金髪さんに身に付けさせているローブや、三角帽子。鋼で加工された、全身の鎧。刀身の短い剣や、とても大きな両刃の剣。弓矢や、槍も見せて回った。
解らない……良く解らないけど……なんでだろう……? とても楽しい……
そんな私と金髪さんの幸せな時間を掻き消す、とても不快な声が私の後ろから、ふたり分聞こえてくる。
私はすごく嫌だったけど、仕方なく声をした方に不機嫌そうな顔をして振り返る。
そこには緑色の胸当てを着け、腰に片手剣を差した男の子が、その右隣には紫色のローブを身につけ、先端に魔法石がはめ込まれた木の杖を右手に持った女の子が立っていた。