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第1話 怖がらないで……大丈夫だよ……

 これは、幾多ある異世界の中のひとつの物語……。

 異世界にはよくある、人間と魔族の戦いは何時終わるのとも知れない……そんな世界……。



 …………それは私が13歳か、14歳だったかその辺はよく覚えていない。でも、あの時の事は鮮明に覚えている。


 ……ある日、街からある仕事を受けて、私は近くの山に入っていた。仕事事態は『料理に使う野草を拾ってくる』という新人魔法使いの私一人でも、簡単にできる仕事だった。



 ……と、思ったら肝心の野草がどんなに探しても見つからない。私は足を棒にして、何とか依頼通りの野草の数を手に入れると、無事に仕事を終わらせられた事に安堵しながら、そして、世の中って世知辛いなって思いながら、帰路についた。



 その途中だった。周りを見ても、たまに道端に大きな石や草が生えているだけの特に何もない殺風景な、私にとってはいつもの帰り道。いつもと違うことが起こった。



 突然、目の前に小さな白と青との二つの光が飛び込んで来る。その光は『ぱちぱち』と音を立てて徐々に大きくなると共に輝きを増す。それは正に放電現象。強くなる光に私は、目を開けていられなくなり両腕で顔を覆うと、それを合図とばかりに爆音が辺り一帯に鳴り響く。


 ものすごい爆音と光の割には、風はそんなに巻き起こらなかった。だけどその時の私は、腰を抜かして、尻餅をつき、両手もついてしまってた。心臓もすごくどきどきいっていたと思う。


 私は右手を胸にあて何とか気持ちを落ち着かせると、四つん這いになりながら、先ほど放電が起こった場所を確認する。


 ……そこに、あの人は……現れた。

 小柄で、線の細い、金髪のあの人……。



 初めて目にした時は、放電の影響か、気を失っていて、所々火傷を負っていた。身に付けていた服やズボンもぼろぼろになっていて、とても人前を歩けるような状態じゃなかった。


 私は急いで金髪さんに治癒魔法をかけて火傷を治すと、ぼろぼろの服装を覆い隠すように、羽織っていたマントを金髪さんに被せた。


 金髪さんは呻き声をあげながらゆっくりとその両目を開け、側に座っている私に焦点を合わせる。



 私は金髪さんにしばらく気を失っていた事を伝えると、金髪さんは勢い良く飛び起き、ひどく怯えながら少しずつ私と距離を取ると、肩甲骨まで伸びた金髪を振り乱しながら、何度も周りを見渡す。


 まるで、自分の身に何が起こったのか解らない、という感じだった。



 私は目の前の金髪さんを怖がらせないように、大丈夫である事を伝えようとすると、金髪さんは怯えて、私には解らない言語で、一生懸命言葉を返す。


 ……待って、少し落ち着いて。……駄目……。なんて言ってるか、解らないよ……。



 ともかく、この人をこのままにしておけない。

 そう考えた私は、金髪さんの右腕を半ば強引に掴んだ。驚いた金髪さんは、残った左手で私の右腕を殴ったり、両足で地面を蹴ったり、ものすごい抵抗をして来たけど、私は構うこと無く身体ごと自分の方に引き寄せ、両腕で抱きしめるとぼさぼさになったその金髪を左手で優しく撫で下ろす。


 怖がらないで……、大丈夫……、大丈夫だよ……。心配しないで……。



 ……何を言っているんだろう私は。こんなの、気休めにならない所か、相手に伝わっているかも解らないのに。……私のバカ……。


 そう思いながらも、私は感情の赴くままにその人の金髪を撫で続けた。すると、今まで恐怖で強張っていた金髪さんの身体は、心を許したのか、私に身体を預けるように少しずつ力を緩めてくる。

 私はその事を確めると、一旦金髪さんから身体を離し、改めて話を聞こうとしたけど、何の言語で話しているのか、やっぱり解らなかった。


 恐らく相手も同じ事で、私の喋っていることは理解出来ていないだろう。……それは、とてつもない恐怖だと思う。


 取り敢えず、街に戻った方が良いなと思った私は、金髪さんの右腕を私の肩に掛けさせて、自分の左腕は金髪さんの背中を通し、脇腹をしっかりと抱き抱えると、多少よろけながらも、私は金髪さんを何とか立ち上がらせると、私はそのまま、右手に持った杖で地面をつきながら、二人で街まで戻って行った。


 その途中、私の横を金髪さんは自力で歩けるようになり、私は金髪さんが遅れないように、歩幅を合わせた。



 私達が街門に着く頃には、既に陽は沈んでいて周りは暗くなっていた。私は街の中に入るため街門に手をかけると、金髪さんは、心配そうな目で私を見つめてくる。


 それもそうだろう。他人から見ればこの人は、何処から来て、何の言語を話しているのか解らない、いわば正体不明の存在。

 だけど逆にそれは、この人にとっても同じ事。いくら私に心を許したといっても、見知らぬ土地の、見知らぬ街に入る事は抵抗しか無いだろう。

 そんな事、どうして解ってあげられなかったんだろう? ……ふぅ、私のばか。



 私は、自分の被っている三角帽子を、金髪さんの頭に被せてあげると、金髪さんの両手を握り、大丈夫だよ、と声をかけてあげる。

 金髪さんはまた少し安心したのか、表情を和らげると、自分の両手を頭の上に乗せ、三角帽子をくしゃりと潰す。


 ……こういうのは、ひとつずつ不安を取り除いていくしか無いな、と私は思った。



 私は金髪さんに手を差し出すと、金髪さんはその手をそっと握り返す。私は街門に手をかけ、ゆっくりと開けると街の中に入って行った。



 ほとんどのお店が灯りを消している街道はとても薄暗く、外を出歩いている人はいなかった。そんな夜道を金髪さんは私を信じて、その手を引かれるままに、後ろをついて来てくれる。



 ……とくん……とくん……


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