1.カミサマ
くるくると回り続ける日常。ただ仕事に行って休日は家で寝て過ごすだけのつまらない日々。私はそんなルーチンワークに疲れ果てていた。
「ねえねえおにいさんおにいさん。」
そんな風な声がして振り向くとそこには誰もいなかった。
「こっちだよおにいさん。」
今度はそんな声とともにつんつんと私をつつくような感触がしたのでそちらに振り返ると不思議な少女が立っていた。たとえるならば、そう。少女だと確実に認識できて、目の前にいることもわかるのにそこに存在しているかがあやふやな感覚というか。なんというかそんな非常に例えづらい感じ。
「んふふ。いま、ふしぎだったでしょ?わたしがここにいるかどうかわからなくて。そりゃあそうだよ。わたしは、すべてであってむでもあるからね。」
「それはどういう・・・?」
「そうだね。かんたんにいっちゃえばかみさまとかそういうがいねんてきなものが、わたし。」
「神様、ね。」
「あ!そのこえはしんじてないな!もう!」
そういうと彼女は私の後ろに立つ電柱に手を向けた。
「えいっ」
そんな掛け声とともに電柱は倒れる。
「びっくりしたかな?でもこれでしんじてくれた?わたしがかみさまだっ、て。」
「そ、そうだね。信じたよ。ところでキミは僕に何のようなのかな?」
「あ、そうだわすれてた。これこれ。じゃじゃーん。」
そういって渡された紙には書かれていたのは
「転生案内・・・?」
「そうです!あなたはちかじかぎんこうごうとうにころされてしにます!なので、そんないたいおもいをするくらいなら、というはいりょです!」
「配慮か。ちなみに回答期限は?」
「いまです!」
「そ、そうか・・・」
「さあ。どうしますか?てんせい。しますか?しませんか?」
「少し良くみせてっもらってもいいか?」
「もちろん。よーーーくみてください。いまこのせかいにはわたしとあなたしかいませんから!」
そういわれたのでよく読み始めると書いてあったのはあなたの2番目の人生応援しますというキャッチコピーと来世のあなたが今より幸せなことを保証しますという文章のみ。そんなたった一行の文章の持つ魅力。それは現在のくだらない生活をしている私を甘く甘く誘惑してくる。もしも本当に今よりも幸せになれるのなら、例えそれが嘘だったとしてもどうせすぐ強盗に殺されるのなら。
「転生、します。」
「おー!うれしいですね!これでまたふこうなたましいがひとつすくわれました!」
「転生先がどんなところとかってわかるんですか?」
「かんぜんにらんだむ。らしいですよ?あ、ついかせつめいをわすれてました!」
「追加説明?」
「はい!たしか・・・てんせいするならあなたというそんざいがこのせかいにいたというきろくはすべてまっしょうされます!だったかな。」
「そうなんだ。でも私なんかのことを心配してくれるような人はいないし問題ないよ。」
「それはそれは。じんせいおつかれさまです。それじゃあてんせいのじゅんびにはいってもいいですか?」
「うん。お願いします。」
「はいはーい。うけたまわりました!てんせいいちめいさまごあんない!」
そう少女が叫ぶと私の視界は光で包まれたのだった。
「お疲れ様です。スサノオ様」
「ほんとだよ。ま、でもこれでわたしのうつわがあいたからよかったかな。あのニンゲンにはすこしかんしゃしないとかもね。ま、うそだけど。せいぜいてんせいさきのせかいでたのしんでくれたらいいんじゃないかな。はは。にしてもさいきんのニンゲンはばかだよね。カミサマのいうことしんじるんだからさ。カミサマがほんとうのことなんていうわけないのにね。」