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魂の解放者 ―ソウル・リベレーター  作者: ログテラ
二章二部:学院交流編
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実験施設の魔物

 「うおっ!」


 俺は思わず叫んだ。


 自分の持っていた銃が瞬時に砕けてしまったのだから。


 それをやったのがシスティナだと気づくのに数秒掛かった。


 そして、彼女に思わず怒ったのだが、それは間違いだった。

 彼女は俺を救ってくれたのだ。


 彼女が砕いた銃。

 そこには、さっきの魔物が取り付いていたのだから。


 物質ごと融合してしまっていたのだ。


 銃の物質と結びついて、煙の状態で俺に攻撃を仕掛けようと踏んだようだ。


 しかし、システィナの眼はごまかせなかった。

 現に、彼女はこの銃を破壊することで相手の目論見を打ち破っている。


 ………せっかくの拳銃を台無しにしたな。


 俺はそう思いつつも、システィナに感謝した。


 魔物は先ほどの攻撃で力尽きたようで、今度こそ消滅した。

 もう辺りには魔力の気配はない。

 俺達の魔力のみがこの場所にある。


 「………今度こそ、やったな」


 俺は辺りを見回した。

 その瞬間、これまで目に入らなかった惨状が俺の目にありありと映る。


 そこには、銃弾で破壊された家屋が大量にあった。


 本来、ミニガンはコンクリートすら砕けるし、対戦闘機用―――――


 それも、現代のジェット戦闘機に対して使われるようなものなのだ。

 そのようなものが、近代の建築材料でできているこの世界の家屋に向けて放たれたらどうなる?

 

 いとも簡単に破壊されてしまうだろう。


 システィナの身を挺した障壁展開により、ほとんどの弾ははじけていたようだが、それでも限界があった。

 彼女の障壁から漏れだした銃弾は、家屋を完全に破壊しつくしたのだ。


 ここから見えるだけで、完全に倒壊した家屋がいくつかある。


 幸い、けが人は出ていないようだった。

 ほとんどの人間は避難していたようで、倒壊した家屋に踏みつぶされたような人間はいなかったのだ。


 これは俺達の戦いにおいて最大の幸運だった。

 もし犠牲者が出ていたら、と思うと。


 「取り敢えず、この拳銃をどうするか………」


 この魔物の正体をつかむことも優先すべきだが、今はこの拳銃をどうするかを考えるべきだ。

 倒れていた男の話を全て信じるなら、この銃はとんでもなく貴重だという事になってしまう。


 そんなものを、たかが実戦一回で壊してしまったのだ。

 彼にどう詫びればいいかわからない。


 「………心配はいらない」


 俺に声を掛けてきた人物がいた。

 それは、間違いなく先ほど倒れていた男だった。


 「………立てるのか?」


 「ああ。そこのお嬢さんのおかげでな」


 俺の問いに、彼は答えた。


 ………どうやら、システィナの魔法が彼の怪我の治療を促進したのだと気づいているようだ。

 まあ、そんなことはいいだろう。


 「この拳銃、壊してしまったんだが………」


 俺は粉々に砕けた拳銃を彼に見せた。


 「………問題ない。帝国には、あと3つ同じものがある」

 「それに、もともとそのような銃は有ってはならないんだ」


 彼はそう言って、粉ぐ名に砕けた拳銃の破片を俺から受け取った。

 彼は地面からも拳銃の破片を拾い集めると、自分のポケットにしまった。


 「君には感謝しなくてはならない。あの魔物は、恐るべき厄災だ」

 「もし、また会う事が合ったらその時はよろしく頼むよ」


 彼はそう言って俺の目の前から姿を消していった。

 彼は一体どこに帰るのだろうか?

 

 ここは帝国からかなり離れた西の国。

 彼が帰るべき帝国はかなり遠いはずだ。


 「心配はいらないさ。私は帝国軍人だが、今は任務はない」


 彼は俺のところに戻ってくると、そういった。

 彼はなぜここに戻ってきたのだろう?

 俺の心を読んだのか?


 「いや、そうではない。なんたって、君ならそう聞くはずだと思ったからな」


 ………不思議な男だ。

 何かスキルでも持っているんじゃないのか?


 「………取り敢えず、どこに行くんだ?」


 俺は彼に聞く。

 彼は少しの時間では帝国に戻れないだろう。

 しかも、彼は結構負傷しているのだ。

 

 何とか怪我は治せたと言っても、彼の怪我は完治まではしていない。

 だから、彼は馬とかには乗れないし、かといって馬車を手配するまでの金は持っていないだろう。


 「取り敢えず、この国のギルドと掛け合ってみるよ。あの魔物についても教えなくては」


 ………ああ。


 それが一番だろう。

 彼が襲われた、あの謎の魔物。

 何とか俺達の手で倒せたが、奴は異常な存在だった。

 ミニガンを抱え、その銃弾はほぼ無限。


 その銃弾はどこから供給されているのかも俺にはわからない。

 しかし、ただ一つ言えるのは、あんな魔物を野放しにしていれば、いずれはこの国は滅んでいたという事だ。

 無限の銃弾と共に、その銃弾を圧倒的な速さで打ち出すミニガンを抱えた強靭な魔物。

 奴は普通の魔物ではない。


 それにしても、もう一つの謎もある。

 彼はどうやってここに来たのだろう?

 

 彼がここに来た手段は完全に不明だ。

 ダンジョンを通ってきたのだろうか?


 「ああ、そのことか。私は帝国付近のダンジョンに挑んでいたんだ」


 「そこで、大地震が起こってね………」


 「気づいたら、良くわからないダンジョンに居た」


 「それで、何とかそのダンジョンを走り抜けて、脱出しようとしたときにだ」


 「私の目の前に、空間の歪のような物が現れた。そこから出てきたのが、奴だったという事だ」


 「私は命からがら逃げだしたが、結果的に君たちに迷惑をかけてしまう事になってしまったな」


 ………そうだったのか。


 しかし、それにしては冷静だな。

 どこかもわからないような場所に飛ばされたのに、こんなに冷静だなんてな。


 「ああ。ここには前に来たことはあったからな。どこかはわかったさ」


 「それに、帝国の訓練でさんざんしごかれたからな。もう慣れたさ」


 ………強い人だ。


 この男は、俺達よりもずっと強い。

 精神的に、彼は俺達の誰よりも強いだろう。


 『そうじゃな。彼は強い人じゃ』


 ああ。

 あんたが言うなら違いない。


 『それにしても、じゃ。あの魔物、違和感を感じなかったか?』


 違和感だって?

 確かに、異常だとは思った。」

 銃を持っているような魔物なんて見たこともなかったし、しかもそれがミニガンだとは。


 『そうじゃ。普通の魔物は、銃器など持たぬ。なのに奴は持っておった』


 ………


 それが違和感か。

 

 『もしかしたら、あ奴は中枢の魔物かもしれん』


 中枢だって?


 中枢っていえば、あの中枢地域か?


 『そうじゃ。あのような魔物は、中枢のダンジョンくらいにしかいないのじゃ』


 なるほどね。

 しかし、何故中枢のダンジョンにそんな奴がいるんだ?

 他のダンジョンに居ない魔物が出現するのか?


 『教えてやるのじゃ。中枢のダンジョンは、ある一種の実験施設なのじゃ』


 実験施設だって?

 初耳だな。


 『それもそうじゃ。普通の人間は知ってはおらぬ』


 『中枢のダンジョンは、神によって作られたものがほとんどじゃ』


 神、ね。

 あんたらも神みたいなものじゃないか。

 あんたらの仲間か?


 『そうではないぞ。わしが言っておるのは、文字通りの神じゃ。つまり、この世界を作った神じゃ』


 おいおい、なんでそんなことを知ってる?

 世界が作られた時代からいたのは知ってるが、なんであんたがそんなことまで知っているんだ?


 『その時代から生きている者は皆知っている事じゃ』


 ………少しぼかされたな。

 教えたくないのだろうか?


 それにしても、実験施設か。

 だとしたら、そこには銃器を持っている魔物もたくさんいるのだろうか?


 『そうじゃな。実験施設では、魔物同士も戦っておるのじゃ』


 『世界のバランスを崩しかねないような魔物は実験の中で消えていき、残った魔物だけが現世に解き放たれるのじゃ』


 なるほどね。

 実験施設で”合格”した魔物が世に生まれてくるのか。

 なら、あの魔物もそういう類の魔物か?


 『違うじゃろう。あの破壊力では、実験の規定を大幅に超えている』


 『奴は、偶然にも外に出てきてしまったのじゃ。空間の歪でな』


 ここで彼の話とつながった。

 きっと、あの魔物は実験施設である中枢のダンジョンからきてしまったのだ。

 なら、あの強さも頷ける。


 『実験施設に挑むような冒険者は居ないのじゃ。ほとんどが未知の魔物じゃからな』


 ああ。

 そのはずだ。

 実験施設の魔物は外に出てくることがないというなら、未知の魔物だらけのはずだ。

 経験値は稼げるかもしれないが、リスクがでかすぎる。


 ちなみに、あんたらが挑戦してたっていうダンジョンはその類なのか?


 『うむ、そう言えるじゃろう。しかし、その性質は違うのじゃ』


 『そこには未知の魔物はほとんどいないのじゃ。しかし、登れば上るほど敵の強さは上がるのじゃ』


 負荷施設というわけか。

 前に聞いた通りだな。


 『うむ。そこでわしらはレベルを上げていたのじゃ』


 ああ。

 しかし、途中で上がり辛くなってきたというわけだったな?


 『そうじゃ。 ………取り敢えず、学院に戻るのじゃ。もう時間は過ぎておる』


 ああ、そうだったな。

 今はもうチーム対抗戦の時間を過ぎてしまっている。


 俺が戻らないと迷惑をかけてしまうだろう。

 周りを見ると、もうクレイグ達の姿はない。

 先に戻ったのだろう。


 俺も追いかけなくては。 

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