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魂の解放者 ―ソウル・リベレーター  作者: ログテラ
二章二部:学院交流編
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調査団

 俺は目の前で起こっていた出来事をそのまま受け入れることが全く出来なかった。

 俺の目の前で、一瞬にして崩壊する魔物。


 あれだけユウが苦戦していたのに、それをいともたやすく倒してしまった。

 しかも、奴はこれまでの戦いで一つの傷すら負っていない。

 俺達はあれだけ苦しんできていたというのに。


 人間じゃない。

 奴を初めて見たとき、そう思った。


 そして、今俺はその時と同じ感覚を味わっている。

 人外を目の前にして、俺の手は震えていた。

 奴が人間ではないという証拠はない。


 しかし、俺は直感的にわかったのだ。

 俺は上位者に対する畏怖をわからないうちに植え付けられていたのだ。


 そして、俺のつぶやきに返してきたユウ。

 彼さえも、俺には人間でないように思えた。

 

 ユウの発言は、きっと嘘だ。

 奴にはまだ奥深くがある。

 美しいその外見とは裏腹に、その腹の内は恐ろしい魔物のそれだ。

 人間と同じような姿をしていても、その強さはもう人外のそれだ。


 きっと、奴は神なのだろう。

 それか、魔物。

 少なくとも人間ではない。


 ユウすらも、俺には人間でないように思えたのだ。

 俺は疑心暗鬼になっている。


 これまで、俺が居た学院ではエルナたちと共にずっと一番だった。

 

 どのようなチームよりも強かった。

 一年生でありながら、鬼才と言われ三年生をいともたやすく打ち倒した。


 そのチームを率いていた俺が、今おびえている。

 自分でも感じられないほどの小さな震えが俺の手に起こっている。


 俺は震えているだろう。


 目の前で見せられた現象は、俺には理解できなかった。

 何が起こったのかすらわからなかった。

 一瞬で奴は巨大なゴーレムに肉薄し、その直後にゴーレムは崩壊した。

 

 俺は、奴がどのような攻撃をしていたのかすらわからなかった。


 ………ッ!


 頭が、痛い。


 この部屋に入る前に起きていた現象と同じだ。


 思えば、奴とユウは俺達とは違って平気そうにしていた。

 俺達がこれだけ苦しんだ現象に、奴らはいともたやすく抗ったのだ。


 ………


 もう、今は考えるのはやめにしよう。


 今はこのダンジョンから脱出する方が先だ。


 このダンジョンに居てはいけないと俺の第六感がささやいている。


 ひとまずは、あの化け物に力を借りよう。

 いくら化け物であっても、今は俺達に危害は与えていない。

 なら、それを利用させてもらうとしよう。


 俺達に危害を加えないものを敵とするわけにはいかない。


 ………ヤバいな。


 もう、意識を投げ出してしまいそうだ。


 俺の体の弱さを恨むよ。


 俺の体はこのような頭痛にすら耐えられないらしい。

 意識はまともでも、体が追いついていないのだ。


 ………学院に戻ったら、ゆっくり休もう。


 今日することはもうないはずだ。

 このダンジョンとも、もうおさらばだからな。


 


 「………エーミールが、倒れました」


 俺はシスティナの声を聞きながら、目の前に居たクレイグを担いだ。


 クレイグはもう耐えきれなかったようで、気を失っている。

 クレアやアンは大丈夫のようだ。

 しかし、クレイグとエーミールはもう駄目のようだ。

 俺達が担いでいくしかない。


 「担いで脱出するぞ」


 俺はみんなに呼び掛けた。


 一刻も早くここを出ていくことが必要だ。


 みんなに不必要な負担はかけられない。


 「分かった、ユウ」


 エトガーが俺に呼び掛ける。

 彼はエーミールを担ぎ上げた。

 細身の体からは予想できない力を彼は発揮している。

 

 彼は軽々とエーミールを担ぎ上げて、そのまま転移陣へと向かった。


 俺達もそれに倣って転移陣へと向かう。

 これを踏めば地上に戻れるはずだ。


 「………行くぞ」


 俺はみんなに伝えてから転移陣へと踏み込んだ。

 

 その直後、俺の視界を白い光が覆う。

 転移魔法特有の白い光だ。


 そして、突如として俺の視界が開けた。

 強い光を受けた後だというのに、俺は全く目がくらむことなく地上の光を受け入れた。


 俺は目の前に広がる光景に懐かしさを感じた。


 「帰ってきた! 帰ってきたぞ!」


 目の前に現れた生徒らしき男が叫んだ。


 それと同時に、ダンジョンの入り口の周囲に立っていた生徒たちが救急用具を持ち出してくる。


 彼らは担架を運んでくると、俺からクレイグを受け取って上に乗せた。


 「学院の救護班か?」


 俺は彼らに尋ねる。


 「ああ。行方不明になった班がいたと聞いて来たんだ」


 彼らはそう俺に伝えると、全速力で学院へとクレイグを乗せて走り去る。


 同じように、エーミールも担架に乗せて走り去る。

 幸い、学院は付近にある。

 彼らが衰弱してしまう事は無いだろう。


 「………終わったか」


 エトガーのつぶやきが俺にも聞こえた。


 彼は自らの短剣をしまうと、バッグから水を取り出して飲み始める。


 「終わったのね」


 口々に皆が帰還を喜んでいた。


 俺もその一人だった。

 未知のダンジョンから全員が無事に帰還できたことに喜んでいた。


 「やはり、このダンジョンは謎ですね」


 システィナが俺に言ってくる。

 

 「ああ。このダンジョンがあんな高難易度な所につながっていたなんてな」


 俺も予想できなかったことだ。

 

 二重ダンジョン、とでも言おうか。

 あのダンジョンは明らかに異常だ。

 

 難易度は元のダンジョンの数倍、更にボス部屋からは強烈な瘴気が漂ってきている。

 俺はもうあのダンジョンにはいきたくない。

 せめて、行くとすればシスティナと共にだ。

 彼女と共に居なくては、俺はあのダンジョンは攻略できない。


 しかし、あのダンジョンで俺は数多くのものを手に入れた。

 

 まず、レベルは10程上昇した。

 高難易度ダンジョンを攻略したことで、俺のレベルは大幅に上がっている。


 そして何よりも、俺は新たなスキルを手に入れることが出来た。

 これまでは全く出番のなかった俺のスキルを活かせたのだ。


 俺が手に入れたのは、触手ゴーレムの毒霧。

 あらゆる生命を侵食する混沌の霧を放てるようになった。

 それと同時に混沌魔法も扱えるようになったのだ。


 どうやらあの能力は混沌魔法に分類されているようで、俺のステータスには混沌魔法が追加されている。


 そして、一番大きなスキル。

 それが、触手ゴーレムの特殊能力だ。

 

 それは、補完能力である。

 体の怪我を他の部分を使用して補えるようになった。


 それだけではない。

 周囲の物質を吸収して生命力に変換できるようになったのだ。

 

 空気中に満ちている物質ももちろん吸い込める。

 それを俺の体へと置換することで自らの体を治療できるようになった。


 また、俺は周囲の物質を移動させることも可能になった。

 

 触手ゴーレムのスキルの応用だ。

 ある程度軽い物質なら、移動させて構造物を作ることが出来る。

 

 ただ、このある程度軽い、がネックだ。

 あの触手ゴーレムのように石のような物は移動できない。

  

 俺が移動できるのは、水や紙、砂くらいだ。

 

 しかも、俺の周囲1メートルほどしか移動できない。

 かなり使い勝手は悪いだろう。

 

 しかし、俺はこの能力を得たことによって戦闘の幅が広がった。

 

 重い物質を移動させることは出来なくても、簡単な壁くらいは生成できる。

 もちろん、それが破壊されれば俺の魔力は大きく消費される。


 この能力は奥の手となるだろう。

 相手に肉薄したときに空気中の物質を集めて敵の眼をつぶしてもよいのだ。

 

 俺が戦える範囲が広がることで、俺はさらに強い敵と技術で渡り合えるようになった。

 

 使い勝手は悪い能力だが、十分に働いてくれるだろう。


 

 ―――――俺がその次の日の朝に聞いたことだ。


 二日目、俺達は学院交流団全体でダンジョン攻略に挑戦した。

 その中で、俺達がいたダンジョンに突如大地震が起こったのだ。


 ダンジョン以外に地震は起こっていなかったため、俺達のみがあの大地震を体験したことになる。

 しかし、ダンジョン内に居た生徒たちは小さいながらもその揺れを感じていた。

  

 生徒たちが言うには、かなり大きな地震だったと話している。

 直接的には被害は出なかったものの、揺れを感じていたらしい。

 

 それを不安に思った生徒たちは一刻も早くダンジョンから脱出するべくボス部屋を目指した。


 俺達の挑んでいたダンジョンでは、俺たち以外のチームが全てボス部屋の前に集結し、あっという間にボスは倒されたらしい。

 

 しかし、俺達がいつまでたっても帰還しないことで焦りを抱いていたのだ。


 俺達があの大地震の直下に居たら、という思考で染まっていたらしい。

 

 俺達は実際に大地震を直接食らってしまい、別のダンジョンに飛ばされていた。

 

 そのダンジョンは未確認のダンジョンで、俺達の情報を頼りにダンジョンへと向かった調査団がいた。

 ギルドはこの現象を聞きつけて調査団を手配していたのだ。


 しかし、俺達が地震に飲み込まれた部屋には何の被害もなかったのだ。

 あれだけ大きな穴が出来ていた部屋には、何もなかったのだ。

 

 ただ、部屋の中心には陥没しているような跡があり、俺達の情報とは一致しなかった。

 俺達がいたときは、部屋の中央には陥没している跡はなかったからである。


 ルトリアの調査団が手配されているらしい。

 これまで学院交流に際して大きな役割を果たしてきたダンジョンなのだから、その異常は突き止めなければならない。


 しかし、調査団は全く情報を得られなかった。


 ―――――ある一人の冒険者が、意識喪失状態でダンジョン前に倒れているのが発見されるまでは。

 

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