ラストバトル
「行動開始」
ルーサーは静かに仲間たちに伝えた。
グレッグの報告では、敵も連合チームを組んでいる。
その数は16。
自分たちよりもその数は多かった。
ルーサーにとって、今の状況は幸運な展開だった。
合流することは不可と思われていた仲間たちと合流し、連合チームを構成できたからである。
全ての仲間、総勢8人との合流を果たし、ルーサーたちの戦力は数倍にも膨れ上がっていた。
全員がレベル30に近い、最強のチームである。
いくら敵が強くとも、このチームであれば倒せるとルーサーは確信していた。
しかし、この場に居るであろうユウ達に対してはまだ不安要素が大きく残っていた。
ルーサーにとって、ユウ達は因縁の相手だ。
しかし、強大すぎる戦力の前にはひれ伏すことしかできなかった。
今は、連合チームを組むことにも成功した。
相手の戦力の三倍もある。
しかし、それでもルーサーは負ける可能性を拭い切れなかった。
ユウとシスティナは、いまだに彼の脅威になりえるからである。
簡単に自分たちが全滅し得るほどの戦闘力を持った二人なのだから、自分たちには勝てる見込みがほとんどない。
今、もし位置を奴らにばれていたら即死するだろう。
敵の連合チームも含めて、一瞬にして全滅してしまうだろう。
それだけは運に頼るしかない。
相手が、自分たちの位置までは気づいていないことにかけるしかなかった。
もし気付かれていたのなら、自分たちは終わりだ。
「全員、敵の方向へ進め」
ルーサーは静かに言った。
自分たちの近くにいる敵へとむけて、姿勢を低くしながら進んでいく。
全員が瓦礫に隠れながら、徐々に距離を詰めていく。
それがルーサーの作戦だった。
彼らに十分近づいたら、そのまま突撃して終了だ。
それだけで奴らは倒すことが出来るだろう。
しかし、それからが問題だ。
システィナの遠距離攻撃は、どのようなものなのかすら把握できない。
ルーサーがつかんでいた情報では、彼女の遠距離攻撃は氷。
氷属性魔法を遠距離まで飛翔させるのだ。
しかし、システィナがこの大会で見せた魔法はそうではなかった。
光の収束熱線を放つ魔法だったのである。
つまり、システィナが自分の魔法について詳しいことを語らなかったため、どのような魔法を使ってくるのかすら謎なのである。
「そのまま進め」
ルーサーたちはさらに距離を詰めた。
そして、敵のチームは全く気付いていなかった。
壁に隠れていたのである。
誰もルーサーたちが迫っている事には気づいていなかった。
16人もの人数が居ても、ルーサーたちの潜伏攻撃は見破れなかったのである。
ただ、敵チームは16人の生徒を細かく分けていた。
4人ずつ、適度に間隔をおいて配置されていたのである。
しかし、ルーサーは既にそれに気づいていた。
3人ずつを送り込み、敵を殲滅するのが彼の作戦なのだ。
そして、敵のすぐそこまでルーサーたちは迫った。
敵がすぐそばにいることを確認すると、ルーサーはついにチームに命令を下す。
声を上げていては、仲間たちまで届かない。
そして何よりも、声で敵に気付かれてしまう。
だからこそのハンドサイン。
ルーサーは左手を真上にあげて、そのまま手を握り締めた。
そして横に振る。
それが攻撃の合図。
突撃命令である。
それに気づいたメンバーが動き出した。
そして、敵に攻撃を仕掛けたところで叫ぶのである。
「全員、突撃ィ!!」
ルーサーの叫びでチームの速度が一気に増した。
ルーサーと共に、グレッグも敵チームを殲滅すべく突入する。
敵チームは全く反応できていなかったようだ。
まさか、こんなすぐ近くまで来ているとは思わなかったのだろう。
しかし、既に時は遅い。
ルーサーたちは既に近くまで来ていたのだ。
そして、もう反応することは叶わない。
「オラァ!」
グレッグが勢いよく敵を吹き飛ばす。
そのまま大会から永久退場させて、ルーサーがそれに続いた。
たった3人で、4人を相手にしているのである。
人数の不利はあるが、この不意打ちであればそれは関係ない。
グレッグが身を引くと同時に、ルーサーは敵チームの生徒を斬り付ける。
そのまま次の生徒に剣を振るい、勢いを落とさずに二人を退場させた。
そして、一瞬のうちに敵4人が全滅する。
ルーサーたちが4人を倒したところで、他のチームも敵を殲滅し終えたと合図が飛んでくる。
そして、ルーサーは次なる指示を出した。
このような展開になった時、一番恐れなくてはならないのは何か。
それは、勿論システィナの遠距離攻撃である。
たとえこの距離であろうと、確実に当ててこられるのだ。
回避するしか道はない。
彼女にはもう気づかれているだろう。
これだけ派手に戦闘をしたのだ。
既に気付かれていても全く不思議ではない。
それどころか、それが普通だろう。
「全員、走れ!!!」
ルーサーは声の限り叫んだ。
全員で散開し、システィナの魔法を避けるために。
「来たかっ!」
ルーサーはそれを見た。
反対側の方角に見える、強烈な光を。
それはこちらの方角に研ぎ澄まされたように光っている。
そして、光の帯がこちらへとたどり着き、一人の生徒に重なった。
その瞬間、その生徒は消滅した。
圧倒的な威力の熱線が、障害物をも溶かしつくして生徒へとたどり着いたのである。
そのまま、熱線が薙ぎ払われた。
そして、壁に照射されたところで爆発すら起きる。
幸い、ルーサーには反応する時間があった。
自分の姿勢を低くすることが出来たのである。
おかげでその魔法を回避する時間があった。
しかし、他の生徒はそうもいかない。
反応が遅れた生徒はすぐに消滅した。
手に照射された生徒も、致死傷判定を受けて消滅した。
残った生徒は十人もいなかった。
そして、システィナの無慈悲なる追撃。
「来たぞっ!」
ルーサーはその攻撃の性質を一瞬にして見抜き、その攻撃を回避しようと走った。
巨大な火球が生成されている。
そして、その火球は猛烈な速度でこちらまで向かってくると、そのまま爆発した。
小さな火球を振りまきながら、爆発の威力で祭壇エリアの地面に大穴をあけるほどの威力を発揮したその魔法で、ルーサーたちは既に6人までその人数を落としていた。
あれほどの人数を用意しておきながら、システィナ一人の魔法でその半分が消滅したのだ。
しかし、それ以降の魔法は飛んでこなかった。
どうやら、位置を把握できてはいないらしい。
それはルーサーにとっては幸運だった。
広く散開しているため、近くに敵がいる可能性はある。
しかし、ルーサーにとってはそのようなものは敵ではない。
ユウやシスティナが相手でなければ、ルーサーは必ず勝てる。
そう確信していた。
自分の近くにはグレッグはいない。
自分だけだった。
「………」
ルーサーはその存在に気付いた。
彼は、自分の近くにいる敵に気付いていたのである。
「この感じは………」
ユウでもない。
システィナでもない。
それは、別の人間。
それはクレイグだった。
しかし、彼は相手がクレイグであることなど知らなかったのだ。
「ハッ!」
ルーサーは背後からクレイグへと奇襲をかけた。
クレイグは自分だけ散開していた。
敵の位置が分からないので、自分は敵を探していたのである。
「何っ!?」
クレイグは脅威の反応を見せた。
ルーサーの斬り下ろしに反応して、自分の剣でルーサーの剣を受け止めたのだ。
「………気づかれたか」
ルーサーは悔しそうにつぶやいた。
自分の剣が防がれる可能性は少ないと思っていたのだ。
「ハアッ!!」
ルーサーはそのままもう一撃をクレイグに放った。
「グッ!」
上段からの斬り下ろしを受け止めたクレイグは、一歩引いた。
ルーサーの斬り下ろしは、余りにも強かったのである。
彼の斬り下ろしを受け止めて、クレイグは苦しそうにつぶやいた。
「重いな………」
クレイグは苦しそうにつぶやいたが、その直後に裂帛の気合を放った。
そのままルーサーの放った剣を跳ね上げ、ルーサーへとカウンターをくらわしたのだ。
「ヤアッ!!!」
クレイグの放った剣は、中段からの横なぎだった。
防ぎにくい、強力な攻撃だった。
しかし、ルーサーはそれをもしのいで見せた。
そのまま、彼は気合を込めてさらにカウンターをした。
「ぐわっ………!」
クレイグは、もろに剣を食らって吹っ飛んだ。
しかし、まだ消滅判定は下されない。
「追撃だぁ!!」
そのまま、クレイグはルーサーの必殺の一撃を食らってしまった。
反撃することは出来ず、そのままクレイグは退場した。
「………あっけなかった」
ルーサーはつぶやいた。
流石のクレイグと言えど、自分よりレベルが数段上の人間には勝てなかった。
「………ルーサーか」
そこに現れたのはユウだった。
ルーサーの因縁の相手にして、倒すべき復讐相手。
それを目前に見て、ルーサーは自分の剣を撫でた。
「ユウッ!」
今度こそ勝ってやる。
燃え上がる闘志を心に宿し、ルーサーは目の前の敵に向けて叫んだ。




