連合チーム
灰色のような色に染まる異世界の森。
その中で、学院の生徒達が戦っていた。
「オラァ!」
二チームが戦ううちの、一方の男子生徒が大剣を振りかぶった。
よく見ると、クラスメイトじゃないか?
確かレベルは25くらい、大剣使いだったはずだ。
「ぐわっ!」
その剣を受けた相手チームの生徒が吹っ飛ぶ。
しかし、まともに食らっておきながら殆どダメージはない。
そして、吹っ飛んだ直後に生徒は消えてしまう。
どうやら、あの光のように消えるのが退場を示しているらしい。
けがをしていない所を見ると、どうやら致死傷を防ぐ機能が動作しているようだ。
「オラオラ!」
そのまま男子生徒は大剣を振りかぶり、隣にいた生徒をも吹っ飛ばす。
そのまま退場させて、次の生徒を標的にする。
そして四人目を吹っ飛ばして退場させ、彼のチームだけが森の中に残った。
彼の技量は素晴らしいものだ。
大剣を自在に扱うことが出来る人間は数少ない。
筋力に秀でているのだろう。
しかし、彼らは1チーム退場させたところでおしまいだ。
なぜなら、それを俺達が見ていたから。
俺達は彼らから少し離れた場所に隠れて、様子をうかがっていた。
彼らが戦闘に勝利し、一息ついているところで、俺はシスティナたちに指示を出した。
次の瞬間、彼女たちが一斉に魔法を放つ。
魔法が放たれた音を聞いて相手のチームの生徒たちが気づいたようだが、時すでに遅し。
魔法はもう放たれている。
そして、回避することは叶わない。
森の中で放たれた魔法は、木々をなぎ倒して生徒たちに直撃した。
放たれた魔法は氷魔法だった。
放たれた氷が生徒たちを凍てつかせ、そのまま動かなくする。
彼らは回避もままならず俺達に敗北した。
彼らが凍てついた数秒後、彼らはこの世界から退場した。
半ば漁夫の利を取ってしまったようなものだが、俺達に非はないはずだ。
油断している彼らが悪いのだ。
そして、これでこの大会から2チームが最低でも退場したことになる。
100チーム存在しているので、残りは最高でも98チーム。
俺達のチームを除けば97チームだ。
他でも戦闘は起きているはずなので、さらにチーム数は減っているはずだ。
まだ大会の開始から数分しか経っていない。
この大会の会場である異世界がどれだけの広さを持つのかはわからない。
だんだんと会場が狭まっているのであれば、だんだんと追い詰められていくはずだ。
初動でどれだけのチームが敗退するのかはわからないが、最低でも10チームは退場するだろう。
チームごとの距離はあまり離れていないようなので、それぐらいが妥当と言ったところか。
まあ、今の戦闘で分かったことは、思ったよりも致命傷の判定が甘いことだ。
今の氷程度では足止め程度になるだけだと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
致命傷の判定が何を基準にして行われているのかはわからない。
しかし、今の魔法程度で生徒たちを退場させれるのであれば有難いことだ。
「とりあえず、森を早めに出よう」
クレイグが俺達にそう提案してくる。
「ああ。森は奇襲の危険性が高いからな」
俺は彼にそう返し、システィナたちの同意を求めた。
「はい、早めに出るべきでしょう」
「………私も」
彼女たちも頷く。
森は危険だ。
紀州の危険性は勿論、迷ってしまう可能性も大いにある。
俺達には立ち上る光が見えているからいいものの、敵と戦っていれば方角はわからなくなってしまうだろう。
俺達にとってはそれが一番怖いことだ。
「まあ、ゆっくりと行くとするか。まだ会場の縮小の兆しは見えない」
会場の縮小のルールは、俺達にとってはその存在が疑えるようなものだった。
この世界でどうやって会場を縮小させるのだろうか?
結界のような物を使って生徒達の移動を制限するのだろうか?
まあ、この世界は神器によって生み出された世界だ。
神器の能力でどうにでもなるのだろう。
「とりあえず、行くぞ」
俺達は森の中を進む。
警戒は怠らない。
奇襲には最大限の警戒をする。
いくら俺達のレベルが高かろうと、奇襲されてしまえばどうなるかわからない。
最悪、クレイグやアンが退場してしまう可能性もある。
俺とシスティナだけでここを戦い抜くことは可能ではあろうが、できれば全員退場せずにこの大会を終えたいものだ。
「………来ました」
システィナが俺にそっと伝えた。
俺は全員にハンドサインを出して、戦闘準備をするように言う。
何人かはわからないようだが、ここに接近している人間が居るのは確かなようだ。
相手の攻撃に注意しながら、俺達は森の中を進む。
出来る限り平静を装って、敵をおびき寄せる。
相手が奇襲を行ってくるように。
もちろん俺達はそれを知っているので簡単に対処できてしまう。
「………16人」
俺は耳を疑った。
今システィナは何と言ったんだ?
16人、だと?
一チームどころではない。
四チームの連合だというのか?
「16人、同じところから来ます。全員、呼吸は荒げていません」
これで確信に変わってしまった。
呼吸が乱れていないという事は、連合を組んでいるという事だ。
同じ場所に敵同士で居て、呼吸を乱さないはずがない。
四チームの連合………
こいつら、結託しやがっていたという事か。
俺にも彼らの音が聞こえるようになってきた。
俺たち以外の場所から聞こえる音。
草を踏み荒らす音がすぐそこまで聞こえてくる。
全周囲へとその音は広がっている。
つまり、すでに包囲されているという事だ。
「全員、ここで休むぞ」
俺は偽りの指示を出した。
その意図を理解したクレイグ達は、言われたとおりに立ち止まる。
この指示を出したのは、あえて足を止めることで敵を誘い出すためだ。
こうして敵を誘い出し、そこを叩く。
「………来たか」
俺はこちらに接近してくる足跡を聞いた。
俺達は円形になってしゃがんでいる。
その視線は対角線上の相手のように見えるが、実際はその向こう。
俺達が狙うのは相手側の敵。
恐らく、彼らは背後から奇襲してくるだろう。
そこを迎撃する。
「ハッ!」
俺達は一斉に動き出した。
相手の向こう側に敵が見えて、それを迎撃すべく一斉に動き出したのだ。
その一瞬で全員の位置が逆転し、敵に肉薄する。
そのまま抜いた剣を振るい、相手に命中させる。
手ごたえはあったが、どうやらけがはしていないようだ。
しかし、相手はその直後に光となって消える。
退場は確実に行えたようだ。
「全員、固まれ」
俺は目の前の敵を始末すると、全員で中央に固まった。
自分の背中を他人に預ける形で、俺達は固まる。
「12人か」
俺は姿をあらわした生徒たちを目視する。
「お前たち、卑怯なんじゃないか?」
「連合を組んで自分たちより人数が少ない相手を蹂躙するのが楽しいか?」
俺は目の前の生徒に向けて言葉を放つ。
あわよくば、これに怒って突進してくれればよかったんだが、そうもいかなかった。
「これが俺達の戦法だ! お前たちはおとなしく始末されろ」
そう言って彼は自分の剣を抜き、俺に突きつけてくる。
同じように、他の生徒達も自分の武器を抜いた。
「………システィナ」
俺は隣で杖を構えるシスティナに声を掛ける。
「君の魔法で相手をひるませてくれ。目くらましだけでもいい」
相手に聞かれないように彼女に言い、それを隣へと伝達していく。
これで全員が同じ戦法を理解した。
そして、数秒おいてシスティナが杖を振り上げた。
俺達は同時に目をつむり、腕で目を隠す。
次の瞬間、辺りを光が包み込んだ。
一瞬の光であったが、それは目くらましには十分。
地球で言うスタングレネードにも値する量の光量を食らわせてやったのだ。
これで奴らは目を開くことは叶わないだろう。
「行くぞッ!」
俺は指示を出してから目を開け、前方で目を押さえている生徒に斬りかかった。
俺の斬撃を受けた生徒が消滅していくのを確認すると、俺は次の生徒へと切りかかる。
そのまま四人で12人を退場させ、森には再び静寂が訪れた。
無事に全員が無傷で相手を撃退することに成功したのだ。
「大丈夫か?」
俺はみんなの方を向いて言うと、
「ああ、少し目が焼けたが」
「問題ありません」
「………大丈夫」
と、安心できる声が返ってきた。
どうやら、多少目くらましの光が強かったようだ。
流石にシスティナが光を放つと普通の光にはならない。
彼女の杖が魔力をブーストしているせいで、多少の光でも太陽並みの光となる。
「これで4チーム分か?」
俺達が撃退したのは合計5チーム。
これで残りは94チームとなる。
まさか相手が連合を組んでくるとは思いもしなかったが、無事に撃退で来たのでいいだろう。
次の相手も連合を組んでいるとは思えない。
まあ、もし連合を組んできたらその時はその時だ。
次に敵に出会うのは森を抜けた後だろうし、そうなったらシスティナたちに焼き払ってもらえばいい。
彼女たちの魔法の強力さは俺達とは比べ物にならない。
だからこそ、十分に相手の処理を任せることが出来る。
アンはシスティナほどには魔力はないが、十分な威力の魔法を放つことが出来る。
近距離の火力で言えば俺達よりも強いだろう。
クレアが中遠距離の魔法に特化していたのに対して、アンは中近距離の魔法を得意とする。
剣よりも出が速く、なおかつ威力も高い魔法を使えるのだ。
彼女なら近距離まで接近されても大丈夫だろう。
システィナは言うまでもない。
彼女なら全距離に対応できる。
近距離魔法は勿論、中遠距離でも大魔法を放つことが出来る。
彼女一人だけでどれだけの戦力になっているのだろうか?
彼女が大魔法を制限なしに放てば、国一個が滅んでしまいそうだ。
恐ろしい力ではあるが、彼女がそれを破壊に使うことは無いだろう。
………”家族”のためなら世界でも滅ぼしかねないが。




