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隣町へ

 こっちの光が灯っている方向に進めばスラム街から抜けられるのか…………?

  

 『うむ、恐らくは。スラム街で光の灯った場所なぞ無いであろう』


 それもそうか。

 じゃあ、俺はこのまま進むことにしよう。


 『…………さっきの男のナイフは持っておるか』


 ああ、きちんとな。


 実はさっき、奴の胸から抜いて隠し持っていた。

 俺は何も武器を持っていないし、もしまた盗賊に襲われれば今度は対処できない。

 それが彼女_____今俺に話しかけているファイリアの考えだ。

 ファイリアの知っている事は多種多様で、俺には理解できないこともある。

 もちろんファイリアの言ったことのほとんどは当たるし、さっき襲ってきた男の行動を完璧に読んでみせた。

 その結果、本来は不可能であるはずの”レベル1がレベル6を倒す”なんていう奇跡を起こさせてくれた。

 彼女は誰かに作られたという。

 彼女ほどの能力で”失敗作”だというなら、本来作ろうとしていた物はどのようなものなのか。

 ファイリアが”原初の人”だとか漏らしていたが、彼女はそれだけは教えてくれなかった。


『さて、見えてきたの』


 やっとまともな街に戻ることが出来た。

 正直、スラム街はもううんざりだ。  


 ………臭いし。

 

 『お主、まさかここは”キッカロン”ではあるまい?』


 そのキッカロンが何なのか知らないが、見た感じ店が多い街道沿いの町だったぞ。

 あと、でっかい門が入り口にあって近くに森があったな。

 

 『それはまずい。キッカロンの街は商業都市なのじゃ』


 商業都市か。

 あんたの言ってたギルドもそこにあると思うが?


 『この町は表向きは商業都市じゃが、裏では闇組織が支配しているのじゃよ』


 何だって!?

 じゃあ、あの店員もそういう輩だったのか?


 『ああ、あの店員か。わしも見ていたが、恐らく闇組織の一員であろう』


 そうだったのか…………

 ならどうする?

 そんな危険な街に長くは居られないぞ?


 『すぐにここを出るのじゃ。わしの記憶が正しければ、街道は四方向に広がっておる。そのまま進めば、街を出れるはずじゃ』


 ああ、もう遅いのに…………

 出来れば一睡でもしたかった所だ。


 『まだ日が変わってはおらぬ。すぐにこの街を出るのじゃ』


 ああ、言われなくてもそうするさ。

 走ってみるとしよう。

 さっきの男から手に入れた身体能力強化というスキルの効果が気になる。

 

 俺は街道を真っすぐに駆け抜けていく。

 既に寝静まっているようで、人は見当たらない。

 家から漏れている光もあまり多くは無い。


 「凄いぞ、いつもよりも体力が続く!」


 俺は日本での50メートル走のタイムが7.9秒。

 中学三年生としては少し遅い方であったのだろうが、今はそれよりもかなり速い速度で走れている。


 『うむ、これもスキルの恩恵じゃ』


 凄いな、スキルって。

 あっという間に門までたどり着いてしまったよ。


 よく見ると、俺が入ってきた門ではない。

 また別の門だ。


 『ふむ、この門を抜ければ安全な街に行ける。そこにもギルドはある故、そこに向かうと良いじゃろう』


 しかし、俺は一つ問題点を見つけてしまった。

 門は開いていないのだ。

 もちろん、あたりに人がいる気配もない。


 『門はせいぜい3メートルじゃ、飛び越ええても問題はあるまい』

  

 いや、無理だ。

 あんたと同じように扱われるのは困る。


 『それもそうじゃな。ではこうするとしよう』


 どうする気だ?

 いやな予感しかしないんだが…………


 『少し踏ん張っておれよ』


 次の瞬間、俺の足の裏から突如として何かが膨れ上がる感覚があった。

 そして、俺の足で何かが爆発したかと思うと、俺の体は斜めに吹っ飛んで、門を軽々と飛び越して向こう側へ着地したのだ!


 「いってえ!」


 俺は衝撃に驚いて態勢を崩したまま着地してしまったため、かなりの痛みを感じてしまった。

 いくら何でも乱暴な………

 

 『おっと、すまなかったのう。しかし、これで門は越えられたぞ?』


 それはそうだが…………

 一体何を俺にしたんだ?


 『お主の魔力を足から圧縮して放出しただけじゃ。今のわしでもそのくらいは出来るわい』


 待て待て。

 あんたは俺の体にも干渉できるのか?


 『そうじゃよ。契約とはそういうものじゃ』


 …………まあいい。

 取り敢えず、門は越えることが出来た。

 これで次の街に向かうだけとなったが、どっちの方角なんだ?


 『そうじゃな。その辺りは平原になっている故、舗装された道が一応存在する』

 『魔物も出現する故、練習がてらにスキルを奪い取ってみるのも良いじゃろう』


 そうか。

 なら、その平原とやらで魔物を狩ってみることにするか。

 町まではどれくらいの距離があるんだ?


 『そうじゃな。一日程度で着く距離じゃよ』


 曖昧だな。

 具体的な数値はないのか?


 『すまないが、流石のわしでも辺境の地の地理までは把握しておらん。正確な距離を算出するには自分で歩いてみると良いじゃろう』


 すまない。

 じゃあ、早速行ってみるか。


 後ろ目に街を振り返ったが、やはり明かりがともっていて美しい風景ではあった。

 ただ、裏では闇組織が支配していると聞くと、その美しさに大きな影があるように思えてしょうがない。

 

 『ボヤっとしているのも良いが、もう魔物のお出ましだぞ』

 

 「うおっ、なんだこいつ」


 俺の前に現れたのは犬型の魔物だった。

 しかし、犬というよりは狼に近く、その体は普通の何倍もある。


 『グレーターウルフじゃな。温暖な気候を好み、草原で魔物や家畜を狩る狩人じゃ』

 『ナイフを構えよ、ユウ! 奴は獲物を見つけると飛び掛かるのじゃ!』

 

 俺はナイフを構えた。

 その握り方は自然と逆手になっている。

 これは”短剣術”の効果らしい。

 武器スキルと呼ばれるそれらは、武器の知識を所有者に与えてくれるそうだ。

 ただ、それはあくまでも無意識的なもので、記憶としては定着しない。

 ファイリアは”機械に手助けしてもらっていると思うとよいじゃろう”と言っていた。


 「グルルル…………」 

 

 グレーターウルフが唸る。

 今にも飛び掛かろうとしていることは奴の足を見ればわかる。

 足に力が入っているのだ。

 

 そうだ、せっかくだから解析を使ってみるか。


 ◇ステータス

 《グレーターウルフ》

 レベル:3

 攻撃力:19

 防御力:13

 俊敏性:24

 魔法力:8

 ◇スキル

 威嚇:レベル2 


 なんだこいつ、ステータスが結構高いな。

 ステータスはさっきの男より低いが、合計値はレベルの割には高い。


 『種族によって初期の合計値や伸びしろは少々異なるのじゃ。例えば、このグレーターウルフは攻撃力と俊敏性が上がりやすいのう』


 なるほど…………

 今は目の前の敵に集中するとしよう。


 「グルルッ!!」


 グレーターウルフは一声上げると飛び掛かってくる。

 かなり素早い攻撃だ。

 しかし、あまりにも直線的すぎる。


 「何とか避けれたな」


 『安心するのはまだ早いぞ、ユウ。まだお主は奴に止めを刺しておらん』


 次はこっちの番という事か。

 なら、強化された身体能力で突撃してやることにしよう。


 「ウオラッ!」


 俺は素早く地面を蹴る。

 奴もそれは予想していなかったようで、俺を迎撃しようとする。

 しかし、俺の方が早かったようだ。

 俺のナイフは奴の腹部を切り裂き、一撃で絶命まで持っていった。


 俺はそのまま”解放”、”吸収”と能力を使い、力を吸い取った。


 『レベルも上がっているようじゃな。どうじゃ、ここで一回自分の能力を確認するのもよかろう』


 そうだな。

 俺も自分のステータスには結構興味がある。


 ◇ステータス

 《ユウ》

 職業:無し

 レベル:4

 攻撃力:19

 防御力:19

 俊敏性:19

 魔法力:19


 うん?

 思っていたよりもずっとレベルが高いな。

 こんなにもレベルは上がりやすいのか?


 『否じゃ。恐らく、”吸収”は相手の経験をも吸い取るのだろう』


 じゃあ、このまま続ければどんどんレベルが上がっていくのか?


 『理論的にはそうなるじゃろう。ただ、経験を吸い取るとなると…………』


 どうした、考え事か?


 『そうじゃな。やはりわしが理解できないものは珍しいからの』

 『さて、町へ急ぐとしよう。明日はギルドへと向かうのじゃぞ』


 ああ、そうだな。

 しかし、どうにも魔物の気配が多いような気がする。

 周りから聞こえるかすかな唸り声。

 これはまさしく魔物の物だ。

 まだ次の町へは半分ぐらいなんだろう?


 『うむ。やはり、周りの魔物は倒しておくのが良いじゃろう』

 

 やっぱりそうだよな。

 じゃあ、少し魔物たちに近づいてみるとするか。


 『待つのじゃ!』


 何だ?

 

 『お主にはわからぬかも知れぬ。しかし、明らかにこの魔物の数はおかしいぞ』


 魔物の数がおかしい、だと?


 『そうじゃ。これはもしや_____』


 次の瞬間、平原の草むらから小さな魔物が飛び出してきたッ!


 「セイッ!」


 俺はそいつをナイフで迎え撃ち、逆に草むらへと跳ね返してやった。


 『いい判断じゃ、ユウ! 恐らくこれは”侵攻ラッシュ”!』


 ラッシュだと!?

 それは一体何なんだ!?


 『大量の魔物が町に侵攻する現象じゃ!』

 『お主は囲まれておるぞ!』


 見ると、さっき跳ね飛ばしたのは小さな狼のように見える。

 つまり、グレーターウルフの子供だ!


 「グルオオオオオ!!」


 そして突如聞こえる獰猛な咆哮!


 何だこの恐ろしい咆哮は!?

 グレータードッグの物とは比にならない!

 

 聞くものに恐怖を与えるスキル”咆哮”!

 それを持つ可能性があるのはグレーターウルフの親玉”グレーターウルフ・コマンダー”!

 侵攻ラッシュの原因はそういった上位種が下位種を統率していることにあるのだ!


 _____というのはファイリアの知識である。


 『油断するではないぞ! 奴らは恐怖を覚えない!』

 『いくら仲間が殺されてもそれを怒りへと変えて攻撃してくる!』

 『無尽蔵に魔物はおるからの! どんどん処理しないと終わりじゃぞ!』


 「くそっ、なんだこいつら!」


 どんどん飛び掛かってくるグレーターウルフを迎撃しつつ、隙を見せたら”吸収”で相手の力を吸い取る。

 そのたびに自分の力がどんどん強くなっていくのを感じる。

 体の中で純粋な魂のエネルギーが俺を強くしていく。

 今はグレーターウルフを迎撃するので精いっぱいだ。

 しかし、もっと強くなればそれ以上の事も出来るようになるだろう。


 「これで何体目だ…………?」


 もうすでに何体迎撃したかわからなくなっている。

 全滅してもおかしくない数を倒しているはずなのに、グレーターウルフ達は一向に減る気配を見せない。

 減っては増え、減っては増え、と俺の周りの気配は巨大なままで変わらない。


 「セイッ!」


 俺は飛び掛かってきたグレーターウルフを右手で払いのけた。

 絶命を確認してすかさず”吸収”。

 これで更にステータスは上がっていく。


 そして、俺がそのグレーターウルフを吸収し終えたとたん、飛び掛かってくるグレーターウルフがぱっといなくなった。

 そして、俺の方に歩み寄ってくるのはひと際大きな体を持つグレーターウルフ。

 そいつは俺を威嚇するように睨みつけてくる。


 『こいつが指揮官コマンダーじゃ! 倒さぬ限り侵攻ラッシュは終わらぬぞ!』


 俺がその言葉を聞いてコマンダーへとナイフを向けたとたん、コマンダーはとてつもない咆哮を放った。


 「グルオオオオオオオオオオ!!!」


 思わず俺は震えてしまった。

 明らかな格上。

 さっき戦った盗賊の男や、グレーターウルフとは格が違う。

 これが指揮官コマンダー

 侵攻ラッシュを指揮するリーダーにして一族の長。


 「か、解析」


 俺は目の前の巨大狼に向かって解析を発動する。


 ◇ステータス

 《グレーターウルフ・コマンダー》

 レベル:36

 攻撃力:204

 防御力:146

 俊敏性:287

 魔法力:69

 ◇スキル

 咆哮:レベル7 炎牙:レベル3

 威嚇:レベル20


 「な、なんだこのステータスは!」


 レベル36!

 ステータスはグレーターウルフの十倍以上、スキルレベルも高い!


 『ユウよ………… この指揮官コマンダー、相当の手練れじゃ』


 そんなのは分かってる!

 俺のレベルじゃあ倒せっこない、こんな魔物!


 『…………逃げるのじゃ。この魔物は自らの縄張りを出ては行かぬ。こいつらが今の被害から持ち直る前に、早く逃げるのじゃ!』


 くそ、逃げるしかないか! 


 『走れい、ユウ!』


 わかってる!

 

 俺は全力で逃げ始めた。

 町の方角へと、全力で。

 こんな強力な魔物は相手にしていられない。

 もっと強くなる必要がある。

 次の町で戦力を増強するのだ。

 そしてきっと、このグレーターウルフへと再び相まみえる時がくる。

 その時には、俺はこいつに勝たなくてはならない。


 俺の全力疾走は、ステータスの上昇の効果も合わさってすさまじい速さとなった。

 そのおかげで町へとたどり着くのには時間はそれほどかからなかった。

 そう、ファイリアの言う隣町、ガロブルドへとたどり着いたのだ。

ブックマーク、感想などをしていただけるとモチベーションが上がるので是非ともよろしくお願いします。

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