5.わたしの想い、みんなの想い、そしてセリカの想い
わたしたちが受けた説明によると、わたしたち6人は全員が完全な勇者の力を持っているわけではなく、6人全員の勇者の力を全部合わせてようやく1人前程度だ、とのことだった。
つまり、誰か一人に全員の勇者の力を渡して力をひとつにまとめないと、決して復活する魔王には勝てないということで、それは残りの5人は勇者の力を失う、ということを意味している。
「じゃあ、勇者の力を集めるのは一番勇者の力も強くて学年も一番上のセリカしかいないよ!」
私はそう提案した。
それは、わたしにだって迷いがなかったわけじゃない。
だって、わたしの勇者の力をセリカにあげちゃうってことは、わたし自身が消滅するってことだから。
だけど、わたしにはわかっていた。
あの泣き虫だったセリカは前世のわたしに憧れて、次の勇者になるためにこの6年間凄まじい努力をしてきたのだ。
その想いが分かるから、セリカの力をわたしに渡して欲しい、とはどうしても思えない。
わたしが消滅しちゃうとセリカを見守ることができなくなっちゃうからそれだけは心残りだけど、セリカの想いが叶うなら、それでもいいかなって本気で思う。
だけど6人の中でも一番年下で勇者の力も一番弱いわたしの意見には、他の子たちが次々に反対した。
「ふざけるな。俺意外全員女の『おままごと』なんかに付き合ってられるかよ。俺の勇者の力が欲しきゃ、力ずくでうばって見せろよ!」
そう言ったのは、3年生で唯一の男子のルイス君だった。
こういうこと言うと男キャラ全体の評価が下がるからやめてよ!って言いたかったけど、今のわたしは女の子だから別にいいか・・・。
それにルイス君のそのセリフ、ザコキャラのやられフラグだからね!
でも、ここでそのことを指摘するのは絶対ダメだ。
なんでかって言うと、それをするのはザコキャラよりもさらに弱い超ザコキャラの役割だからだ。
もしもそれをした場合、大抵はザコキャラにやられると言う一番カッコ悪い末路をたどる羽目になる。
「わたくしも、馴れ合いで勇者を決めるのには反対ですわ。だって、勇者に相応しいのは騎士の家柄のわたくししか考えられませんもの」
そう言ったのは5年生のエミュリさん。
この人のセリフもザコフラグだと思うんだけど、違うかなあ・・・。
「あたしも、お姉ちゃん以外に勇者の力をあげる気なんてないよ!」
これが2年生のマリアちゃん。
そして4年生のレミアちゃんは何も言わないけど、この子はほぼ、妹の発言を否定するなんてことはしない子だ。
もっとも、レミアちゃんは逆に自分の力をマリアちゃんにあげるつもりだったのかもしれないけど。
そして、最後にセリカがこう言った。
「そうだよね。大事なのは誰が勇者になるかじゃあなくて、どうするのが一番魔王に勝てる可能性が高いか、だから、ちゃんと実力勝負をして勝った子が勇者になるのが一番いいよね」
当のセリカにそんな風に言われたんじゃ、わたしとしてもこれ以上異論のとなえようがない。
こうしてわたしたちは、6人で勇者の座をかけたバトルをする羽目になってしまったのだ。
バトルをするのは明日。
そして、そのことは実は初めから決まっていたらしく、私たちには、ちゃんと泊まるための部屋も用意されていたのだった。