2.勇者の卵、大集合!
今のわたしの名前は『もも』っていうんだ。
これは、今のママがつけてくれた名前だよ。
今のママによると、オムツが取れたばかりでヨチヨチ歩きのわたしが立ちションをしようとしておしっこをするのに失敗したとか、そういうエピソードにはこと欠かないらしい。
まあ、2歳児や3歳児のそんな話は、ママにとってはただの笑い話にすぎないのだけれど。
ちなみにわたしには前世の記憶はあるけれど、3歳より小さな頃の記憶はない。
だから、立ちションしようとしたというのも当然覚えていないわけで・・・
でも、そんな話をママに聞くたびに、無意識に前世のくせが出てたんだろうって思ってたんだ。
ああっと、話がそれちゃった。
とにかく、わたしは早くセリカを見つけて、わずかに残った勇者の力で守ってあげないといけないんだ!
私は失った勇者の力をほんの少しだけでも補うために、ちっちゃい頃から男の子に混ざってチャンバラごっこに明け暮れた。
その中でわかったことは、わたしが痛みや怖さ、それに疲れに耐える能力は、ごく一般的なただの6歳女児並みだ、っていうことだった。
だから下がった能力分を猛烈な訓練と努力で乗り越える、なんて芸当も到底無理。
つまり、チートの要素は一切皆無ということだ。
同い年の男の子に泣かされたり、女の子には無理だと言われて悔しくてまた泣いたり、そんなことは日常茶飯事。
それでも何年も訓練している間に、最近はちょっとはマシになってきたかな?って気はしている。
もちろんまだまだなのはわかってるけどね。
王様から、新たな勇者募集のお触れが出されたのはちょうどそんな頃だった。
まだ先のことだけど、魔王に復活の兆しがあるというのだ。
わたしにはほんの少しだけど本物の勇者の力があるから、これは応募するしかない!
もちろん、今のわたしに魔王を倒せる力があるはずはないんだけど・・・。
でも、何年も先だったらなんとかなるかもしれないし、倒すんじゃなくて復活を阻止するんだったらもっと可能性は上がるかもしれない。
それに何より、わたしが勇者だっていう話が広まれば、セリカを探すのも楽になるかも知れないと思ったんだ。
募集に応じた者たちは皆、王宮の奥にある神殿に集められた。
ちなみに奉られているのはあの女神様だ。
たてまつっていいのかどうか、わたしとしては正直なやむところ。
応募した者たちの中にはめちゃくちゃ強そうでいかつい大人の男の人なんかもいて、もしもそんな人とこの場で戦ってみろ、なんて言われたらと思うと恐くてチビりそうだった(ホントは少しチビった)んだけど、幸い初日の検査は今の時点での実力を計るものではなく、偉そうな神官がおでこに手をかざして勇者の力があるかどうかを確認する、というものだった。
そして、合格したのはわたしを入れて全部で6人。
全員が小学生の子どもばかりで、1年生から6年生まできれいにひとりずつ。
大人が一人もいないのは、無垢なる魂でないと勇者にはなれないんだとかなんとか。
そして、その6人の中にはわたしが探していたセリカもいたのだった。
わたしはいっかい死んで生まれ直してるから、あれから6年たっている。
その間に、あのチビだったセリカは、わたしが憧れちゃうくらいに立派な女の子に成長していたんだ。