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1.プロローグ

 魔王はちゃんと倒した。


 世界もちゃんと救った。


 俺の唯一の連れであるチビのセリカはオシッコ漏らして泣いてたけど、ちゃんと俺が魔法でガードしてたから怪我のひとつもないはずだ。


 なのに、俺は死んでいた。


 くそう!納得いかねえ!


 魔王の反撃なんかほとんど受けてないはずなのに、なんでだよ!


 けど、『俺の死』は勇者の力を持ってしても抗うことのできないものだった。


 なぜなら、それにはこの世界の女神様の力が絡んでいたからだ・・・。



「ありがとう。勇者○○よ。あなたのおかげで世界は救われました」


 満面の笑顔でお決まりのセリフをのたまったのはこの世界の女神様だ。


 確かに神々しいくらいに美人だし、衣装も何で出来ているのかわからないほど綺麗だが、なんというか、尊厳を感じない。


 まあ、俺がコイツに対して持っている印象が最悪だっていうのが主な理由なんだけど。


「で、世界を救った勇者の俺が、なんで女神のあんたに殺されなきゃならなかったんだ!?」


 そう。


 魔王を倒し、世界を救った俺を殺したのは他ならぬコイツなのだ。


「あなたはこの世界で見事使命を果たしました。でも、勇者が救わなければならない世界はこの世界だけではないのです。あなたはこの世界では死んだ事になりましたが、また新たな世界に転生してそちらの世界を救ってもらいます」


 ・・・当たり前みたいに言いやがった!


「ふざけるな!そんな理由で俺を殺すな!俺が死んだら身寄りのないチビのセリカはどうなる?だいたい、他の世界がどうなろうが俺の知ったことじゃねえ!」


 俺は一気にまくし立てた。


 多分、この女神に悪意なんかはないんだろう。


 ただ、人間とあまりにも感覚が違いすぎるだけだ。


 つまり、『人間一人の命より世界の価値の方が重い』って簡単に考えてやがるんだ。


 女神は、ちょっと首をかしげて、それからポンと手を叩いた。


「ああ、あなたは前の転生の時のことを覚えていないんでしたね」


 女神が語った『前の転生』の時のはなしと言うのは、こんな感じだった。


 ある世界で人生を終えた俺は数多の死者のうちの一人に過ぎなかった。


 その時俺の魂は転生が不可能なほどにダメージを受けていて、本来はそのまま消滅するはずだった。


 しかし、俺の能力を見込んだ女神は勇者の力を与える事によって俺を助けた。


 条件はその女神が管轄する2つの世界を救う事で、その条件に俺も同意している、というのだ。


「つまり、もう1つの世界を救うまでの間、あなたの勇者の力は貸し与えているに過ぎません。もしもそれを拒否すると言うのなら、その勇者の力は返してもらわないとなりません。でも、勇者の力なしにはあなたの魂は生きられないのです・・・」


 くそっ!八方塞がりかよ!


「とにかく俺は、他の世界なんか救うつもりはねえ!勇者の力なんかいらねえから、なんとか生きたまま元の世界に戻してくれ!」


 状況的には最悪だ。


 女神の采配次第では、俺はこのまま消滅して終わり。


 なにしろ俺には一切、交渉の材料がないのだ。


 もはや、この女神様が温情ある判断をしてくれるのを祈るのみ。


 ・・・ていうか、この場合、何に祈ればいいのかもよくわからないな。


「うーん・・困りましたねえ・・・あなたがやってくれないのであれば、あなたの勇者の力は世界を救ってくれる別の誰かに与えなければなりません。でもあなたはひとつの世界を救った功労者でもある・・・では、あなたにはほんの少しだけ力を残しておきましょう。でも、あちらの世界を救ってくれる方には少しでも多くの力を与える必要があるので、あなたに残せる力は生きていくのに最低限の力だけです。そして、ほんの少しの力で生きて行くために、あなたは・・・」


 その先は、もう聞こえなかった。


 でも、なんとか消滅という最悪の事態だけは避けられたらしいことはわかった。


 元の世界に転生できるならなんでもいい。


 転生したら一刻も早くセリカを見つけて守ってやるんだ!


 そんなわけで、俺は無事に元の世界へ転生することができたのだった。


 ・・・女児として。


 男の方がパワーはあるけどそのぶん燃費が悪く、最低限の勇者の力で生き残るには女児である必要があった、ということらしい。


 最初は戸惑ったこともたくさんあったけど、女児として6年も生きてきたから、もうだいたいのことは慣れちゃったよ。


 ・・・っていうわけで、次のおはなしからは女の子言葉でいくからね!


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