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17 女の子の買い物

 スーパーの中にも可哀想な生ける屍がいた。

 高瀬はやはりゾンビが怖いようだ。


「大丈夫か?」

「うん」


 足が震えている。

 きっと恐ろしい目にあったんだろう。

 そうだ。


「かなり荒らされてるけどさ。まだまだ商品は残ってる。高瀬も欲しいものとかなにかあるんじゃないか」

「え? どういうこと?」

「ゾンビよけの俺を使えば自由に買い物できるぜ。せっかくだろ?」

「い、いいの?」

「もちろん」


 高瀬の顔が、ぱぁっと明るくなる。

 初音とは一緒にコンビニやスーパーへ買い物に行くけど、初音も俺もゾンビフリーだ。高瀬にとっての自由に買い物できるありがたさとは訳が違うだろう。


「で、でもちょっと恥ずかしいな。女の子が買うようなものもあるし」

「あ、あぁ~」

「とりあえず今は妹さんが先かな」

「い、いや。それならさ。ここにタオルがあるから、これで目隠しするよ」

「ほ、ほんと?」

「ああ、でも絶対俺の手を離すなよ」


 それでゾンビになっちまった子もいるからな……。

 一人の女の子の事を思い浮かべながら、タオルで目を覆った。


「う、うん」


 緊張の裏に確かな嬉しさが混じった声だった。


「あっちも」

「はいはい」

「こっちも」

「はいはい」

「そっちも」

「へいへい」


 スポーツ少女かと思ったけど、高瀬はちゃんと女の子だった。

欲しいものが結構あったようだ。


「アキラくん。もういいよ」

「長かったな」

「ごめんね」

「あ、いや、いいんだけど」


 目隠しのタオルを外す。

 高瀬の顔が目の前にあった。


「どう?」

「どうって? 良い物手に入ったか?」

「そうじゃなくて」


 眉を八の字に曲げている。

 意味がわからない俺に不満を示しているのだろうか。しかしサッパリわからない。ん? 高瀬の唇がなんかテカテカしてるぞ。


「あ、脂の乗った美味いものでも食った?」

「ないよっ!」


 なぜか高瀬は機嫌が悪くなった。

 無言で食料と飲料を集める。

 そして二人で女子中に向かった。


「清田くんが帰ってきてたら良かったのに」

「なんだよそれ」

「だって清田くん凄い職業貰ったんでしょ。ゾンビなんかすぐにやっつけてくれるよ」

「10や20ならな。いや100や200いけるかもな」

「ほら」

「はいはい。清田清田」

「ふふ。ねたまないで」


 高瀬がちょっと笑った後に少し小さな声で言った。


「天海さんのことは残念だったね」


 初音のことか。異世界にいると伝えている。ゾンビになった事は言ってないのに。

「まあ初音は異世界で元気にやってるだろうし」

「うん。でも……アキラくんは」

「俺がどうしたの?」

「ううん。なんでもない」


 なんだろうか。高瀬にしては歯切れが悪い。


「ねえ……」

「うん?」

「あの……妹さんとかの安全が確保できて少し落ち着いたらアキラくん、一緒に私の家に来てくれない?」


 なるほど。必要なものや思い出の品もあるだろう。

 家族のことも心配なのかもしれない。

 ただ、初音の例もある。


「家族のことは……覚悟は決めないとダメだけどいいか?」

「う、うん。それでも、アキラくんと行ってみたいの」

「そうか……」

「もし、お父さんとお母さんがゾンビになっていても……アキラくんを見せたいし」

「えええ?」


 俺は高瀬のお父さんとお母さんがゾンビになってて、彼女が悲しむ姿なんか見たくないんだが。


「お願い……」


 気は滅入るがそこまで懇願されると承諾するしか無い。


「わ、わかったよ」

「ホント? ありがとー」


 初音のおじさんの時なんか俺、性格が変わるほどだったんだぞ。


「なんで嬉しそうなんだよ。お父さんとお母さんがゾンビになってるの確認したって」

「だって普通に考えてもう無理だよ。ならアキラくんを見せるだけでも」

「俺を見せてどうする?」

「あ、アキラくん、そろそろ学校だよ」


 気がつくと中学校についていた。

 まあいい、約束は約束だ。

 それに高瀬はこうやって妹の救出作戦に付き合ってくれるのだ。

 頼みの一つや二つ聞いてもバチは当たらないだろう。

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