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14 ギャルと問題児

感想全部読んでいますが、全てに返信できなくてすいません。

ゆっくり帰していきたいと思っております。

 シャッターがガラガラと下から上がっていく。

 三人の少女と一人の男が、足首から段々と見えてきた。

 メガネ女子で優等生の伊藤、スポーツ女子の高瀬、ギャルの中川という女生徒、そして原田という男子だ。

 原田は世界がゾンビだらけになる前は悪い奴じゃなかった印象だけど、今は気をつけないといけない

 シャッターが僕の背の高さまで上がった。


「遅いよ。死んじゃったかと思った」

「心配したよ」


 伊藤、高瀬が口々に言う。


「いやーすまん! 色々あってなかなか来れなくてさ」


 実際は一日半しか経ってないが、待っているだけの皆からしたらそう思ってしまうだろう。

 初音と住んでいることなんか知らないだろうし。


「また色んなもん持ってき……ぐはっ!」


 ギャルの敦子からいきなりタックルを食らう。


「いてててっ。なにすんだよ!」

「ふんっ!」


 敦子教室に走り去っていった。

 あいつは我儘でいつもこうだ。

 伊藤、高瀬が笑っている。

 原田が鋭い声を出した。


「ところでなにを持ってきたんだよ」

「ああ、教室で広げよう。机と椅子もあるし、敦子もいるしな」


 高瀬が俺を突いてニヤニヤしていた。


「敦子、喜ぶよ。それ」

「喜ぶ? あぁ、結構良いもん持ってきたぜ」

「そうじゃないって」

「え?」

「もう。なんでもない」


 意味がわからん。

 ともかくシャッターを閉めて教室に入る。


「くんなしっ!」

「なんだよ」

「無視していいよ」


 高瀬の言う通り敦子を無視し、学習机を4つ並べてテーブル風にした。

 その上に食料を広げる。


「お菓子と缶詰、そして……米とインスタント味噌汁!」


 原田がイライラした声を出す。


「お湯がなけりゃ食えないだろうが!」

「カセットコンロも鍋も綺麗な水も持ってきた。小さなタオルもたくさんな」


 伊藤がキャップのところを指差す。


「その飲料水のペットボトル一度開いてるみたいだけど大丈夫?」

「ああ、これは初……いや俺が見つけた防災用の井戸水を詰め替えたんだ」

「あ~公園とかで見たことあるわね」

「そうそう。それ」


 原田が目を白黒させている。


「米と味噌汁が食えんのか?」

「それで鯖缶を食ったら最高だぞ」

「おお、頼む早く作ってくれ!」


 イライラしどおしの原田も嬉しかったようだ。

 敦子が聞いた。


「なんで小さなタオル?」

「あ。いや、おまえら風呂は入れてないだろ? とりあえずお湯で体拭いたらどうだ?」

「は、入ってるし!」


 ええ? 入れてたのか。意外だ。どうやっていたんだろう。


「そうなのか?」

「いや……それは……でも……臭くないもん」

「え? 声が小さすぎてわからん。どうやって?」


 敦子がキッと俺を睨んでくる。


「な、なんで?」

「はいはいはいーーー」


 高瀬が割って入ってきた。


「あー嬉しいなあ。お風呂も入ってたけど体拭きたかったところなの。じゃあ私達この教室で体拭きたいから。アキラくんと原田は隣の教室で待っててよ」

「あ、ああ」

「はあ? なんでだよ。メシを先に食おうぜ」


 原田が文句を言ったが、俺は原田の肩を持って隣の教室に向かった。

 二人で待つ。

 時折楽しげな三人の声が隣の教室から聞こえてくる。

 だが、こちらは無言だった。

 クラスメートとしては普通に話すぐらいはする間柄だったが、俺は今こいつのことをちょっと要注意だと思っている。


「なあ。ネクロマンサーってなんだ。どうしてゾンビに襲われない?」

「ああ、そうだな。それも話さないとな。皆に一緒に話す」

「俺もネクロマンサーになれないのか?」


 なるほど。それは盲点だったな。ネクロマンサーが二人いれば色々出来ることは増えそうだ。しかし……。


「無理だ」


 そもそもネクロマンサーが適正職業でないといけない。異世界においても極めてレアな職業だ。しかも死霊術を使うには魔法契約の儀をしないといけない。

 地球では少なくともロストテクノロジーだ。

 つまり地球において死霊術を使える人間は俺だけ。賢者としてゾンビに特攻効果のある神聖魔法を使いうるのは初音ただ一人だ。

 ただゾンビ化した人間が魔法を使った記録は異世界にも無かったと聞く。

 精神集中が必要だからだ。超初期ゾンビの初音なら出来るかどうかも知れないが、正直分からない。


「ホントか? お前だけが得してるんじゃないだろうな?」

「得してる?」

「お前だけ好きなだけ物資を得られるから死ぬこともないし、女共にそれを配れればモノにも出来るだろうが」

「はあ?」

「まあ聞けよ。俺もお前には逆らわない。一緒にいい目みようぜ」


 こいつやっぱりヤバイ奴だな。

 まだなにか色々話しかけてきたが、全て聞き流した。

 それから大分経って三人がやって来た。

 どうやら体操着のジャージに着替えたようだ。


「おお、皆サッパリしたみたいだな? ご飯を食べようぜ。うん?」


 敦子だけは下が短パンだった。

 まだ春になったばかりだ。寒くないんだろうか?


「な、なによ?」

「いや別に」


 まあ見たくないかと言えば見たい。

 高瀬がまたニヤニヤと笑っていた。

 伊藤が手を上下に振った。


「ともかく白いお米のご飯作ろうよ!」


 原田がそれに賛成した。


「そうしようぜ」


◆◆◆


 皆で白いご飯を食べる。


「ううう。美味しいアキラくん。本当にありがとう」


 伊藤が本当に鳴いて感謝した。


「泣くなよ」

「うううん。本当に命の恩人だよ……」


 敦子が向こうを向いていった。


「ま、まあ。確かにアキラにしちゃよくやってるし……ありがとう」


 敦子の声はまだ語尾が小さかったが、今度は聞き取ることが出来た。

 高瀬も感謝をした。


「そんなことよりよ。ネクロマンサーってなんなんだよ。さっき皆に話すって言っただろ」


 原田がそう言うと敦子が怒った。


「なんでお前、こんなにも色々やってくれているアキラに偉そうなんだよっ!」

「い、いや。すまん」

「ざけんなっ」


 敦子も俺にしちゃよくやってるとかさっき言っていたような……。

 でも他の二人も原田には敵愾心を持っているようだ。

 そんな目で見ている。


「ま、まあ。ネクロマンサーについて話すよ。実際に死霊術を見せるよ」

「え? 見せてくれるの?」


 四人が同時に驚く。


「死霊術でとりあえず図書室と購買部を回復させよう!」

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