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11 ヒャッハーと勘違いされる

試しにタイトル変えてみました。

 妹の結衣の通う学校は私立の女子中で、俺が通う高校の先にあった。

 最初は自転車で向かっていたが、道路は事故を起こした車だらけで、高校に付く前に乗り捨てざるを得なかったので走っている。

 途中、高校でクラスメイトに食料を分けたからリュックサックはかなり軽くなっている。

 しかし、普段運動していないにも関わらず走ったためか、脇腹がかなり痛い。


「清田ならこれぐらいの距離は楽に走るんだろうが……今は俺が走るしかない」


 学校は意外にも細かく隔壁を作るのに有利なことがわかった。

 結衣が生きている可能性もある。

 ただ、食料確保が難しいのだ。実際、高校のクラスメートは弁当の残り等でしのいでいたようで、衰弱して動けなくなる寸前だった。


「急ごう」


 妹が通っている女子中に着いた。

 女子中だからか校庭の柵の上にネットも貼ってあり、外界との遮断性はかなり高いと思っていたのだが、残念ながら校庭には制服を来たかなりの数の女の子のゾンビが歩いていた。


「くそっ」


 鉄製のスライド式門扉を登る。

 校舎内の遮蔽性に祈るしか無い。


「ん? わっ」


 なにやら黒いものをがとんできた

なんだろうと思って見ると、石だった。

 見上げると校舎の屋上に人がいた。

 やった。生きている人だ。しかも何人もいるようだ。


「お、おい! 俺は生きている人間だ! ゾンビじゃない! 食料を持ってきたんだっ!」

「来るなっ」

「来ないでっ」

「帰れっ」


 女の子の声が聞こえた。

 来るなって言われても。


「た、助けに来たんだぞ!」

「いらないっ来るなっ! というかお前はなんでゾンビに襲われないんだっ!」

「異世界帰りにネクロマンサーだからだっ!」


 無数の石が飛んでくる。


「わわわっ」

「意味分からないっ」

「来るなっ」

「来ないでっ」

「帰れっ」


 異世界帰りのネクロマンサーなんて言えば、そりゃそうか。

 しかし、食料を持ってきたと言ったのにどういうことだろう? 叫んでいる少女達は声からして衰弱していると思う。

 食料不足で衰弱してるだろうにどういうことだろう?

 走って強引に校舎の中に入ることもできそうだが、叫ぶことにした。


「鈴木結衣はいないのかー? 俺は鈴木結衣の兄だ!」


 屋上の影がなにやら揉めていた。

 風にのってダメとかお願いとか聞こえてくる。


「おにぃ!」


 妹の声だ!


「生きてたのか結衣っ!」


 姿は見えないけど妹の声が聞える。

 無事であったことは本当に嬉しいけど、やっと声を出している気がする。


「食料持ってきた! 届けに行くっ」


 ところが。

 また石が飛んで来た。


「来るなっ」


 別の女子学生だ。


「どうして?」

「来るなっ! 男はいれないっ!」


 そういうことか。

 今ので俺に来るなと言ったことのおおよその予想は着いた。


「そうは言っても食料がいるんじゃないのかっ?」

「いらないっいらないっ」


 また石が飛んで来た。

 くそっ。よっぽどのことがあったんだろう。


「わかった! それじゃあ食料だけ届けたい!」


 やはり、しばらく屋上でなにやら揉める声が聞こえてくる。


「食料だけそこに置いていって」


 よし、話に乗ってきた。


「ゾンビだらけのなか、被害を出さずに食料を回収できるのか?」

「うるさいっ来るなっ」


 また石が飛んできたが、明らかに当てる気のない距離に落ちた。


「わかった。じゃあロープはないか? 屋上のフェンスにロープの端を括り付けて下ろしてくれ。食料の入ったリュックを結びつけるから引き上げろっっ!」」


 また屋上から揉める声が聞こえてくる。

 だが今度は全然返答がない。


「お、おにぃ~っ! ロープなんてないよ……」


 結衣の泣きそうな声が聞える。

 くそ。無いか。


「わかった。わかった。じゃあロープを持ってくる。それまで待ってろ」


 近くにホームセンターがあったはずだ。


◆◆◆


 ホームセンターでナイロンロープを買って校舎に戻ってきた。

 また来るなと言われたが、今度は前回ほどではなかった。


「ロープの先に石を結んで屋上に投げるから、石に当たらないように気をつけてくれ~なるべく俺から見て右のほうに投げ入れる!」


 返事はない。


「そっちからも石を投げないでくれ」


 やはり返事はないが、校舎に近づいても石は飛んでこなくなった。


「今から投げるぞ!」


 力いっぱい屋上に届くように石を投げた。

 ダメだ。届かない。

 石が大きすぎて重かったのだ。

 適度な大きさの石を見つけるが、あと一歩でダメだった。

 汗がでる。


「頑張って!」


 応援された? 結衣の声でもなかった。

 声の数から屋上の女の子の人数はかなり多いようだ。

 ひょっとして派閥、いやそこまでいかなくてグループが複数あって助けを求めたいグループと、俺を拒否するグループで意見が割れてるのかもしれない。

 ならば、この食料を送り届けることに成功すれば、助けを求めたいグループの意見も強くなるだろう。

 絶対にロープを上に投げ入れる。

 そうだ! 少しイメージが悪いが!

 俺は石では無くロープを持って先に着いた石を遠心力でグルングルンと回す。


「世紀末のヒャッハーみたいでイメージが悪いが、届けよ……うおおおおおお!」


 ロープを結んだ石は吸い込まれるように虚空に登っていき屋上の端ギリギリに落ちた。


「いよっし!」


 屋上からも歓声があがる。


「ロープの片端を下ろしてくれ!」


 中々下ろしてくれないんじゃないかと思ったが、すぐにするすると落ちてきた。

 ロープをリュックに結びつける。


「よーし! あげてくれ!」


 食料の入ったリュックがすぐに上がっていき屋上に消えた。

 ざわめきと複数の女の子からの感謝が聞こえた。


「ありがとうっ」


 疲れて校庭に座り込んだ。

 ふ~。とりあえずこれで回復してくれるだろうし、段々と信用も得られるだろう。

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