第三話 禁断の果実
♦︎再びダンジョン十階
俺らは再びダンジョン十階に戻った訳だが……。
「あれっ? さっきまで火があちこちに広がってた筈なのに元通りになってる⁉︎」
「そのようだな。まぁ、そっちの方が好都合だけどなんかスゲーな」
「十階に戻ったのはいいけど、問題は十一階へと続く階段が見つからないってことよね」
「どこかにあるはず……なんだけどなかなか見つからない。早く見つけないと…」
もしかしてあれは……階段⁉︎
やっと見つけた!
十階の階段からこんなにすぐ近くにあったなんて‼︎
俺らってほんと馬鹿だな。
あれだけ歩く必要もなかったわけだ。
でも、厄介だなぁ。ここの階は九階までとは違って次の階の階段までは一本道じゃないから。こんなジャングルみたいな階段見つけにくい場所なんて嫌だ。
唯一ここのいい所って言えば食べ物があるってことぐらいだな。あからさまに毒がありそうな物ばっかりだが。そうなってくるといい所とは言えなさそう。
まぁ、リリアと出会えただけいいか。こんな可愛くて強い人と一緒なんて俺は勝ち組だ〜。
♦︎ダンジョン十一階
やっぱり景色は同じなんだな。
「さっきの景色と変わらないし、いちいち同じ景色見るの飽きるから、一気にこのダンジョンの最上階まで行けちゃう便利な魔法とか知らない?」
「そんなの知ってるワケないでしょ! もし、知っていたとしたらとっくに使ってるわよ。それに、私が今の時点で使える魔法は炎に関連性のあるものだけ。それだけは分かっておきなさい」
「分かったよ」
この人はいわゆるツンデレのツンが多いな。可愛いけど、ずっとツンツンしてるのはなんか嫌だ。デレがあるからこそツンデレには需要があると俺は思う。
まぁ、こんなメンドくさいダンジョンは嫌だけどリリアと一緒にいるだけマシか。こんな美少女と一緒にいるだけでなんだかんだ幸せだし。
「ガタン、ガタン」
何か不気味な音が後ろから聞こえる。物凄く後ろの正体が気になる。
「リリア、さっきから何か聞こえない?」
「たしかに…聞こえるけど……」
リリアは後ろを振り返った。
「う、後ろに……何か…いるよ」
俺は後ろを振り向いた。すると、そこには……。
「あぁぁぁぁぁぁ、死神だぁぁぁぁぁぁ」
そう、後ろにいたのはマントを羽織い、手に鎌を持つスケルトン。すなわち、死神が……居たのだ…。
「イヤァァァぁぁぁ、殺さないでくれ〜〜」
「ボンッ」
リリアが死神に火を放った。
「ギャァァァぁぁぁぁぁぁ」
死神が勢い良く燃え出し、叫び出した。
そして…暴れ始めた。というより踊り出したって言った方がいいかもしれない。そんな感じの暴れ方だ。
「このモンスターって十一階にもいたのと同じ?」
「そのようね。このモンスターは死神って言うより布を羽織って鎌を持っているだけのスケルトンね。普通のスケルトンとなんら大差はなさそう」
すると、さっきまで心臓がバクバクなっていたのが落ち着いた。
「なら、放置で」
このようにして再び燃え盛るスケルトンを放置状態にして、その場から離れた。
その後、俺らはスケルトンを倒しながら順調に進んでいったが、問題が起こったのは十三階だった。
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♦︎ダンジョン十三階
「あ〜、お腹空いた〜。そこら辺の木にぶら下がってる赤い果物食べても大丈夫だと思う?」
「知らないわよ、そんなの」
「ちょっと林檎っぽいし、食べてみる。木によじ登るからちょっと待って」
俺は木によじ登って赤い果物を一つ手に取って一口かじってみた。
あっ、しまった!
「辛い、辛い、辛い、辛い、辛い! とてつもなく辛いけど何か急に力がみなぎってきたー。ウォーーー」
「何勝手に変なテンションになってるのよ!」
「リリアも一口食べたら分かる。ほらっ、キャッチして!」
リリアは危うく落としそうだったが、なんとか受け止めた。
「これ、本当に食べても大丈夫なの?」
「もちろん。俺が保証する」
リリアも一口かじった。
「あんたの言う通りね。なんか力がどんどんみなぎってテンション上がってきちゃったわ。今ならどこまでも突き進めそうな気分♪」
「じゃあ、どんどん突き進もう!」
そう言って五メートルもある木から飛び降りた。
痛っ、けど大丈夫!
これぞ、覚醒。覚醒しちゃってるよ、俺。
そんな感じで十五階まで止まることなく突き進んだ。
その為、その後の疲労感がとてつもないものだった。
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♦︎ダンジョン十五階
「ダメだ〜。もう疲れ過ぎて動けそうにない」
「私も疲れたし、これはあんたのせいよ。それに喉乾いたんだけど」
「ごめん、俺が悪かった。次は気をつけるよ。で、喉乾いたんだよな? なら、あの黄色い果物食べてみる? スイカ並みに汁含んでそうで良さそうだし、一気に喉潤うにはいいんじゃない?」
「ここの食べ物って全て何か変な効果が付いていそうで嫌なの。ほらっ、さっき食べた果物は辛いし、無駄にテンション上がる効果あったじゃない? とにかく私はああいうの嫌だし、あんたが食べたら?」
「なら、食べてみる。美味しそうだし」
俺は木に登り、黄色い果物を手に取り、パクっと一口かじってみた。
すると、口の中には味わったことのないぐらいの旨味が広がった。美味しすぎて涙でてきそう。っていうより、もう涙でてきた。これは、言葉では表現できないぐらい美味しい。是非、リリアにも食べてもらいたい。
「何泣いてるのよ? 私が何かしたの?」
「ううん、何も。ただ、これが美味しすぎて……」
「涙出るほど美味しいの? そんな人初めて見たわよ。それ程までに美味しいってことなんでしょ。でもさっきは変な果物渡したじゃない。あんたのことは信用できないの」
あれを根に持ってるのかよ。
「今度は大丈夫だから。安心して食べてみて。ほらっ」
そう言って果物を渡した。
今度こそリリアは上手くキャッチ出来た。
「今回も何か変な果物だったら承知しないわよ」
リリアも恐る恐る一口かじった。
「あんたの言う通り美味しくて涙出てきそう……なの。これなら食べても安心ね」
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その後、俺達は腹一杯になるまで食べて、食べて、食べまくった。そのせいで動けなり、少し休憩することになった。
「なぁ、食べ終わってから随分経ったけど涙が止まる気配がない」
「私もさっきからずっと涙が止まらなくなったんだけど……。さっき食べた果物って汁いっぱい含んでたんでしょ?でも喉乾いたの」
「俺も喉乾いた。このままだと涙が止まらなくなって、脱水症状になりそう…。どうする?近くには川なんてないし。って、おい! リリア! 大丈夫か⁉︎」
リリアが倒れた。
俺はリリアの肩を揺らすと、リリアは目を開けた。
「なんでもないの。……大丈夫……だから…」
そう言い終わると、目を閉じた。
「リリア! リリア! しっかりしろ‼︎」
何度呼びかけても目覚めることはなかった。
「リリ……ア」
ついには俺も身体の限界を感じ、倒れた。
結果、二人とも美味し過ぎる果物が原因で涙が止まらなくなり、脱水症状を引き起こした。程なくして、脱水症状が原因で二人とも帰らぬ人となりました。こうして、この物語は幕を閉じたのでした。パチパチパチ!
*************完**********
っていうのは嘘です。(笑)テヘペロッ★
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(本編)
その後、俺達は腹一杯にはならない程度食べたが、長い間涙が止まらなかった。 そして、涙が止まったのは随分時間が経ったあとだった。
「……やっと涙が止まった」
「ほらっ、これもあの果物に変な効果あったからでしょ。もうあんたは信用できない」
「ちょっと待って。食べ過ぎたから涙が止まらなくなったんじゃない? なら、次食べるときには一つや二つぐらいでいいと思う」
「そうかもね。でも、極力食べたくないわ」
「それは俺も同意見。まぁ、空腹も喉の渇きもないから、しばらくは安心か」
「そうね」
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♦︎ダンジョン十九階
「そろそろ次の階への階段がありそうだわ」
「その前に、言っておきたいことがあって…」
「何?」
「今更だけど、何かリュックみたいなやつ作っておかない?その方が後々便利になりそうだし」
「どうやって作るの?」
「そりゃあ、葉っぱで作る! 作り方自体は簡単で、まず、大きな葉っぱを見つける。
そして、その葉っぱをUの字にして、両サイドをそこら辺の葉っぱの茎を糸の代わりに使って縫っていく。最後に、肩の部分を作って完成。っていう流れ」
「あんた、たまには役立つじゃん!」
「ただし、葉っぱは丈夫なやつじゃなけりゃあ、すぐ破れて使い物にならなくなる。丈夫な葉っぱさえ見つかれば、問題解決ってとこかな」
そんなことを言ってると、なかなか丈夫そうな葉っぱを見つけた。
「リリア、ちょうどあったぞ! こんな感じのやつだ」
「何それ、他のやつと変わらないじゃない?」
「いいや、違うよ」
「まぁ、いいわ。とりあえずそれがあればいいのね?」
「そうだ。主要となる材料があればいいから。残るは茎のみだけど、ぶっちゃけ茎なんてほぼ一緒だしそこら辺のやつでいいよ」
「分かったわ」
それから程なくして俺らは葉っぱのリュックを作り終えた。
「で、さっきの続きだが、リュックの中に入れたかったのはアレだ」
「アレ?」
「あったじゃん。食べると涙がでてくる果物! アレを次の階へ行く前にいくつか取っておかない?」
「でも、私は食べたくないのよ」
「それは分かってる。一応持っておくだけだ」
「じゃあ、あんたのリュックに入れておきなさい。私は、今の所何も入れないつもりよ」
「なら、ちょっとだけ待っとけ」
俺は再び木に登り、例の果物をいくつか取り、葉っぱのリュックに入れた。
「準備完了。さっさと進もう!」
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「ねぇ、さっきから足音が聴こえるの。あんたも聞こえない?」
「そうか? 俺には聞こえないけど」
「たしかに足音が……足音の正体は……」
突如、俺達の前にデカいモンスターが現れた。
「ケンタウロスやん!」
「ミノタウロスだって!」
リリアからまさかのツッコミ⁉︎
「ごめん、間違えた。咄嗟に出てきたのがケンタウロスで……」
「明らかに違うでしょ?」
「そうだけど……」
「そんなこと今はどうでもいいの。どうやって倒すのかだけを考えれば……」
「おい! こっちに突進してくるぞ!」
リリアは咄嗟に炎を放った。
見事、炎はミノタウロスの目に命中した。
「グワァァァァァ、ァァァぁぁぁ!」
ミノタウロスは目を抑え、少し悶えた。
「やった〜! 効いたわね。だって『目があぁぁぁ、目があぁぁぁぁぁぁぁ』って言ってるんだもの。そうに違いないわ」
すぐ、ミノタウロスが目から手を退け、こっちを睨んできた。
「そうには見えないけど……」
嬉しそうなリリアとは裏腹にミノタウルスが元気をとり戻しつつある。
「今が逃げるチャンスなの。だから急いで逃げて! だってほ……ら……って全然効いてないじゃない⁉︎
なら、アレを試すときが来たわね。ちょうど後ろに大木があるし」
そう言うと、目を閉じた。
「分身!」
突然、リリアの分身がリリアのすぐ隣にできた。けど、リリアの形をしている炎ができただけで、とても分身と言えるようなものではない。
俺はリリアに手を引っ張っられて草むらに隠れ、
ミノタウロスはそのまま大木に突進した。
「あははっ、あはははははは!本当に突っ込んでるし〜」
「リリア?」
こんなに笑ってるリリアは初めてだ。なんか新鮮。
「ごめん、ちょっと待って。あはははははっ、あはは。本当に成功するなんて…。あははっ」
「ちょっと笑い過ぎじゃない?」
「だって、面白過ぎて……あはははは!」
「笑ってる場合じゃ……」
「ドン!」
一瞬、地面が大きく揺れた。
その揺れは、ミノタウロスのツノが大木に突き刺さったまま持ち上げたことによって引き起こされたものだ。つまり、ツノで大木を持ち上げている状態なのだ。
「ちょっと、えっ⁉︎、本当に? ミノタウルスが……」
「いくらなんでも強すぎだろ!」
ミノタウロスがこっちに向かって突進しようとしている。
「ちょっと、そのまま突進してくんの? アホなの? 突進してきたとしてもここまでは来れないわよ。ここにはたくさん木が生えてるし」
「もしかしてだけど、あれだけ力があれば突進してきたら周囲の木々をなぎ倒してくるんじゃね?」
まさしくその通りだった。 勢い良く突進してくるミノタウロスは木々をなぎ倒していった。
「どんどん木々をなぎ倒しちゃってるよ?」
「突っ立ってどうする?今こそ逃げるチャンスだ! ほらっ! 木が多くて見えなかったけどあっちに階段がある。あそこまで行けば安心できるから行くぞ!」
「ちょっと待って! リュックから果物がいくつか落ちたわ」
「今はほっとけ! じゃなけりゃあ、命が危ないぞ!」
俺は松明を捨て、リリアの手を掴み、階段を目指し、走った。が、それでもミノタウロスが背後から迫ってきていた。
あと何かをすれば振り切れる。でもその何かが閃かない。
あっ、そうだ!
「リリア、ツノに刺さってる木を燃やせないか?」
「あの木を燃やせばいいのね? 了解!」
リリアは何度も木に炎を放った。
「えいっ! えいっ! えいっ!」
ツノに刺さってる木が燃えたが、ミノタウルスが怯む様子は全くなかった。
「なんの意味もなかったわよ! どうしてくれんの?」
「いや、煙が充満してるだろ? それで十分だ」
そのときだった…。
「ドスン!」
また、地面が揺れた。
「何が起こった?」
思わず後ろを見ると、ミノタウルスが倒れていた。
「あんたの考えは成功したようね。そこまで考えるとか、あんたやるじゃん!」
「なんの話だ?」
「何ってあんたが考えたんでしょ。窒息死させるってのを」
「窒息死?」
「そう、状況から察するにミノタウルスは死んでいて、死因が窒息死っぽいの。あの煙の量を吸ったら当たり前だけど。もしかして、深く考えずに命令したの?」
「そりゃあ、そうだろ。あんな短時間でどうやったらそんな考えが閃くんだ?」
「もう、いいわ。そんなことより次の階へ向けて気持ちを切り替えましょう」
「おーー」
「なんなの? そのやる気のない声は」
「いや、なんとなく流れで言ってみただけなんだけど」
ってな感じで色々なことがあったが、どうにか俺らは助かったようだった。
とりあえず今まで投稿したものを一度全て改稿してみました。けど、安心して下さい。世界観は変わってませんので。