表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/23

きょうふのみそしる

 ある夜、高田の人はとある古い洋館の中を彷徨っていた。

 玄関の扉は開かず、窓ガラスを破る訳にもいかなかった。……物凄く、高価っぽいから。

 そもそも、すでに不法侵入の空き巣としてピーポ君が登場してもおかしくない、それこそ恐怖であった。


 そんなおっかなビックリの高田の人が、書斎の机の上に置かれた一冊のノートを手に取った。


 黒塗りのノートに、赤い文字で一面に。

 死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。


 パラリとページをめくれば次の言葉。

 殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。


 さらにもう一枚、めくってみれば言葉が続く。

 呪い。呪い。呪い。呪い。呪い。呪い。呪い。呪い。呪い。呪い。呪い。呪い。


 さぁ、もう一枚、めくってみよう。このノートはめくられることを待っている。

 今、お前の後ろに居るぞ。


 高田の人は考えた。このノートの著者は……エンターテナーだと。

 まず真っ白なページでは裏写りしてネタバレでガックリ。そこで一度、真っ黒に染め上げたのだ。

 その上で、血を思わせる赤を選ぶその配慮。まさしくエンターテナーなのではないだろうか?

 書いてある言葉は物騒だが、几帳面で相手への思いやりのある人物。赤ペン先生だ!!

 それがこのノートの持ち主だ!! 高田の人には全てお見通しだぞ!!

 そして最後の言葉、お前の後ろに居るぞ。……ふふっ、振り返るのを待っているんだろう?

 だがしかし、八極拳士を舐めるなよ!! 鉄山靠!! それは背中を使った発剄の技なり!!

 かくして奴は、その丁寧さゆえに破れさったのであった。エンターテナーの鑑であったことは認めよう。

 しかし、殺すというのなら無言で襲えば良いものを……。真の戦士に遊びと武器は不要なり!!


 第一住人を抹殺し、殺人罪が加わったのではないかとさらに怯えながら高田の人は出口を探して進む。


 突然、バンという音がした! 音のほうを振り向くと、窓ガラスに人の手形が!!


 バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン!


 窓ガラス一面に人の手がっ!!

 ここで高田の人は考えた。この人達は頑張りやさんだと。

 きっと窓の外では頑張って組み体操をしている。そしてガラス一面に手を当てているんだ。

 小学校の運動会を思い出す。組み体操、たった三段のピラミッドですら大変だったのになぁ。

 なのに、この人達は手も使わずに何段もの組体操を外で頑張っているのだ。中国雑技団の人達ですか?

 高田の人は、見詰め続けた。その手の平を見詰め続けた。やがてプルプルとし始める手が現われだす。

「頑張れよ!! もっと熱くなれよ!!」

 高田の人は精一杯の声援を送った。でも、駄目だった。

 親亀こければ小亀もこける。組み体操とはそういう危うい競技であったことを思い出す。崩れ去る手達。

 ここは、二階の窓なんだけど、外の人達は大丈夫だったんだろうか?

 人間社会でも将棋倒しの事故は怖いものだ。外では今、大惨事が起きているのではないだろうか?


 高田の人は廊下をさらに先へと進んだ。

 すると廊下の向こうから、ズルズルと音を立てて、上半身と下半身が生き別れになった男が!?

 たぶんテレビ出演すれば、ビックリ人間としてもてはやされ……駄目だ、放送コードに引っ掛かる、その腸のコードがひっかかってしまうよ。モザイクだらけだ!!

 新しいアイドルをプロデュースする機会を失った喪失感から、高田の人はマリオジャンプ!

 背中を踏みつけにして、背後を取った。背中に乗ったとも言う。

 人間の上半身と下半身が生き別れになったなら、その戦力は半分ではない。百分の一だ。

 しかし、ここで高田の人はあることに気が付いてしまった。


 ――しまった!! これは孔明の罠だっ!!


 片手、片足、いや、指の一本が足りないだけでも人権団体がうるさい世の中。

 下半身が足りない人を足蹴にしたなどと知られては、高田の人の人生が終わってしまうじゃないか!?

 パシャリ!! フラッシュが焚かれ、衝撃の瞬間を激写するカメラマン。

 残念、こうして高田の人の人生は終わってしまったのであった……。

 げに恐ろしきは、やはり人であったか……。


 後に館の主人は語る。

 不審者が侵入してきて、声を掛けようとしたところを背中で襲われたんです。奴は酷い男でした。

 かくして最強の敵、ピーポくんのお世話になった高田の人。さらには踏みつけにした写真が配信されるにいたり、世の中からも石を投げられる始末。日本の、いや、世界の全てが敵に回った。

 いったい、ボクが何をしたって言うんだよ!!

 不法侵入及び傷害罪。空き巣ではなく居直り強盗の容疑も掛かっていますね?


 ――ふ、ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ