世界の終わりを変える簡単な方法
日もすっかり落ちて暗くなってしまった部室等の一角で支倉は小説を読んでいた。セカイ系とよばれる数年前に流行っていたジャンルだ。ざっくり言ってしまうとこのジャンルはヒロインすごい、主人公普通、世界の終わりの三本柱から構成されている。いま現に支倉がよんでいる作品でも宇宙からの謎の飛来物によって地球の大気に異変が起きて人類が徐々に滅びていってしまう世界観だった。支倉がちょうど中盤あたりまで読み進めているとがらららと部室の扉をあける音がする。入ってきたのは部活の先輩である琴浦マユだ。
「先輩、世界の終わりってどうしたらいいと思います?」
支倉は持っている本の表紙を見ながらいきなりマユにそう尋ねる。
「バンドの話ですか?」
「いえ、普通に世界が終わってしまうことについてです」
「いきなりですね、私にはちょっとわかりませんよ」
マユは首をかしげながら支倉の質問にそう答える。
(いきなり先輩に何を聞いてるんだおれは……)
「でも『せかいのおわり』を簡単になくす方法なら私でもわかります」
そういうとマユはマッキーを持ち、きゅっきゅっと動かしてホワイトボードに『せかいのおわり』と書きこむ。そして『せ』の部分にニ重線をひくと上に丸っこい字で『は』と書きこんだ。
『はかいのおわり』
「ほら、世界は終わりじゃなくなりました」
自信満々に胸を張る先輩を見て支倉はくすりと笑った。