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花
僕は冬だったんだね、僕は冬だったんだ、つまり僕は、僕という存在が冬だったんだね、黙って行く、黙って来る、表情が弱い冬。僕は冬だったんだね、ずっと、ずうっとそうだったんだね、僕って本当に昔から察しが悪すぎるね。
二人が僕を冬にした、これが冬だったんだね、最初から最後までこれは冬、僕が、僕だけが出発地点から冬だったんだね。
今夜、もし、僕のことでなにか思い浮かべてくれているとしたってそんなのは、最後の一粒が溶け残っている少し悲しいだけのシーン。
僕は冬だったんだね。
冬だったんだね、僕のこれはただの冬だった、とどまることのない冬、いつかは去りゆく冬。
僕は冬だったんだね。
これは冬だったんだね、どこまでも、どこまでも。
僕のいるところに花がないことは当然のことだ、ずっとそう思っていた。
こんな事になるんだったら、花のある生活を、人生を僕も持つべきだったと、今日思った。そしたら早く気づけたのに、と。




