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真面目な二人
ある夜に真面目な彼が、私の口の中に何かがあるといって指を入れてくる。何もない。
私としては、ふざけただけだとか何だとかいってほしい。
私としては、無言で彼の顔を真っ直ぐ見つめながら待つしかない。
彼は何もいわない。傍らに置かれていた食後のコーヒーは、とっくにもう冷めていた。
「つくりなおすよ」
暗いキッチンのほうに行く彼の背中。
彼には見つけられないその何かを、しかし彼は諦めようとしない。二日後には地図を作成しだす。私の口の中の地図をだ。
私の愛情が、私の口内をマッピングするため男性のあの特徴的な指が練り歩くことを、許す。
彼のせいでもあり私じしんの愛情のせいでもあった、しかし避けようもなく私はどんどん渇く。
「善いもの? 悪いもの?」
「どうかな。君の中ってすごく暗い。俺も早くここに慣れなくちゃって、毎日思ってるよ」
一人きりの世界がいいな。
また、いつものこの思いが頭に浮かび私は苦しい。私の小ささ、狭さ、温度のなさ。
私は目を閉じる。




