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褪せる






 このごろは僕も女友達も参ってしまっていた。二人はすすんだ高校はべつべつだったのだけど、毎週かならず連絡を取り合っている。



 帰宅するとよく、玄関マットの上にぺたんと彼女は座った途端、ここは静か、と思い、そうして彼女じしん動かなくなる。ぜんぜん。

 靴も脱がないで長い時間そこにいる。

 そういうことばかりやっている、と彼女は僕に話した。



 こちらも不調だと電話口で僕は女友達に話した。僕は学校から逃げ帰ると靴は脱げるが制服を脱がないままで座りこむことになる。ただひたすらに呆けている。

 やっと動きだせても、薬箱を開けて瓶に貼りつけてあるシールの説明文をじっくりいろんな角度からながめている。ずっと。



 怠惰に、無為に僕ら二人は時間をすごす。



 女友達も近ごろ、鏡を取りだしても、じぶんではなくて自室に置いてある一つひとつを鏡に映してみているだけだという。まるで、じぶんの身に何事か起きるのを待っているみたいに。本当は期待などとうのむかしに消えているのに、まだ期待する心はあるのだといい聞かせるみたいに。









 僕らは怠惰に毎日をすごす。怠惰に、無為に、そして、ここにいると悲しいと、そう自覚ができないぐらいの悲しみにつつまれながら。












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