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室内劇






 手を重ねてみる。




 しんとした室内。




 隣人である若い男が歌っている。




 スピーカーから曲が流れている。




 それに合わせて隣人も歌い続ける。




 二人して、それを聞いている。




 信じてない、ポツンと置かれた言葉のあと。




 燕の巣が見られるおばあちゃんの家。




 まずそれが二人から遠ざかっていった。




 さめたコーヒーの匂い。




 さめた心臓の差し出し方。




 夢でみて全ぶを知っている。




 そういいたい。




 何もいいたくはない。




 色を教室で巻き付けようとしてくれたこと。




 二人で越した冬は、二度。




 余計な舌。




 やっぱり注射嫌い。




 しんとした室内が嫌い。




 けれど、ただ理由もなく嫌い続けてきた。




 これまではただ嫌いで嫌いだっただけ。




 いまあのマフラーの色は見えない。




 手に入れた筈の記憶。




 そして色なんてあっさり手離していく。




 結局これはなんだろう。




 この、手と呼ばれるものは何ができるんだろう。




 口からでまかせに近いものばかり流した日々。




 いま、必死に見ようとする二人。




 このふたりの、どれが本物を連れてきたのか。




 このふたりは、どれだけ欲していたのだったか。

















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