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空
ある者の自由の姿が無関係の赤の他人でしかない誰かから見た時にも自由を見ることになっているとは限らない。でもだからこそそれはそうだといい切るべき、静かに覚悟を決めて見上げるように。だってもしいえないとしたなら、翼をひろげて飛ぶのに怖いとか怖くないとか感じる以前に、それをよりにもよって他人ではなくてこのじぶんがやってみる価値はあるかないかとかいう以前に、僕が、他の誰かに対して持ち得る感情の多くが、どこにも行けないで腐り落ちる。またその誰かとは僕がずっと知りたかったやり方を見せてくれる人であるとしてもおかしくも何ともなかった。それを思い知った日から、僕は、空を気持ち良く見ていたことは一度もなかった僕ではなく、見上げる僕でいる。




