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洗濯機
この世界の全ての洗濯機が壊れればいいのにと、僕は思ったことがある。何百回もある。そうなればきっと学校に行っても不安にならずに済むはずだから。
洗濯機が壊れることでちゃんとみんな平等になるんだ。そこでどんな人間が息をしていようと差別の視線が初めて失くなる。存在が許される、この世界にある全ての洗濯機が壊れれば。もう誰も何も気にしないで良くなる。
洗濯機が壊れて使い物にならない世界こそ正常な場所だと、そのときの僕は感じるんだろう。世界があまりに汚い場所だから、それで釣り合いがとれるんだ、と。
がんばらなくても全然いいし、がんばる人は本当にがんばりがよく見えて称賛を一身に浴びる。
そういう世界になってみて初めて誰かの輝きが見えたりすることもそれなりにあるんだろう。




