小雨
じぶんではない誰か他の存在が幸福になること、ただひたすら彼らの人生に幸せがくるのを祈ること。俺は未だにそんなふうに、混じりけなしの祈りがやれた試しがなかった。じぶんの受け取った幸運よりも大きな幸運を、特にそれが友達だった場合には、そのような贈り物が本当に天から送られていることがあり得ると実感させられる様を目の当たりにして、心の底から拍手を送れる自信が全然ない。じぶんを知らない、敢えてじぶんの正体には気づかないようにしながら、もう死ぬつもりでいる連中とは俺は根底から違っているからだ。友達の幸せになる姿すら見たくないと思ってしまうこの醜い心根。大好きな友達の中で、誰か一人だって不幸になってほしいと俺は願った時はない。かといって、皆が幸せに生きていくことを真実願いにできてるのかって考えてみると、俺という人間にはそれも不可能なのだ。この一点だけとってみても、出来損ないの判を押されても仕方がないとそう思っていなきゃならないのを、俺は生き難さにしてよかった。
好きな人たちにはじぶんを忘れてほしくないと思ってしまう。俺は友達がみんな好きだからだ。
携帯代、服、住みか。いつもぎりぎりの暮らしで、だけどじぶんしか頼りにはならないし、俺はすごく見栄を張る。このへんに原因があって、原因を全部消せば俺じしんの今までの考え方だって変わるかもしれないと、そう考えているべきなのかもしれない。だけど、理解されたいとは思わないんだけど、俺はこのままの俺でいいと感じる。クソみたいな連中の許可なんかいらない。愛されたいだなんて微塵も思っちゃいないんで。俺は一生カタオモイ。それでも別に構わないよ。




